権力 の 無力
ここからでは雄二の背中で見えない。それに距離もある。
次の瞬間雄二は椅子から転げ落ちた。苦しそうに首元を抑え、口から天井に向けて吐血した。
飛び散った血の多くは雄二の顔に降り注ぎ、雄二の顔は真っ赤に染色したようになった。そしてゆっくりと倒れた。
カードが『ハイ』。つまり7以上だったというわけだ。
修也は視線を落とした。理恵は修也の右手を握ったまま修也の右腕に右手を置き、半分抱きつくような形で修也に寄り添った。腕を通して理恵の体温が伝わってくる。
修也は右手にさらに力を込めて握った。痛かったかもしれないがそれほどの感情が出ている。
「はい、次女子1番相川喜須惠。こっち来て、怖がらなくていいのよ」
喜須惠は亜里沙の問いかけにも動けず、震えて体育座りしていた。マキルエが立ち上がっても動じない。まさか女子にまでこんなことをするとは思ってもいなかった。
マキルエは喜須惠の腕を掴み、グイグイと引っ張る。喜須惠は叫びながら抵抗するが敵うはずがなく、喜須惠は助けを求めた。
「誰か!誰か助けてー!命ちゃん!理恵ちゃん!」
理恵は修也の右腕に顔を隠すように頭をつけた。命はただ俯いている。喜須惠はその瞬間抵抗をやめた。おとなしい彼女のストレートの髪は乱れ、眼は真赤に純血している。
そしてマキルエは席に連れて行き、ナイフをかざした。
「今すぐ亜里沙の前に座れ。3、2、1・・・」
喜須惠は黙って俯いていた。仲が良かった友達に助けてもらえなかったことがよっぽど悲しかったに違いない。喜須惠を裏切るわけではないが、理恵を今危険な身に晒すわけにはいかない。
マキルエのカウントが0になったと共にナイフを振りおろした・・・。
喜須惠の目には大量の涙が溜まっており、倒れた衝動で頬にツーと涙が流れた。
修也は怒りと悲しみを同時に感じた。しかし今は何もできない。
無力さにただただ嫌悪していた。
その後も止まることなくゲームは続いていった。
赤西重雄は貢と最期の会話を交わし、勝負を拒んで死んだ。ダブルデータの重雄が死んだ今、貢はどうしていいか分からずに、我を失いマキルエに刃向かった。誰もが思った。
反抗しても意味がない、と。
ダブルデータの2人は呆気なく命を落としてしまった。
続く宇野田剛と琴弾さくらは勝負に負け、命を落とした。
これで6人が死んでしまった。すべてはやつらによって。
修也は怒り理震えていた。しかし理恵や恵、信二の事を考えて動けない。それに勝てるはずがない。情けなかった。
<男子1番相沢
男子2番赤西重雄
男子4番宇野田剛
男子6番岡村貢
女子1番相川喜須惠
女子5番琴弾さくら 死亡 残り23名>
続いて香織の番になり、玲菜と会話を交わし、亜里沙の前に座った。
その光景を見ながら修也は信二に話しかけた。
「信二、もし俺達まで番が回ってきたらどうする?」
信二は悔しそうに言う。
「そりゃあやるしかないだろ・・・。でも1番まずいのが俺と修也が対峙する時だ。いや理恵と恵だっている。このまま続いたら間違いなく俺達は崩壊。あの世行きだ」
「そんな・・・少なくとも理恵と修也は生き残らせたい。信二、あんたなんか意見ないの?」
恵が必死に問いかける。信二は首を横に振った。
修也が口を開く。
「なぁ、信二、俺はある提案が浮かんだ。とても単純だけどとても困難だ。」
信二はすぐに顔を上げる。
「それって・・・もしかして・・・」
修也は強く頷いた。
「ああ、やつらと戦う。それしか方法がない。奴らどうしが対峙したらどうせ戦う。もしくはそこでやめて、残る俺達を力でねじ伏せる気だ。でも俺たちだけあととても敵わない。だから仲間を集める」
「集めるったってこっちの行動は筒抜けだぞ?一体どうやって」
「信二、書くものと紙はあるか。なるべく小さいもの」
信二はポケットに手を突っ込んだ。
「ああ、ペンならある。筆箱にしまい忘れてポケットに入れといたのが。でも紙はない」
すると理恵が修也の肩をトントンと叩いた。
「紙ならあるよ。いつもメモ帳持ち歩いてるから。良かったら使って」
理恵は右手で制服の胸ポケットからメモ帳を取り出し、修也に渡した。
「ありがとう。よし、信二。今から言うことをすべて奴らにばれないように行ってくれ」
信二は頷き、耳を傾けた。
ずっと前を向いていた零が僅かだが修也の方面を向いた。
そして前を向きなおすとふっととても小さく笑った。
「ハ、ハイ!」
香織は叫ぶようにして宣言した。カードを見た瞬間、香織は肩を落とした。負けたのか。だとしたらなぜそんなに勝ち続ける?イカサマだったら説明が嘘になり、死んでいるはずだ。運なのか?
しかし展開は変わった。香織が肩を落とし、こう呟いたから・・・・・。




