さんぼんあしのねこ
「ねぇ、にんげんっていいいきものなの?」
「そうねぇ……いいものもいるし…わるいのも、いるわ」
――とうに忘れた、昔の情景。
私は黒猫だ。
町の人間からは、リーヴァという名を貰っている。
私は、気が付いたらこの町にいた。
この町の人間達はとても親切で、傷ついていた私を熱心に看病してくれた。
この町には、他の猫がいなかった。
だから、恐らく…私はここで生まれたのではないのだろう。
母親も父親も知らない。
私には、足が三本しか無い。
事故で失ったのか、生まれる前から三本脚だったのか…。
母親なら何か知っていたのだろうな。
私はどうやら、他のどの動物よりも少々賢い様だった。
文字も読めるし、色も分かるからだ。
今日は、墓へ行った。
「おやリーヴァ…お出かけかい?」
年老いたシスターが私に声をかけた。
私は一つだけ鳴くと、墓をパトロールした。
同じ名前の墓ばかりだった。
私と、同じ名の。
帰ると、住処の前に食べモノが置いてあった。
ありがたい……今日は、これを食べて寝るか。
次の日は…子供達と石避けゲームをした。
子供達が石を投げてくるので、私はそれを避ける…単純なゲームだ。
勿論、当たれば痛いし、最悪の場合は怪我をする。
だから必死になって避けるのだ。
やれやれ…酷い目にあったよ。
まさか尻尾に当たるとは。
幸い、近くにいた医師が傷を見てくれた。
大事にはならない様だった。
次の日は、皆と泳ぎに出かけた。
私は魚を追いかけて夢中で泳いだ。
「おーいあんまり遠くへ行くなよー」
大人の声に従って、すぐに戻った。
ついでに、途中で魚を捕まえた。
以外と大きかったが……大人は喜んでた。
良かった。
次の日は……体調が悪かった。
何故だかわからないが、だるかった。
風邪か?
次の日は…更に酷くなった。
村人が
「風邪にはネギ」
だと言っていたのを思い出した。
丁度ネギが置いてあったので、齧った。
食べられなかった。
次の日には既に、動けなくなった。
昨日のネギのせいかはわからないが……体がしびれていた。
もう何も食べる気力が無かった。
とにかく眠い。
次の日……私は想った。
多分、私は死ぬのだろう。
まぁ、それでも良いと思った。
人間達に助けて貰わなければ…もっと酷い死に方をしていただろう。
ああ、やはり……人間は、良い生き物だ。
―――次の日、木のうろから黒猫の死骸が見つかりました。
とても、穏やかな表情だったと言います。
ただ一人の年老いたシスターだけが涙を見せ、他は無表情でした。
男達は小さな墓穴を掘り、そこにそっと横たわらせました。
子供達が、お供えをしました。
………ネギや、青背の魚を。
シスターはそれを見て、また、泣きました。
墓石には、他のお墓と同様に『リーヴァここに眠る』と書かれました。
誰も知らない町での、誰も知らない物語。
名前…リーヴァ 種族…黒猫
三本脚の猫。故意に起こされた事故で足を失いました。
人間の事をとても愛しています。そう、とても。




