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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
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存在否定

「美空、あんたまだお絵描きなんてくだらないことやってるの?」


 翌朝、パジャマから制服に着替えてリビングの前を忍び足で通過しようとしたら、母に呼び止められた。


 くだらないとはなんだと、何回思わせるんだ。


 なお、昨夜は情緒不安定で、あまり絵が描けなかった。


「そうよ、もうあなた高校生なんだから、お絵描きなんてしてないで勉強なさい」


 と祖母。仲良し親子だこと。


 まともに相手をすると祖母は発狂してそこらにあるもの私に向かって投げたり、怒鳴り散らして近所迷惑になる。私は過去に何度か杖で全身を殴打されている。今回もまた、殴られるのだろうか。

 

「痛いっ」


 返す言葉が思いつかず無視して家を出ようとしたら、背後から祖母に右肩を当たり前のように杖でぶたれた。


「なに無視してんの! 受け答えくらいちゃんとしなさい! もう高校生でしょ!」


 激昂する祖母。


「もう学校の時間なので」


「いい加減にしなさいよ美空!」


 母も激昂すると、私の頬に鈍い衝撃が走り、耳鳴りがした。ひっぱたかれた。痛みと熱が頭を支配して、自ずと涙がこぼれる。


「あんたねぇ、どうしてそんな子に育っちゃったの。ねぇ、答えなさいよ答えろ!!」


 胸ぐらを捕まれて、何度揺すられただろう。私は俯いて、ただ涙をこぼすしかない。もう何度目だろう。


 泣き崩れていると背を掴まれ、無理矢理向き直され、「あんたはね、まだ親に育てられてるの、好き勝手なことばっかりやってていいんじゃいの、ピアノでもやってるならまだしも落書きばっかりして、そんな時間があるなら勉強してもっといい成績取りなさい!」と恫喝される、いつものパターン。


 こんなのもう、慣れているはずなのに、どうしてか、いつもいつも涙があふれる。


 もう、こんな人生、嫌だ。


 自分はもう、消えてしまいたい。


 自分を産んだ親が、他の誰よりもそう思わせる。


 私から創作を除去したら、私の存在意義は無くなる。


 だから、死んだって同じだ。


 役目を終えた人間は天に召されるというが、私はそれすらも果たせず生涯を閉じる。そんな心持ちで、天へなど還れるものか。


 この世をいつまでも彷徨い続けて悪霊と化し、やがて神様か何かに消されるだけの運命を辿る。そんなことを末路を辿るために、私はこの世に生を受けたのか。


 この星川美空という命は、私という魂の最終処分場だというのか。


 そう思わせるのが赤の他人でなく、どうして肉親なのか。まして腹を痛めた母親なのか。


 乱暴に突き放された私は、玄関扉を開けた途端、目眩を誘発する朝陽に刺され、学生服を纏いながらも、行き先はわからない。

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