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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
校長先生のお話

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1978年6月25日

 高校に進学してから3ヶ月弱が経過した初夏。僕はどうにかイジメに遭わず日々を送っていた。


 しかしそれは、夏子のおかげであった。


 僕の進学した高校は市内で最も偏差値の高い学校。不良などいないと思っていた。


 実際そういった連中が全くいないというわけではなかったが、浜須賀はますか中学校との乱闘を繰り返していた一中と比べればだいぶ少ない。


 故にイジメはかなり少ないものと思っていたが、そうではなかった。


 露骨なイジメは少ない分、巧妙かつ陰湿な、知能犯によるイジメが多い。それが進学校だと、入学して、教室、学内の様子を見て知ったのだ。


 例えば机や靴にゴキブリを仕込まれているという事象は中学と変わらない。


 それを見て、一中の場合はゲラゲラと笑われ大層馬鹿にされるのだが、この高校の場合はひそひそクスクスとほくそ笑まれるのだ。


 恐らく僕も、夏子がいてくれなければまた、そういった悪質な行為が及ぶ対象になっていただろう。



 入学初日、僕と夏子は男女交際を始めた___。



 高校生になってからは進学校ということで授業がハードになり、勉学に励む時間が増えた。増やさざるを得なくなった。


 時の流れは目まぐるしく、夏休みが近付いてきたころ。


「ねぇねぇ知ってる知ってる!?」


 カラッと晴れた日の帰り際、昇降口で上靴から運動靴に履き替えようとしたとき、隣のクラスとなった夏子がとことこと駆け寄ってきた。意外と可愛い。


 当時はミニスカートではなくロングスカートが主流で、女子はみな動きづらそうにしていた。


「何を?」


 背中合わせで、僕らは靴を履き替えている。


茅小ちしょう一中いっちゅうの卒業生がロックバンドデビューしたんだって!」


「へぇ」


 僕は音楽に関心がないというわけではない。だが芸能界は厳しい世界。デビューしたってそう長くは続くまい。


「へぇって何よ。まぁ仕方ない、断片的な情報しか与えてないもんね」


 ん? と僕は首を傾げた。靴の履き替えが終わったので校舎の外に出て、二人並んで校門へ向かう。


「それがねそれがねっ、なんと! なんとその人のバンドはね!」


 ひそひそと、夏子は僕に耳打ちした。


 そのバンド名に、僕の心臓は跳ね上がった。


「な、なんだって!? あのチャラチャラした歌の人たち!?」


「そう! あのチャラチャラした人たち!」


 当時の日本歌謡界といえば真面目で派手さのない楽曲が主流だった。そこに殴り込みをかけた、というか、自由な楽曲で飛び込んできたのがそのバンドだ。


 1978年当時、あれは本当に衝撃的だった。なんだこの曲は。率直にそう思った『勝手にシンドバッド』。茅ヶ崎を歌った楽曲なのは聴いてわかったが、まさか同じ小中学校を卒業した近所の人だとは思わなかった。


 後にその近所の先輩は長きに亘り音楽活動に励み、国民的バンドとして親しまれるのだが、僕に初めての恋人ができたのはそんな年だった、という話。


 驚きというものは感情をたかぶらせる。


 僕も夏子も、大層興奮していた。


 茅ヶ崎にとっての歴史的な夏のはじまりは、僕らにとっての青い春のはじまりだった。


 お読みいただき誠にありがとうございます。


 1978年6月25日はサザンオールスターズがデビューした日で、本編はその数週間後を描いています。


 以下、私事ですが、昨日、本作の一部キャラクターの名前の参考にした神奈川県の清川村宮ケ瀬へ行ってまいりました。


 そこには大きな池があり、その上の木で組まれた通路を歩いていたら左斜め前から子猫が駆け寄ってきた、私に擦り寄り、肩まで上がってきました。


 驚いた私はその場に座り込んだのですが、そしたらネコは私の衣服で踏み踏み。そして就寝。


 え……。


 通行人、誰も助けてくれない。


 元々変人なのに、通路に座り込んで更に変人。


 いぶかし気に私を見てはネコに気付いて察する通行人。


 結局小一時間、私は山の冷たい風に吹かれて座り込んだのですが、ただ広い景色の中で風に吹かれるだけの時間ってそうそうないなと、貴重な体験をさせてもらいました。ネコちゃんありがとう!


 また会いましょう!


 詳細は昨日のTwitterで公開中です。


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