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名もなき創作家たちの恋  作者: おじぃ
校長先生のお話

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きょうで役目を終えるセーラー服

 睨まれたカエルたる僕は、睨むヘビこと夏子から逃れられず、脚が笑う。


 息を切らした夏子は口を開けてはぁはぁと酸素を体内へ取り込んでいる。まだ寒い3月なのに、こめかみからは汗が滴っている。


 その口に頭から呑み込まれてしまうのではないか。口裂け女は実在するのではないか。3割くらい本気でそう思ってしまう、混沌とした恐怖感が僕の思考を止めている。


「ごめん、本当にごめん。私がしてきたこと、許してもらえるなんて思ってない。いくら謝っても、好きだって言っても、松永が私を疑うのもしょうがない。だからこのもういじめないって態度で示すためにこの半年、私は松永に接触しなかった。好きな人が同じクラスにいるのに話しかけもできないのは本当に頭から爆発しそうなくらいつらかったけど、自業自得だって、きょうまで一生懸命我慢してきた。だから、その、付き合ってほしいなんて贅沢なことは言わない。私はもう松永をいじめない。むしろ高校で誰かにいじめられたら私が守る。だからもう私にも、他の誰にも怯えなくていい。それをきょう、伝えたかった」


 夏子は真っ直ぐ僕を見て、吐露した。『敵』から『味方』へ、『疑う』から『信じる』へ、僕の気持ちのベクトルは転換しようと、錆びて軋んだ回転軸に油をされた、そんな気分。


 だからといって、いじめという大きなダメージは、僕の心を完全に信用させない。


「わかったよ、じゃあ、様子を見させてほしい」


 そう言うほか、言葉が見つからなかった。


 なのに、なのに夏子は、


「うん、うん! ありがとう!」


 目を潤ませて満面の笑み。そして涙をぼろぼろこぼし、きょうで役目を終えるセーラー服の袖でそれを拭っていた。


 どうしたことか。夏子は僕をいじめたヤツ。だからどんな酷い目に遭おうと構わないどころか清々しいはずなのに、彼女を泣かせた僕の心情は春の麗らかな晴れもようとは相反して濃霧が立ち込めむず痒い。


 僕に落ち度はないはずなのに、なんて後味の悪い卒業なんだ。


 あぁ、でもまだチャンスはある。


 僕と夏子の進学先は同じ。4月からの3年間で、僕には色々と、整えなければならないことがあるようだ。


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