かたぐるま
「さて、終点に着きましたよ清川真幸くん」
私たちは畦道の終点に辿り着き、少し傷んだアスファルトの道に出た。空は広く、少しばかりの紅。遠かった送電線が目の前に、右斜め後ろには小さなキャンプ場がある。
「もうちょっと先まで行ってみない? まだ何かあると思う」
真幸の言う通り、私もまだ先に何かがありそうな気がしている。ここから急に人の姿が目立つようになり、奥のほうへと流れている。
「行ってみようか」
ということで、私たちは更に奥へ。
遠く前方をよく見ると、常緑樹の並木を隔てた向こうに自動車が行き交っている。
「ねぇ、あの道は何?」
気になったので、真幸に訊いてみた。
「たぶん湘南台に続く道だね」
湘南台。小田急線の急行と快速急行が藤沢の次に停車する場所。藤沢市の外れに位置するが、湘南台という一つの市なのではと勘違いするくらい栄えている。
「ということは、この辺りは大庭?」
「大庭までは来てない気がするけど、ライフタウンにはかなり近いと思う。まだ茅ヶ崎市内なんじゃないかな。行谷あたり」
ライフタウン。正式には湘南ライフタウン。藤沢市の北西部に位置するニュータウンの一つで、付近に大庭城址公園などがある。東海道線の辻堂駅から北へ進み、大庭隧道を抜けた先にある。大型のホームセンターやコンビニ、ラーメン店などがまとまっており、駅から離れていながらも生活に便利なライフタウン。
行谷は茅ヶ崎市の北部に位置する森林地帯。僕らが乗ってきたバスの終点に大学があり、文化祭では有名なアニソンシンガーが来る年もある。みな全集中で彼女のパフォーマンスに魅了されるだろう。
「やれやれ、随分と遠くまで来たものだ」
「ほんとだね。なんかもう、戻るのがめんどくさい」
里山公園最寄りの『芹沢入口』からここまで、だいたい30分くらい歩いている。
「私の背に乗って行くかい?」
と、冗談を言ってみた。
「本当に乗るよ?」
「ほう、やってみるかね」
私は腰を曲げ、手でクイクイと真幸を誘った。
すると真幸は一応気を遣ったのか、申し訳程度の私の胸には手を回さず、肩に手をかけた。
「いい? 体重かけるよ」
「うん」
べふっ!
真幸の重みがかかった途端、思いっきり前方にこけた。あまりにも予想通りの展開だ。何もないところでよくこける私にはこけスキルが備わっており、遠心力で真幸を振り落としつつ、腕から着地。アウターはデニム生地だから、手で軽く払えば汚れはだいたい落ちる。
他方真幸。私に振り落とされて、砂利道に全身を打ち付け仰向けになってぴくぴくしている。この男には、こんな無様がよく似合う。私はときどき、こんなスキンシップで彼の気を引く。




