生命 の 喪失
修也は死んでいない。つまり嘘はついていないという事だ。
数十秒前の事だ。
修也は頭の中で美香の性格の悪いところを考えた。
天然的でミスが多く、一緒に行動した時は必ず何か事件が起こる。面倒なやつだ、と。
そして言ったのだ。
―美香を撃て― と。
そして死ぬ演技をし、信二にだけ目で言った。
(俺は生きている、だから興子に隙を作らせろ)
しっかり伝わったかどうかは不明だが信二は行動してくれた。
理恵には悪いが表情に出す恐れがあったので言わなかった。
途端、理恵が修也の腕をしっかり掴んだ。もう離さない、と。
「心配したじゃない!私にいってよ。修也君いなくなったら私・・・」
修也は軽く片手だけで抱いてやった。その間も片手でしっかり銃をもっている。
興子が威圧を持って言った。
「私が甘かったわ。しかもあなたにやられるとはね。でも――」
興子の目付きが変わった。修也が判断する前に、興子は身を屈めて後ろにいる女子を隠し持っていたポイズネスナイフで横に切り裂いた。
玲奈と朱里の太腿辺りをナイフが通過した。1人は脚を抑えながら崩れ落ちた。
視界に入らないほどの速さだった。
「まだ負けてない!」
修也は反射的に銃の引き金を引いた。
パンという乾いた音がすると興子の背中に穴があいた。続けて2発、3発。
興子は3発者銃弾を受けても辛うじて生きていた。修也を睨みつけると、手に持ったナイフを投げつけた。しかし修也の目にはスローの映像に見えた。ナイフがゆっくりこちらに向かって来る。
楽々とそれを避けるとナイフは木製のロッカーにサクッと突き刺さった。
それを見た興子は表情を変えずに仰向けに倒れた。修也は興子の横に銃を置いた。
この銃は人を殺すための道具だ。必要ない。
「っっ!!!」
興子に刺された玲奈と朱里が脚を抑えて苦しみだした。嘘をついたのか?いやなにもしゃべっていない。修也は1人に駆け寄ると、声をかける。周りも集まりだした。
「玲奈?どうしたんだ?脚が痛いのか?朱里もどうした!」
玲奈の傷口を見るため、スカートを浅く捲ると、傷口の周りがどす黒く変色していた。
朱里も同じ容態だ。修也はロッカーに刺さったナイフに近寄り、抜きとった。
見た目は何ともないが、おそらくこれは毒だ。ナイフの横に、『ポイズネスナイフ』と書かれている。つまり毒性だ。気づいた時には遅かった。
振り向くと1人はグッタリト動かなくなってしまっている。恵や理恵が2人の体を揺すっている。
すると真由が興子の死体に近づき、銃をそっと手に取った。悪い予感がする。
「真由――」
修也の声を遮り、真由は自分のこめかみに銃を当て、言った。
「皆!私も風馬みたいに自分から戦線離脱する。興子が誘っている時私が1番興子側に付いた。あの時は怖かった。何されるか分かんなかったし。ごめん。だから罪を償う」
「真由!お前がしたことは悪いことじゃない。もう、どうでもいいんだ。そんな事より死ぬってな んだよ。お前はまだ必要とされている!だから――」
修也の声をまたも遮って真由は言った。
「私を必要としてる人?いるわけない。親だって離婚して母親は私を7歳で保育所に預けてどっか いっちゃったのよ!こんな状況で私を必要としてる人なんか――」
「いるって言ってるだろ!少なからず俺はお前を必要としている!ここから脱出するためには
協力がいるんだ!だから・・・大声だして悪かった。」
真由の目から大量の涙が溢れた。
「修也は自分の事より他人の事を心配してくれるんだね。優しい。ありがとうね。でも私は迷惑か けたくない。最後に良い事聞けた。私が必要・・・か――」
修也は膝を床につけた。どうして。
銃の発砲音と共にまた1つの命が消えた。
<男子10番佐田寛太
男子11番史久原風馬
女子11番日向海玲奈
女子13番丸山玲奈
女子14番山岡朱里
女子19番和田興子
女子20番和原真由 死亡 残り 9名>




