希望 の 友情
―過去―
トイレの大便で用を足し、出ようとした。しかし開かない。鍵をかけていた。何やってんだ俺。
鍵を外し、笑いながら扉を押した。が、やはり開かない。鍵はかけていない。外から閉じ込めているに違いなかった。
外から男子のゲラゲラした笑い声が聞こえた。そして上から水が大量に降ってくる。防ぎようがなく、頭から水をかぶった。
「おまえなんて学校来んな!この勉強オタク!」
トイレの中で信二は声を上げないで泣いた。プライドが高く、泣きたくはなかった。
小学6年生の信二は友達はいなかった。頭が元々悪く、それが原因で親にも殴られた事も何度かある。だから中学までに頭がよくなりたく、今までいた友達を無視して勉強に励んだ。
しかしそれがこの様だった。今日で何回目だろる。3週間くらい前から毎日イジメが続いている。プライドで信二はだれにも言えなかった。
突然頭に衝撃が走った。バケツが降って来たのだ。頭が割れるかとも思った。頭を抑えながらしゃがみ込んで、悔しさから扉を殴った。
再び外からゲラゲラと笑い声がし、その声は扉が閉まる音と共に消えた。トイレから出て行ったのだ。
しかしまたトイレの扉が開く音がし、誰かが入ってきた。
信二は悲しみに浸っていて動く気になれなかった。小便の音と鼻歌が聞こえ、しばらくすると水が流れる音がした。しかし音は突然消えた。トイレ内に変な沈黙が流れる。そして声がした。
「あのーもうじき授業始るよ?急いだほうがいいよ、後1分だから」
明らかにこちらに行った言葉だった。信二は助けを求めるように扉を叩いて言った。
「と、扉・・・扉があかないんです・・・助けて・・・・」
涙声だったので、さぞダサイ格好だった。信二はプライドを捨て、助けを求めた。
「あ!ちょっと待って、天井と扉がロープでつながってる。今助けるから―」
チャイムが鳴ったが、まだ自分を気にしているようだ。嬉しかった。
信二は先ほどとは別の涙を流した。
そして扉は開いた。
「大丈夫?もう授業始まっちゃったけど俺も一緒だ!さぼろうぜ」
信二は止められない涙が溢れ出た。
その子は信二に近寄って背中をさすった。
時計を見ると授業開始から10分立っていた。やっと落ち着いた信二はその子と屋上にいた。
「君名前とクラスは?6年生だよね?」
信二は俯きながら言った。
「堀信信二6年。クラスは4組だよ」
その子はへーと何度か頷いた。
「俺は道原修也。6年1組だよ。先生には相談したの?」
相談とはイジメの事だ。信二は言ってないが、恰好からしてイジメだと分かったはずだ。
「いや・・・恥ずかしいから相談はしてない。それより・・・さっきはありがとう」
「俺は困っている人をほっとけない性格だから。相談できないならさ、いつでも俺に相談してよ。
いつでも聞くから」
そして修也は信二に右手を差し出した。
「俺と友達になってくれるなら握手してくれ」
信二は迷わずに修也の手を握った――――




