私、これからどうしよう。
見渡す限りに広がっているのは青々とした木々と、目の前には広大という言葉が似合いそうな湖が広がっている。
こんな所に、私はどうして立っているのだろうかと車井リナは疑問に思った。
とりあえず心を落ち着かせる事にして、これまでの行動を振り返ってみよう。あれは、思い返すほど数時間前・・・
「あっ、車井さん。ちょっといい?」
帰る準備を終えて、下校しようとした私を廊下で担任が呼び止めた。
「悪いんだけど、これを鳥貝君の家に届けてくれないかな?彼、今日来てなかったから。」
彼女が差し出したのは、少し厚めの茶色の封筒で『親展』と赤字のハンコが押されている。
「?・・・・良いですよ、暇ですから。」
「ありがとう!じゃあ私これから職員会議に出ないといけないから、悪いんだけど、お願いね。」
手を軽く振って去ろうとする担任に、
「あ、先生、そういえば私。」
一度も訪れたことのない人である為に先生に住所を聞いて、その地図を辿りながら目的地を目指す。
「あっ、ここだ。」
二階建ての古びたアパートの一室に到着して表札を確認し、チャイムを押すが反応がまるでない。
「留守、なのかな。・・・・ん?」
リナは新聞受けの上に貼ってある紙にに気が付いた。そこには、『現在、外出中です。郵便物はここから奥までしっかり入れておいてください』と矢印とともに書いてある。
「良いよね。入れておいてくれって書いてあるし。」
恐る恐る封筒を新聞受けから持ってきた封筒を奥まで押し込み、帰路へ着く。しかし、その道中で奇妙なものに出会った。それは、なんでもない壁に貼り付けるように、
「何だろう?あのドア?」
近づいてみたが、何の変哲もないだだの黒い扉。
「ちょっとだけ、ちょっと・・・だけ。」
ノブに手を掛けて少し開いたその瞬間、リナは眩しいくらいの白い光に包まれて・・・そして、今に至るのである。
(私、これからどうしよう。)
唸るようにしながら頭を抱えながら考えていると、後ろの草むらがガサガサと音を立てながら揺れて、
「何やってんだ、車井。」
声を掛けてきたのはなんと、先ほど封筒を届けた相手である鳥貝判人。
「と、鳥貝君!」
「判人で良いよ。」
周りを不安げにキョロキョロするリナが
「えっと、じゃ、じゃあ判・・・人。ここは、ここは何処、なの?」
と問うと判人は頭を掻きながら、
「何処って、トレジャーワールドに決まってるじゃねえか。」
トレジャー・・・ワールド? 判人はいったい何を言っているのだろうかと思わずにいられないのだが、さらに驚かせられることを彼は言った。
「お前も、『扉』を通って来たんだろう?」
扉。まさかあの黒い扉と自分に起きたことを思い出していると今度は判人が、
「っで、お前は何を見つけたいんだ?」
「えっ?」
判人の言葉にリナがキョトンとしていると、
「えっ?じゃねぇよ。お前、早いところ目的の宝見つけねぇと。いつまで経っても、元の世界には帰れねぇんだぞ?」
「ええええええええー」
リナの叫び声で近くにいた鳥たちが飛び去って行った。
高城連乃介です。作品を投稿するのは久しぶりになるのですが、多くの方に読んでいただき、願わくばコメントの方もお願いいたします。