では、ご武運を
太陽が赤く、少しずつ沈みゆく河原でリナはある物を探していた。
「お姉ちゃん、そろそろ帰ろうよ~。」
一緒に探し物をしていた妹は姉に対して催促をする。
「もう少しだけ、ね?もう少しだけ頑張ろうよ。」
「でもさ、これだけ探しても見つからないんだよ?やっぱり無いんだよ、六葉のクローバーなんて。」
「諦めちゃ駄目だよ、レナ。最後まで。」
「・・・・お姉ちゃん、分かった。レナ、頑張る!!」
「よーし、頑張ろう!!」
「おー!!」
珍しい葉っぱを姉妹で仲良く探していた、あの頃の様な仲の良さが無くなってしまったのは何時の頃からだったのだろうか・・・。
「んっ・・・、あれ?」
誰かの背中におんぶされている、この感じは前にも似たようなことが、
「よぉ、目ぇ覚めたか?」
「は、判人!!」
気づけば第四ステージの前の広場にいて、さらに判人の背中に乗っている。
「お、下ろして。」
「言われなくても、そうするよ。」
リナは判人の背中から下りて、次の部屋への扉の数に対して気づいた。
「あれ、扉の数が?」
すると、いきなりダイスマンが久しぶりに、何故か顔の前に現れた。
「その通~りで、ございます。」
「うわぁ!!」
思わず一歩下がってしまった。
「残念ながら参加者が皆様のみとなってしまいまして、ここからは扉を絞らせて頂きました。」
周りを見渡してみると、あれ程沢山いた参加者も今では確かに判人達しか残っていない。
「ところで、皆様この先の扉なのですが・・・」
と説明を加えようとしたが、それより先に、
「まぁ、さっさと行こうぜ。」
「あ・・・あの、皆様?」
ダイスマンの忠告を聞かずに、真ん中の扉のノブに手を掛けて扉を開けて行ってしまった。
「では、ご武運を。」
〈第五ステージ 団体戦〉
「ようこそ、皆さん。そして、久しぶり、判人。」
「お前は・・・・綾東。」
綾東の前には五体の人型をした人形が並べられている。
「簡単に説明させてもらうと、このステージは簡単に言うと団体戦さ。五人対五人で戦い、先に皆さんが三勝すればクリアだよ。」
源さんがそっと聞いてくる、
「判人、綾東の前にある人形って。」
「あぁ、おそらく《コピー・パペット》だろうな。」
「コピー・パペットって?」
コピー・パペットを知らないリナが聞いてくる。
「はっきり言って、面倒な相手だよ。対戦相手にとって一番苦手な相手に変身してくるんだよ。」
「一番、苦手な相手に、変身。」
「心配しなくても、お前は戦わなくて良いから。」
「えっ?そうなの?」
人数を確認してみると、自分を含めて六人いる。
「では、そろそろ始めようか。一番手は誰かな?」
「まずは、彼に任せてみよう。」
レイノスが自分の相棒を推薦する。
「誰でも良いだろうよ。最終的に三回勝てば良いんだからな。」
他のメンバーも、首を縦に振る。
「決まりだね、それじゃハロルド、頼んだよ。」
「御意。」
背中に吊っていた剣を抜きながら前に進むと、最初の人形が勝手に動き出し、ハロルドの前まで進んでくる。そして、変わったその姿は、
「あいつは、星柿。」
「知ってるんですか、源さん。」
「あぁ、あいつはトレジャーハンターの中でも世界一の素早さを持つ男だと言われていたんだ。はっきり言って相性は最悪だ。」
世界一の速さ誇る男の形をした人形は、目にも止まらぬ速さでハロルドの懐に入り込み、彼を切りつけ、さらに蹴り飛ばした。
「ハロルドさん!!」
駆け寄りに行こうとしたリナを判人が手で静止する。
「まぁ、見てなって。」
何事も無かった様に体を起こすハロルドに対して、返り血を浴びた敵の人形の動きが何処かおかしい。
「ど、どうなってるの?」
驚きが隠せないリナに、レイノスが説明をする。
「あれが、ハロルドの能力『鉄血』だよ、彼の血は重いんだ。」