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旅路の前の現実 2

親父は、そこまで話すとテーブルに置いてあったカップを持ち、ボトルから酒を注ぐと一気にそれを煽った。


「どのくらいの時間俺が気を失っていたのかはわからない。もう1人生き残ったエルフのねーちゃん、長くて言いづらいから名前で言うが、ヴァルは俺より早く目覚めていた。だが・・・、ヴァルはその場でへたり込んで座ったまま、ずっと笑ってたんだ・・・。ヴァルが何を見たのかは判らないが、魔物の死体や、依頼によっては盗賊なんかも殺していたからな、肉片を見たことであいつが壊れたわけじゃなかった。俺は痛む身体を引き起こして、ヴァルに近づいたんだ。そこで俺が見たのは・・・・ヴァルの足元に広がる、大量の糞尿だった。何を見たのかは結局判らなかったが、ヴァルは何かを見せられて、ココロが壊れちまった。幸いというべきか不幸にもというべきか、俺は体の傷以外には特に何も無かったんだが、それでも、俺よりも数段上の次元にいたあいつ等3人がなす術もなくたった一人の下級魔族に殺され、そしてヴァルが壊されたという事実を受け入れるまでに、相応の時間がかかった。ともかくヴァルを抱えて、近くの街に行くのが精一杯だったんだ。」


「壮絶・・・・だな・・・・。」


「街に戻った俺たちは、ともかくも王都にこの事実を伝えて、王都に戻る。それしか考え付かなかった。俺はともかくヴァルはもう壊れちまってたしな。幸い、その街から王都に向うキャラバンが居たんでな。乗せてもらって何とか王都までは帰ってこれたんだ。帰ってきたのが俺と壊れたヴァルだけだったから、王都の冒険者組合は一時騒然となった。王都でも指折りのパーティが全滅に近い状態だったわけだからな。そして、俺からの報告を受けてさらに事態は深刻化した。なんせ、ここ数百年、その姿すら見せることも無かった魔族が現れたわけだからな。だが、不思議なことにそれ以降、どこかの街に魔族が現れただの、冒険者が魔族に襲われただのっていう話は聞かなくなったんだ。」


「魔族は最初から『ニホンジン』を狙ってた?」


「かも知れないな。魔族が現れて、最初に「お前とお前は違うな」って俺とヴァルを指差して最初に潰されたからな。恐らく、最初からあいつ等3人が標的だったんじゃねえかと思ってる。」


「親父はその後どうしたんだ?」


「ヴァルは生きてるとは言え、そんな状態。そして他の3人は見るも無残な状態で死んじまった。まともに生き残ったといえるのは俺だけだ。いくらタフな俺でも精神的に参ってな。酒におぼれたよ。そんな時に出会ったのがマイハニーだ。」


「・・・・シリアスな雰囲気台無しだわ。」


「まあそういうな。あの時母さんに出会ってなかったら、俺もヴァルみたいな状態になってたかもしれん。そんな程度には打ちのめされてたからな。つまり今の話は、お前が生まれる1年前の出来事ってことだ。俺は母さんに力添えしてもらって、今の仕事に就いた。また魔族が現れたら恐らくどうにもできねーだろうが、それでも自分の大事なものが出来ちまった以上は、それを守りたいと思ったからな。」


「初めて聞いたけど、親父って結構壮絶だったんだな。そんで、案外まとも」


「お前、親父を何だと思ってんだ・・・・。」


「昼行灯」


「王都の警備隊長に対してひどい評価だなオイ!」


「だって親父の部下の人たちがいっつもそう言ってるから。」


「そんな事を言ってたのは誰だ・・・?まあ話が逸れたが、つまりだな、俺ですらそんな状態だったわけだ。お前に冒険者は無理だ。」


「俺冒険者になるつもりないんだけど?」


「え?」


「え?」


「ニホンジン探しするんじゃないのか?」


「するよ?」


「冒険は?」


「しないよ?」


「ニホンジンと会って、冒険しないとかないだろ?」


「いや、だって俺荒事苦手だし?」


「バカなの?」


「親父が?」


結局、最後の一言がゴングとなり、俺と親父はハートフルなスキンシップを余儀なくされた。

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