ゲーム の ハジマリ
愛知市立高等学校の校舎にも夏が訪れた。今日で1学期は終わる。ついに夏が来たのだ。
2年E組の教室はいつも通り会話で盛り上がっていた。
1番後の窓側の席に道原修也は座っていた。窓から外を眺めると校庭には誰もいないが蝉の鳴き声も聞こえ、太陽の光でまぶしく照らされている。修也は1度教室内を見回した。
黒板すぐ前の席には小野真紀子が座っており、彼女の周りは多くの女子が囲んで会話していた。
小野真紀子はクラス1さわやかグループ(修也の中では)のリーダーであり、メンバーも皆心が透き通っている純粋派がそろっている。
伊戸田由衣香、宇野絵莉美、寺島和代、半田佳奈を合わせた5人グループだ。
会話の内容も最近の事や部活、女子会話など可愛らしいものである。
一方で教室廊下側丁度真ん中あたりの席では和田興子がふんぞり返ったように脚を組んで座っており、そこに新鍋香織と丸山玲奈がいかにも不良そうに姿勢を傾けていた。
この3人は学校1番確実で女子不良組だ。3人とはいえ同級生以下なら男といえども数人を相手に倒したことがあるという。かかわりにくい存在だ。
修也の丁度となり、岡村貢と赤西重雄が両方ともメガネを光らせて会話していた。
彼らはクラス内では2人揃うと『ダブルデータ』と言われ、パソコンの授業なんかは一際身だっている。貢は計算力がトップで重雄は雑学なら何でも知ってるほどだ。
この2人は仲もよく、2人揃うと頭脳戦なら勝てなかった。
修也の前には学級委員長の佐川清史と瀬本愛子が仲良く話していた。
2人の関係はもちろんあれで、中学3年の時からの付き合いだという。
そして最も身を削るグループがいた。それは修也の斜め右前でやや左よりの前の方である。
興子よりもオーラの放ち方が尋常じゃない聖川零。本名らしいが、彼の噂はかなりある。
高校1年の時先輩6人を1人で相手して20秒で倒したという。父親が現役空手でそれが受け継がれているらしい。そこに飯田健、小田亮平、戸倉マキルエ、山本太一、吉木亜里沙の6人で編成される
通称『零帝国』。メンバーは皆元不良経験者で、県第1区域内の高校で1番ヤバイグループである。
そして修也の1番の親友は・・・
「よっ、お前どこ見てんだ?まさか好きな子でもいるのか~?」
堀信信二だ。彼とは中学入学時から既に知り合いで、共にがんばってきた仲だ。
「まさか。ただ夏休み前に皆どんな話してるんかな~って思ったからさ」
この時間は4時限目のホームルームが終わり、休憩の時間である。言うそばからチャイムが鳴った。
担任の小川が教室に入ってきた。
「はいはい。皆席つけよ~いいか。これで1学期は終わり。夏休みをどう過ごすかは1人1人の~」
それからまた長い話が始まった。修也は机に肘を置き、眺めるようにして小川の話を聞いた。
20分くらい話したか。やっと終戦が見えてきた。
「だから、皆はしっかり勉強するんだぞ。宿題たっぷりだからな。じゃあ時間だしそろそろ終わるか。はい、起立!。じゃあ今度皆と会う時は夏の中旬だね。解散!」
ふっーと疲れ切って各々が帰り始めた。信二も部活が終わったとき見たいな顔をしている。
(といっても部活は2人ともサッカー部員なので疲れるのは日常だ。)
「相変わらずなげぇな小川のやつ」
修也は笑って返した。
「まったくだよ」
すると教室出口付近にいる日山命がドアを背中に怪訝な顔でこちらを向いて言った。
「開かない・・・」
教室は静まり返っていた。
命と一緒にいる結川美里も表情が怪訝だった。
すると正義感強い佐田寛太が2人のもとに駆け寄った。
「どういうことだ?ドアが開かないって?」
