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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
アニメ制作修羅場

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美空の茅ヶ崎さんぽ 海側編2

 写真撮影を続ける。


 砂浜には飼い主夫婦に駆け寄る犬、海から上がってきたサーファー、水平線を見つめながらゆっくり歩いているスーツ姿のおじさんが視界に入った。おじさんは何か訳アリのような気もするけれど、フォーマルな恰好でなんとなく海に来る人もいるからなんとも言い難い。


 茅ヶ崎といえば砂浜から海を眺めるイメージが強いだろうけれど、岩場に上がれば眼下に沖を臨める。


 ということで、岩場に上がってみた。


 私のようにロングスカートを穿いていると、とても歩きづらい。もし転んだり隙間に落下したら、大なり小なり怪我は避けられない。自己責任を強く問われる場所だ。


 岩の裏側を覗くとフナムシがちらほらいるけれど、あまり見たくない虫は無視しておく。


 どうにか岩場の頂上に上がった。


 砂浜とは異なり、複雑に組まれたテトラポットには波が激しく打ちつけ、潮流の速さを感じる。


 豆知識だけれど、テトラポット付近で溺れた場合は怖くても一旦沖合に出て、大回りして陸地に戻るようにと、サイクリングロードの看板に図を用いて記されている。


 つまりここは、それだけ危険な場所だ。


 砂浜からはほんの十数メートルしか離れていないのに、潮の流れが一気に速くなる。


 いま私が立っている場所までが立ち入りを許可されている。柵はあるけれど、ときどき高波で流されてしまうので無くなっている日もあるので要注意。


 おだやかな波打ち際と荒波の両方を見られるのも、茅ヶ崎海岸のポイントだ。


 何度か来ている場所だけれど、とりあえずここも写真に収めておく。


 歩き疲れたので西に移動し、砂浜を臨むひな壇型の小さなウッドデッキに腰を下ろした。見晴らしの良い場所だけれど、ここでピクニックなどしようものならトビに食べものを取られて昼食抜きになってしまうので要注意。


 ここでのベストな食事はずばり、10秒チャージのゼリー。これなら取られにくい。


 この付近にはいくつかのサンドイッチ屋さんがある。そのどれもが昔懐かしい素朴な味わいで、市民に親しまれている。


 なのでどうしても海を眺めながら食べたいのであれば、トビには十分注意したほうが良い。子連れの場合は食料ではなく子どもを持って行かれる場合もあるので、それでもここで食べるかどうかは親として判断してほしいところ。仮に子どもが助かったとしても、鳥に襲われたトラウマは生涯消えないと思われる。ソースは私。


 ざぶん、さらさらと、世界を巡る海水は、きょうも茅ヶ崎に立ち寄ってはまたどこかへ流れゆく。


 烏帽子岩を添えた水平線を眺めていると、自分はなんてちっけな存在なのだと思い知る。だからといって日頃の鬱憤や悩みごとが消えるわけではないけれど、少しの間はそれに支配されにくくなる。


 波音を聴きながら、敢えてイヤホンを装着し、小さい音で音楽を聴くのも良い。バッグからポータブルプレイヤーとイヤホンを取り出して、私も音楽を聴いてみる。


 この辺りはよくサザンオールスターズの楽曲に登場する場所だけれど、それに限らずともマッチする楽曲はたくさんある。


 私がよくここで聴くのはYUIの『LIFE』。


 やさしい陽光を浴びながら波音と音楽を聴いていたら、なんだか眠くなってきた。


 私はよく、ここで眠ってしまう。胸が小さいからか誰にも襲われたことはないけれど、鳥には食料として襲われかねない。食事には気をつけているので、私のからだはなかなか栄養価が高いと自負している。ただちょっと、女子としてはアブラのノリが良くない。


 ちょんちょん、ちょんちょん。


 誰かが私の肩を指でつついている。どうやら私は眠ってしまい、誰かに起こされているようだ。


 鳥のくちばしではない。人間の指であることは経験上わかる。鳥につつかれるとチクッ、グサッと痛い。想像以上にインパクトのある痛みだ。


「……んん、あ、真幸だ」


 重たい瞼を開くと、左隣に真幸が座っていた。


 目にクマができて、随分と疲れている様子。


「久しぶりだね、美空」


 私は音楽の流れていないイヤホンを外した。

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