反乱 の 正義
PM5:32
バラララとカードが宙を舞った。前方新鍋香織がトランプを零に向けて投げた。全く届かずに舞っただけだが、あまりの大胆な行動にマキルエが前を向いた。その一瞬だった。
風馬は力を限界まで込めた左手の拳をマキルエの背中に直撃させた。マキルエは突然の事によろめいたが、ダメージは大きくはなく、風馬の首を激しく掴んだ。と、同時に修也の右手拳はマキルエの左頬に命中した。
怯むマキルエの後ろから新井田龍太が羽追い攻めにした。マキルエは身動きかとれずに必死に抵抗するが、風馬がマキルエの左腕、信二が右腕をしっかり掴み、逃がすまいと抑えた。
一方で教室前方は香織がトランプを散らせたあと、琴原悠が座っていた椅子を零に向かって投げつけた。決して強い力とは言えなかっただが、椅子の威力は佳奈で分かっていた。
零は溜め息をつき、椅子を簡単に避けた。しかし椅子は隣にいた山本太一の右太腿に直撃した。
ガツンと当たっただけだったが、太一は足を抑えた。悠を見上げると目は鬼のようになっていた。
度胸がない悠が椅子を投げた行動は勇敢だが、太一の目つきにかなり怯んだ。
太一は腰に忍ばせていたナイフを抜き、悠にもう突進していた。
零の奴らは携帯ナイフというものを常に持参している。頭がイカれてるのか。
悠は修也に助けを求めようと手を伸ばした。
「修也ぁー!」
修也は事態に気づき、走り出した。マキルエは全く動けない状況だから心配ない。
悠との距離あと5m。しかし後からより横からの方が早かった。太一が悠の目の前に現れ、助けを求める悠の脇腹にナイフを全精力を込めて突き刺した。悠はぎゃあと脇腹に刺さったナイフを見ると、
目を見開かせ、もう1度修也に助けを求めた。声は出てなかったがハッキリと口で言った。
(た・す・け・て!)
修也が太一の腕をつかんだのはナイフがもう1度同じ箇所に刺された時だった。太一を吹き飛ばし、
悠の背中を持った。1回目に刺された場所からはドクドクと血が流れていた。
悠の意識は朦朧としている。修也は体をゆすった。
「悠!おい悠しっかしりしろぉー!お前はよく頑張ったから、少しは落ち着いて休め。頼むから死ぬな」
悠は寝た状態で1度優しく微笑み、ゆっっくり目を閉じた。
修也はこの時始めて本当の怒りを覚えた。体がすごく熱くなっていく。
修也は叫ばずに、あくまで冷静でいるつもりだったが、悠をそっと寝かせると、太一を睨んだ。
太一は不気味に笑っている。太一を殺したい!しかし零がまだいて・・・零?
今までいた席に零はいなかった。その瞬間女子がキャーと叫んだ。
理恵が声を枯れさせて言った。
「修也君!こっち・・・風馬君が・・・」
理恵が指をさした方向を見るとそこに風馬が苦しそうに仰向けに倒れていた。倒れる風馬の腹を零が足でドスドスと蹴っている。風馬は苦しそうに血を吐いた。
後ろにいた生徒ほぼ皆にその血はかかり、その瞬間修也の何かが切れた。周りの奴らは零に全く動けていない。
怒りの矛先は零に向いた。
敵うわけがないと内心分かっていても仲間が苦しんでいる。友が助けを求めている!
零に体当たりするが、ほんのひと蹴りで修也は吹っ飛んだ。
「俺はな、お前たちみたいな愚民と足揃える気はねぇ。なんせ親父が業界1のプロ空手屋だからな。あえて言わせてもらう。生き残るのは俺だ」
零の目は凶悪に満ちていた。それでも修也は構わず体当たりした。結果は同じ。しかしやめなかった。たとえダメージが与えられなくても時間を稼げる。そんな修也を信二は息を飲んでみていた。
体が動かなかった。
あまりにしつこく体当たりする修也に零は風馬を足でどかし、オールバックの髪を両手で流れに沿って手を1度動かし、突進する修也の腕を掴むと、咄嗟に後に回り込み、片足を蹴ってバランスを崩した修也を巴投げして床に叩きつけた。1度離れると修也はすでに意識が飛んでいた。
ここでようやく信二の足が動いた。しかし遅かったのだ。
1歩前に出た信二の胸倉をつかむと、横に回転させて投げ倒した。
ほんの2秒だ。
「他にこうなりたい奴は?」
零の問いかけに誰も反応しなかった。零はふっと笑うと席に戻った。
そしておそらく信二に向けて発した。
「お前らの作戦はばればれだ。まず香織と悠に作戦を言うだろ。伝える方法はメモか何かだろ。そして風馬が紙を落として俺達の中の誰かを引き付ける。そしたら前にいる2人がなにか行動をし て注目を集めておき、紙を確認しに言った奴を捕まえる。おそらく人質にでもするつもりだったん だろう。そして前にいた香織と悠は使い捨て。せめて太一を倒してくれると思い、残る俺を殺す。ふっなかなか面白いね。でも爪が甘いな。まず俺を殺すことなんて無理だから」
信二は唇を噛んだ。
そして解放されたマキルエは捕まえていたクラスメイトをぐるりと睨みまわし、零の元に戻った。
香織は未然と席を離れておらず、そのせいで太一に捕まってしまった。
太一の右腕は香織の後から首に巻きついており、香織は苦しそうにじたばたと暴れる。
「零、こいつどうする?殺っちまっていいか?」
零は冷やかに言った。
「ああ。邪魔なのは消えてもらうしかない」
太一はへへと口だけで笑い、携帯ナイフを取り出して香織の首元につけた。
「香織ちゃん?何か言い残すことがあったら言っていいよ?」
香織は暴れるのをやめ、縋りつくように泣き始めた。太一はその姿を見て未然笑っている。
信二はとても人間とは思えなかった。
香織がやられる!しかしその前にこの状況を翻す事が起こっていく・・・。
<男子8番琴原悠 死亡 残り21名>




