アフレコ本番
アフレコ本番。面積が教室の4分の1ほどしかない防音室に設置されたアフレコ用マイクは2台。長沼さんによると、一つしかないアフレコブースもあるそうなので、ここは恵まれている。
さっそく声入れを行ったのだが……。
「ああもう! これじゃダメ! これはムクドリじゃない! 三文芝居打ってる私だ!」
一度録り終えた声を聴いた美空もどきこと澄香が、大層不満げに頭を掻きむしっている。
「私もこれじゃ、お客さまには見せられないな~」
ほんわかしている瑠璃も、自身の演技に納得していない様子。
「にしても、美空ちゃんはいいとして、アンタがけっこういい演技してるのがムカつく」
「僕の演技、良かったの?」
自身に肯定的な評価を下せるほど、僕は演技に精通していない。
「チッ……」
澄香に舌打ちされた。
「うん、上手だったよ。まるで本物のカラスみたいだった」
瑠璃が褒めてくれた。
「ど、どうも、ありがとうございます……」
褒められ慣れていない僕は、照れ臭くて口ごもった。
録り直しを繰り返しているうちに、短針は90度以上進んでいた。なんということだ。
この場にいてもどうにもならない僕、美空、友恵は空腹に耐えかね、澄香と瑠璃を残し、近所のラーメン屋で食事をした。
食べたのは、僕が塩ラーメン、友恵が醤油ラーメン、美空が味噌ラーメンの小盛。友恵のおごり。
まろやかなスープとちぢれた麺、味の染みたメンマとやや硬めのチャーシューが旨かった。
帰りにコンビニに寄って、澄香と瑠璃への差し入れとしてサンドイッチやおにぎり、水、お茶、スポーツドリンクを買った。友恵のお金で。なんだか申し訳ない。僕も稼げるようにならなきゃ。




