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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
北海道修学旅行

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179/307

おぼろげな夜、函館

 友恵の部屋におじゃました翌々日の月曜日、僕ら湘南海岸学院の生徒は北海道の函館はこだてにいた。4泊5日の修学旅行だ。


 朝9時に羽田はねだ空港集合、飛行機に乗って到着。約1時間の空旅だった。


 空港を出ると観光バスに乗って街の観光食堂に連れられ、海鮮丼をいただいた(僕は甲殻類アレルギーなので白飯だった。イクラとサーモンは食べられるのに。甲殻類だけ乗っけないでくれれば良かったのに。北海道の鮭を食べ損ねるなんて)。


 きょうは五稜郭ごりょうかくを見学した後に函館山の夜景を見て、旅館に泊まる予定となっている。


 明日は登別のぼりべつの旅館に17時集合。それまでは自由行動。列車、バスなど、交通手段は各自で調べて移動する。公共交通機関の利用方法がわからない場合は誰かに訊くか、訊いてもわからないなら教職員と登別の旅館へ直行。


 水曜日は観光バスで登別から札幌さっぽろまで移動し、ジンギスカンをいただいた後に藻岩山もいわやまから夜景を眺めるツアー。


 木曜日は札幌のビジネスホテルを拠点に自由行動。遠く離れた旭川あさひかわ富良野ふらのなど、19時までにホテルに帰着できればどこまで行っても構わない。ただし札幌の歓楽街、すすき野には行かないように言われている。


「ううっ、さっむっ」


 夜の函館山で、友恵が言った。ロープウェイで山頂に上がったのだが、海辺の街とここでは寒暖の差が大きく、制服のブレザーを着ていても肌寒い。友恵はミニスカートだから、下半身が相当冷えているだろう。6月でも夜の気温は10℃前後、風が吹いているから体感温度はかなり低い。


「そう?」


 と、さほど寒そうでもなさそうなのが、宮ヶ瀬(みやがせ)三郎さぶろう。友恵とは物心ついたころからの幼馴染みで、僕の数少ない、否、唯一の男友だち。僕とは中1からの付き合いだ。


 プロのイラストレーターである三郎は、出席日数は最低限に近く、世界各地を飛び回って紙面、壁面、デジタルなどのイラストを描いている。特に店の内壁に描く仕事が多く、食器、雑貨などの小物類、動植物や人物画が得意分野。


 筋骨隆々のオネェキャラだが、高校入学後はそれをやや封印している。全国から生徒が集まる湘南海岸学院。茅ヶ崎という街は個性に寛容な人間が多いが、他地域はそうでもないらしい。


「寒いよ。6月でこれはやばいよ。全身が芯から冷えてく感じ」


 二人が会話している間、僕は函館のくびれた地形に街灯りの宝石が敷き詰められた100万ドルの夜景を眺めながら思った。


 文化祭用アニメに登場するキャラクターの一人は、函館出身にしようかなと。


 しかしまぁ、なんて綺麗な夜景だろう。


 両サイドが海で、細長い街だからか、海の暗黒が街のきらめきを際立てている。


 周囲の生徒たちは『ハート』の字形に見える灯りを探しているようだ。僕も気にしてはいるけれど、判別できない。


 ロープウェイで街に降り、バスで函館名物の朝市が開かれる波止場のエリアに来た。函館駅のすぐ近くだ。夜なので市場は開いておらず、小料理屋などが営業しているだけ。静かで落ち着いた大人の街という印象だが、早朝になると活気にあふれるのだろう。


 僕ら湘南海岸学院の生徒はこれから学校が予約した店で夕食を摂るために、ぞろぞろとおぼろげな街を歩いている。


 すると、反対側の歩道に緑色の制服を着た集団が現れた。


 見覚えがあるような……。


 と思ったら、やはり見覚えのある人がその集団の中にいた。


「美空ちゃーん!」


 友恵も気付いて、片側一車線の道路の向こう側に手を振った。美空はビクッとして、驚いたのか目を丸くしてこちらに手を振っている。僕と三郎は会釈をし、それぞれ反対方向に進んでお別れとなった。


 鎌倉清廉女学院も修学旅行だったのか。

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