感情 の 心理
興子は銃を構えて静かにカウントダウンした。
「他はいいの?・・・9、8、7、6」
びくびく震えながら新鍋香織があちらに行ってしまった。
その姿を見た日向海玲奈も取り付かれたようにフラフラと歩いて行ってしまった。
ごめん、と声を掛けて山岡朱里もあちらへ―
「5,4,3」
「おい、だったら先に興子を殺せばいい。銃を持っていたって一斉にかかれば――」
先走った佐田寛太は興子による銃撃で脳天に穴があいた。
―寛太!
正義感強く、修也と似た面があったので力を合わせたかった。寛太の今の台詞で希望が見えた。
しかし戦力の寛太は・・・。
修也にスライディングするように倒れた寛太は修也を見ると手を伸ばしかけて力尽きた。
修也は動けなかった。またクラスメイトの死を目の当たりにしてしまった。
「はい、女子の皆ごめんね。あと3秒!・・・2・・1、」
零区野美香が1歩踏み出した。美香もまでが・・・。終わった。
あちらに行った女子は後々殺されるに決まっている。
バラバラになってしまっては勝てない。修也は膝をついた。
「興子・・・私は間違ってると思う。あなたのしてること」
美香が思わぬことを口にしたので修也は睨むようにして美香を見た。
しっかり焦点を興子に定めている。
興子はまたも躊躇なく美香に銃口を向けた。美香は震えているが、動こうとしない。
「美香ぁぁーーー!」
途端信二が声を上げた。
「やめろ美香!俺達の事はいいからあっちに行って興子に守ってもらえ。頼む!」
美香は信二を見るなり首を横に振った。私は絶対に行かない、と決心付いていた。
修也は何か対策がないか考えるが、何もない!
できれば美香の思いを無駄にしたくはなかった。仕方ない。これしか・・・
「もういい!興子!めんどくさいから美香を撃て!そしてら俺を―」
修也は胸に手を当てて苦しみだした。呼吸が荒くなってきて息苦しい。手は激しく痙攣した。
これは嘘をついた時の症状だ。
理恵が真っ先に近づいてきた。
「修也君?一体・・・嘘をついて・・・なんで!?美香を撃てって言ったの!!」
修也は声も出せずに力尽きた。
理恵は嘘、嘘、嘘・・・と、修也を見つめながら呟いている。
そして興子は理恵を見据えると吐き捨てるように言った。
「無様ね、理恵。あなたを守っていた王子様が他の女によって死んだとは。随分可愛そうだね。」
理恵は興子を見上げた。
「私が修也を殺しちゃったの?興子・・・」
興子は美香に対して笑顔で言った。とても晴れてる笑顔とは言いにくい。
「心配しなくていいわよ。私が守ってあげるっていってるじゃない。じゃあ美香で終りね」
美香はそそくさと興子のもとに駆け寄った。
残った女子は中川理恵と吉本恵だけだった。
もちろん男子は生き残っている中で気が強い新井田龍太や野村健、他に田山伸介は読書派なので喧嘩には向かないが、大事な1人だ。というより喧嘩そのものがおかしいとも思えた。
興子が目を落とした
美香が躓き、可愛らしくこけたのである。この一瞬の隙を逃さなかった。
信二は猛ダッシュし、傍にあった椅子を投げて興子を妨害した。
信二が龍太と野村健に目で合図し、龍太も同じく椅子を投げ、健は鋭利なシャーペンをいくつも興子に投げた。興子は後ろに下がっていくが、素早く後ろに椅子を投げ、周りこむ。
「ふ、これが反乱のつもりかしら?」
興子は至って平然で、銃口を信二にまず向けた。しかし発砲されずに、興子の手から銃が消えた。
「お前の負けだ、観念しろよ。今ならまで許してやるからここにいる皆に謝れ!」
興子の声は震えていた。
「し、修也?なんで・・・さっき死んだはずじゃ・・・・」
修也は勝ち誇ったように笑った。




