混乱 の 渦
PM.0:00
携帯電話も外につながらず、完全にクラスは混乱していた。
魔法とか呪文とか時空とかファンタジアスなものは一切信じない貢と重雄はただただ茫然としていた。他の皆だって同じだ。口をぱっくり開けている者。座り込んで頭を抱える者。なにかを呟いている者。
修也もまだ状況が理解できないが、視線を動かすことはできた。
恵も瞬きすらしてない。先生、何をしているんだ。頼りない。
ただ聖川零だけが全く動じずに座っていた。何者だ?
すると突然声がして修也もビクッとした。前に立っているのは小川ではなく瀬本愛子だった。
「みんなさぁ、これからは叫ぶのはなしね。分かった?皆で冷静に考えていくのよ。私だって学級委員長として醜いことはしたくない。だがら冷静になって皆で助かる道を見つけましょう」
彼女の統率力と行動力はすごく優れている。小川なんかよりずっと頼りがいがある。
愛子の行動を見て佐川清史も前に出た。
「そうだよ!手を取り合っていこう。普段仲が悪いとかはなしだ」
かなり声は震えていた。修也もその場で立った。視線は修也に集まるが、ぐっという声で視線は前に向けられた。
前に立つ清史が苦しそうに胸を抑えている。愛子が肩に手を乗せ、呼びかけている。
教室には叫ぶ愛子の声が響く。
「キヨくん!しっかりしてよ!どうしたの?ねぇ、答えてよ!」
その瞬間胸を抑えて倒れた清史が動かなくなった。口から泡が大量に溢れ出している。
だれかがキャッと叫んだ。
「キヨくん?キヨくん!どうしちゃったの!!起きてよ。ねぇ起きてよぉ!」
愛子が清史を抱いて泣き叫んだ。もう確信したのだろうか。ただ泣き叫ぶだけだった。だれも声をかけることができなかった。
<男子9番佐川清史 死亡 残り39名>
愛子が泣きやむ頃ようやく小川が動きを見せた。修也はただ眼で追うことしかできなかった。
「愛子さん、まだ清史君がどんな状態か確実に決まったわけでない。先生を信じてくれ」
愛子が涙混じった声で小川に向け叫んだ。
「あんたに何が分かるの?私はキヨくんの全てを知っている。何もしてないあんたのなにを信じろって言うの?」
小川は何も言えなかった。そして前を向いた。
「こんなひどいことをする奴は先生が許さない。先生はクラスみんなの事を信じてる。だから力を合わせて共に戦お―――」
ほんの数秒沈黙が続いたと思ったらドサッと小川は床に倒れた。小川の体にはなんの異変も見られない。目は見開かれ、口を大きく開けて舌を出している。小川の基強面な性格からしてまずあんな事はしないだろう。
―いったいどうなっていやがる。
すると寺島和代が仲の良い佳奈と共に倒れた小川のもとへ駆け寄った。あの2人は小川とは仲が良かったから。修也は皮肉そうにその光景を見つめた。
「先生!どうしてなの!せんせい!」
「私達の声無視ですか?なんでこんなことになるんですかー!」
愛子は小川を見ると顔を真っ青にして後ずさった。
「私じゃない。私は何もしてない。ねぇ、キヨくん。見てたよね」
その声に反応した和代がキッと愛子を睨みつけた。愛子は猛獣にやられるかのような恐ろしい表情で後ずさる。
「あなたが小川先生になにかしたのね?清史の死が悔しいから私達を巻き込んで!いいわよ。私がいま清史のとこへ送ってあげるから。」
言ってることは悪魔だ。修也は止めに入る。
「おい落ち着けって。愛子がやったとは限んないだろ?あの声――」
何といっていいか分からず声を詰まらせた。
横に信二が現れた。
「誰がやったとか今はそこじゃない。考えるべきは他にあるはずだ。修也、俺はお前の味方だ。どんな時でも」
修也と信二の声で余計腹が立ったのか椅子を持ち上げて修也にかざした。これには他の皆も止めにかかる。しかし駆け寄ったクラスメイトに向けて椅子をかざすと皆動けなかった。
そして悪魔のように微笑むと和代の手から椅子が離れた。椅子は落下し、ザクと音を立て、液体が噴射した。信二は自分に着いた液体、血を見て目を見開いた。修也!
「修也!」
しかし修也に異常はなかった。椅子は修也ではなく愛子の頭に落下していた。脚の部分が愛子の頭部に刺さっている。修也は思わず目をそらした。
愛子は何も発せずに倒れた。偶然か、清史の右手と愛子の右手が重なり合った。
修也は愛子の死に対して怒りを覚えた。
「おい和代!自分が何したか分かってんのか!クラスメイトを・・・仲間を殺したんだぞ!」
信二は熱くなる修也の肩を両手で抑えた。
――落ち着け。余計混乱してしまう。
修也は悪かったと頭を少し下げた。
「私はただ・・・先生をたすけようとして・・・」
和代は膝をついた。その途端和代の体に異変が起きた。和代の目は純血し始めた。
鼻血がツーと流れ、徐々に流血量が増えてゆき、床にピチャと血が垂れた。。手を当てて咳をすると手の平に血。和代の目には血しか映らなかった。
―先生、これはバツですか?でも先生の所へ行けるなら私は嬉しいです。
「せ・・・せん・・・せ・・」
和代は前に倒れた。すでに教室は血の海となり始めていた。
<女子7番瀬本愛子
女子8番寺島和代
担任小川元彦 死亡 残り36名>




