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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
アニメ制作修羅場

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145/307

茅ヶ崎サザンの水出し緑茶

「おかえりなさいませ、ご主人さま! ご所望しょもうのメニューが決まりましたらお呼びくださいね!」


 友恵とともに入店し、グラウンドや松林の見える窓際の席へ通された。4人がけで、机と椅子が2台ずつ向かい合って設置。その上にピンクのテーブルクロスと厚手の透明ビニルシートがかけられている。なるほど、汚れても拭き取りやすいようになっているのか。


 栗色ポニーテールで気さくな雰囲気のメイドは僕らに透明プラスチックのコップに入れた水を置いて一礼し、しなやかに教室の外へ戻って再び客の呼び込みもといご主人さまのお帰りを待ち始めた。


「絵上手い、真幸の1兆倍くらい上手い」


 パウチしたメニュー表にサインペンらしき筆跡で描かれたメイドのイラストを見て友恵が言った。デフォルメ調で顔だけの簡易なイラストだけれど、僕が描いたらただのスマイルマークになりそうだ。ただ、


「さすがに1兆倍ってことは……」


「いや、この絵には素質がある。真幸のはぐでぐでの汚泥おでい


「そこまで言わなくても。それより何を頼むか決めようよ」


「そうだね、あ、すごい、お茶は茶山さざん使ってるんだって」


 友恵の家の近所、サザン通り西側に構える茶葉の店、小林園。茅ヶ崎で評判の良い店舗の一つ。


 僕らは通りかかったメイドに茶山の水出し緑茶とオムライスを注文。ショートヘアの彼女は「かしこまりました! 少々お待ちください!」とぺこり頭を垂れて教室後部の出入口から出て行った。‘ご主人様’は通行禁止になっている、メイド専用出入口のようだ。


 なるほど、そういうことか。


 共学なのに教室には女子生徒しかいない。ということはつまり、家庭科室などの別室で男子が調理しているということか。


 あぁ、なんか本当に良からぬ想像をしてしまった気がする……。


 家庭科室は山側の校舎にあるけれど、配膳台車とエレベーターを使えば移動可能。女子生徒は1クラスおおよそ25人。うち労働中の生徒は12人か13人だろう。


 これだけの人数で動き回っていれば効率的に食品の運搬ができるだろう。


 料理を待っている間、僕と友恵はラブホの妄想トークや実際にブツを挿入したらどんな感じなのかなどと雑談をしていた。


 そのときだった。


「お待たせいたしました、ご主人さまっ」


 頭上から降り注いだ聞き覚えのある声にハッとして、心臓が飛び跳ねた。


 この声は間違いなく、アニメ制作部のアニメでヒロイン役を演じていた人のだ。僕は反射的に上を向き、彼女の顔へ視線を向けた。


「「あっ」」


 僕と彼女は互いを認識すると同時に、みるみる血の気が引いて行った。笑顔を向けていた彼女の表情は急転直下。客観視すると僕より滑稽だろう。


 何も知らない友恵はキョトンと目を丸くしている。僕と彼女の間には何か良からぬことがあって、おおかた僕が悪いことをしたのだろうと推定しているだろう。


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