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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
アニメ制作修羅場

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真幸の気分転換

 文化祭を1週間後に控えた土曜日。


 彩色は終わった。現時点で絵が上がっているところまでは。


 きょうも先輩二人は部室に籠城ろうじょうして作業しているのだろう。それが上がると僕と凛奈の出番。先輩の作業がずれ込めばずれ込むほど、僕らの彩色や作画修正作業は逼迫する。たとえ来週土曜の昼前に線画が仕上がっても、午後には発表しなければならない。


 大変なのは僕らだけではない。他の部から募った声入れ担当、要するに声優も、ラフ画状態でアフレコをしなければならない。


 作業が修羅場と化してから、僕は著しい睡眠不足だ。日頃から睡眠不足だけれど、精神の消耗が尋常ではく、目が覚めているのは午後最初の授業が体育だった場合のみ。


 床に就くのは通常0時、修羅場になってからは1時。しかし眠るまではそれから1時間以上かかる。起床は5時半。


 どうやら僕は睡眠8時間がちょうど良いロングスリーパーのようで、3時間半ではルーチンワーク以外のことが思うようにできない。思考回路はショートしていると言って良い。


 僕が主導でやっている創作……えーと、なんていったっけ……そうだ、ピクチャードラマ。それもあるのに、頭脳も発想力も鈍っている。ピクチャードラマという単語さえ思い出せないくらい鈍っている。


 かつてこれだけ忙しい日々があっただろうか。


 受験勉強だって、何度か徹夜はしたけれど、現在ほどは疲れなかった。


 あまりにもクタクタでどうしようもないので、個人的に適切な起床時間である8時半に起床。朝の江ノ島サイクリングは中止して、徒歩でラチエン通りを経由し海岸に出た。一中通り経由が最短経路だけれど、部活の先輩や学校の誰かに会うかもしれないので敢えて遠回り。もし見つかって捕まったら缶詰にされる。


 波間にきらきら反射する秋の陽光は、眩しいのにどこかやさしい。


 そのリスクを考えるといっそのことバスで辻堂駅に出てから電車で江ノ島か鎌倉辺りにでも行ったほうが良いのではとも思ったけれど、気力がない。なお、敢えて最寄りの茅ヶ崎駅を利用しないのはやはりそこでも先輩と遭遇する恐れがあるため。


 無事、海岸に出た。波間にきらきら反射する秋の陽光は、眩しいのにどこかやさしい。


 波間にきらきら反射する秋の陽光は、眩しいのにどこかやさしい。


 いつも東へ進むので、今回は江ノ島を背に富士山のある西へ、砂浜の上をゆっくり進む。


 きょうも変わらず、やたらと靴の中に入ってくる砂。烏帽子岩の向こうにぼんやり見える伊豆大島の影。沖合の波間にはトビウオが跳ねている。きょうはそれを狙うサメが出そうだ。


 空を舞う鳥はカモメよりカラスやトビ、ハトのほうが圧倒的に多い。今もハトは僕の足元をとことこ歩き、カラスは数十メートル飛んでは着地を繰り返している。トビはなかなか持久力があるようで、ぴーひょろろと高い所で輪を描いている。しかし食べものを持っていると急降下してくるから要注意だ。


 トビに襲われる市民は少ないけれど、何を見られているのか人によっては襲われるらしい。たぶん美空みたいなのが襲われるのだと、僕は勝手に思っている。


 そんなことを考えながら歩いていると、右前方のひな壇型ウッドデッキに美空らしき女性の姿を認めた。


 美空と見せかけて別人の場合もあるから要注意だ。ついこの前、間違えて見知らぬ性悪女にちょっかいを出してしまい喧嘩になったばかりだ。


 美空の青を基調としたデニムとロングスカートのコーデは茅ヶ崎では標準的。湘南と言えばハワイアンでラフなコーデのイメージが強いかもしれないけれど、それは少数派だったりする。


 近付いて、本人確認を試みる。


 美空らしき人はかくんかくんと項垂れている。どうやら眠っているようだ。


 よし、美空だ。


 ウッドデッキのすぐ下まで来て、ようやく確認できた。


 こんなところで眠っていると物取りに遭うなどとは考えないのだろうか。


 まぁしかし、スヤスヤと眠る美空の横顔は、やはりかわいい。


 どうしようか。このまま放置してこの場を去り、物取りや奇襲に遭ったら大変だ。


 かといってそばでじっとしていると、僕が公衆から不審者扱いされかねない。元々不審者ではあるけれど。


 迷った末、僕は指で美空の肩をそっとつつき、起こすことにした。

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