命がうんと頷く。
寛太はドアを開こうとするが音すらせずに全く動かない。巨大な岩を押しているかのように。
すると柔道部員の力派、宇野田剛がドアに両手をかけ、顔を真っ赤にして開けようとしている。
さらに窓側からも声がした。
「おい、みんな。窓もあかない。一体どうなってんだ!」
史久原風馬が声を上げて叫んだ。
近くにいた修也が駆け寄る。
「落ち着け風馬。混乱するだろ。で、窓が開かないって?」
風馬は落ち着き、1回しっかりと頷いた。
修也は窓に手をかけ、おもいっきり横に引っ張る。が、びくともしない。多少ガタガタするはずなのに。そして突然ガンッという鈍い音がした。
前方窓付近には戸倉マキルエが自分の椅子を持って窓を叩いていた。さすがはマキルエだ。
彼はハーフでやることが全て危ない。
何回か窓に椅子を打ちつけるが割れないため諦めて腰をおろした。一言、
「どうなってんだ・・・」
だいぶ教室がざわつき始めた。担任小川も異変に気づき、ドアを開けようとするが、全く動かない。
小川は携帯で誰かに連絡するがまたっく通じないらしく、携帯をポケットにしまった。
「皆落ち着いてくれ。1回席に着こう。状況を整理するんだ。」
皆なす術がなく、席に着いた。
「正直僕にも何が起こっててどうしたらいいか全く分からない。まずは状況を確かめよう。騒いだって無駄だ」
修也は何気なく外を見ると他の生徒たちが楽しそうに会話しながら返っていくのが見えた。
あ、と声を出そうとした途端先に窓側前から2番目の新井田龍太が言った。
「先生外にはもう他の人たちが帰っています。人から見て僕たち以外皆下校してます」
それが引き金だった。琴原悠が窓に走りバンバンバンと窓を叩いて叫んだ。
「おーいだれかーどうなってるか説明しろー!おーい!」
他の皆も5割は窓で同じ行動をとっていた。
教室中心の山岡朱里が1人で静かに泣いているのに気づいた。修也は素早く駆け寄った。
「大丈夫?怖がらないで。今落ち着く用皆に言うから」
朱里はうん、とまだ泣きながら頷いた。
修也は声を上げようとした。しかしそれは担任小川の声によって止められた。
「お、おい!清原先生!ちょっと扉が・・・って清原先生!無視しないで下さい!ちょっと!」
小川はドアをバンバン叩いて廊下を歩く教師清原を呼ぶが、清原は全く動じなく無視するというか
気付いていないように通り過ぎていった。
小川もよっぽど帰りたいのか。そんな平和な事を考えていると横から吉本恵に肩を押された。
「ちょっと修也~あんた朱里の面倒は見て理恵の事は心配じゃないの~?ほら理恵も泣いてるよ。」
修也は何?と目つきを変えて廊下側後から2番目にいる中川理恵を見た。確かに俯いている。
すぐさま駆け寄った。
修也は人を選ばずに困っている人を助けようする正義感が誰よりも強い。
しかし恵が望んでいたことはそこではなかった。
「理恵?理恵大丈夫だ。今はなにかと騒がしいがちょっと待ってればことは済む。な」
理恵は声を涙声にして言った。
「修也君・・・ありがとう」
修也は微笑んで席に戻った。すぐに恵にまた肩を押された。
「おぉやるじゃ~ん修也。見なおしたよぉ。これで理恵も嬉しいはずね」
「は?何言ってんだよ。てか恵はこの状況で怖くはないのか?」
「うん、何かさ、楽しいじゃん。こういう時に誰かと誰かが結ばれる・・・って感じでさ」
相変わらず恵は恋愛とか好きだ。たまに修也をおちょくってくるがこういった内容だ。
しかし恵が黙るとその表情が微かに寂しそうに見えた気がした。
そして突然黒板上にある放送スピーカーから男の声が聞こえた。




