表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
北海道修学旅行

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/307

『贅沢したい』は大事な気持ち

 登別でクマ牧場や温泉を堪能した翌日、僕ら湘南海岸学院の生徒は観光バスで移動。途中のスキー場で昼食のカレーを食べ、しばらく広々なだらかな芝生で腹ごなしをしたあと、再びバスに乗ってジンギスカンの館へ向かい、ジンギスカンを堪能。ジンギスカンキャラメルも購入。すごい味だ。北海道は他都府県とは比べものにならないスケールで、登別から札幌までの移動にほぼ一日を費やした。


 満腹になったら藻岩山もいわやまへ。観光バスに乗らず自分で行ったら迷うくらい山の中にあって驚いた。札幌にはヒグマが棲息しているというが、納得。


「おお、さすが札幌だね。どこまでもキラキラ」


「ええ、あ、でも意外と海が近い」


 と、美空。なんでもないような感じで他校の生徒が紛れ込んでいる。旅程が被ったようだ。


「山と隣り合って煌びやかな都会があるなんてすごいわね。これは画になる」


 三郎はその珍しい景色を目に焼き付けている。確かに、東京や横浜の夜景は果てが見えないほどにキラキラしていて、クマが出るほど自然豊かな山と都会は隣接していない。住宅地や商店街を介し、徐々に都会になってゆく構造だ。それは札幌周辺でも共通していると、スキー場から札幌市街に移動する際に感じたが、この藻岩山からの眺望に関しては『山地と都会が隣接している』と言って適当だろう。


「知らない世界が山ほどあるんだなぁ、山の上だけに」


 僕が言った。


 誰も返答せず、北の大地の冷たい山風が吹いた。


 せめて菖蒲沢さんか平沼さんに愛想笑いしてほしかった。彼女たちもさりげなく僕らの集団に紛れ込んでいる。


 ふむふむ、あそこが札幌ドームで、黄色い光が建物、赤い筋状の光は車列か。ずっと向こうにある闇が日本海。南の海に面した茅ヶ崎に住む僕には、日本海を見る機会がなかなかない。


 くびれた地形の函館と比べると札幌の街は広くきっちり整備されているようで、碁盤の目状になっている。


 藻岩山を降りた僕らはビジネスホテルに移動。三郎と二人で部屋を利用する。函館と登別は大部屋で、普段接しない男子たちといっしょだったから疲れた(友恵をオカズに抜いているヤツが数名いた)が、きょうは気心知れている三郎と二人だから安心だ。


「って、なんだこの部屋!!」


「あら、スイートルームじゃない」


「なんという広さだ。部屋の中央壁際に二人でも寝れそうな大きいベッドが2メートルの間隔を置いて2つ、通路の幅は約3メートル、トイレと洗面所が2つある……」


 隅々まで見て回ってビックリの広さ。窓の外、正面にはテレビ棟が見える。


「たまにあるけど、きっとホテルの都合でこの部屋になったのね」


「僕たちは日頃の行いがいいんだね。なんか、正規料金を払ってこの部屋に泊まれるようになりたいってモチベーションが芽生えたよ」


「そうね。プロで創作をするには、人の心を豊かにしたいという崇高な想いと、ちょっと贅沢をしたいという想いも大事。ステップアップしてゆくごとに良いものを得る。欲に溺れては身を滅ぼすけど、ある程度は大事なのよ」


「実際に稼いでる三郎に言われると身に沁みます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