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魔法使いの歩き方  作者: きーち
魔法使いの歩き方
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魔法使いの歩き方(4)

「王立騎士団に、魔法使いが参加するんですか。そりゃあイリスさんにとっては他人事じゃありませんよね」

 アレクの説明を聞いたクルトの感想はそういうものだった。変化が起きるのはクルト自身で無く、どこか遠く感じる組織での出来事。クルトにとってはまさに他人事だ。

「お前の様な奴らが同僚になると思えば、ちょっと遠慮したい事態だな」

 憎まれ口を叩くイリス。これまでの戦いで、それなりに魔法使いという人種を評価していると思っていたのだが。

「あー。言っておくが、一番関係があるのはお前の方だ」

 アレクはクルトを指差して答える。

「どういうことですか? 僕は別に王立騎士団に入りたいなんて思ってませんけど」

「いいか? リブクインでの戦いで、魔法使いが評価されるに至った作戦を考えたのは誰だ? というか、評価されている魔法使いこそがお前なんだよ」

 鈍い奴めと差した指をぐるぐる回すアレク。トンボじゃあるまいし、それで目が回るわけがない。しかし妙に苛つく動作だ。

「僕がですか? そりゃあ光栄ですね。金一封が貰えたりするんでしょうか」

 勿論その言葉は本心では無い。権力者に評価されるなんて面倒なことはお断りである。

「金一封どころか、もっと凄いことになるかもしれない」

「名誉騎士位でも与えるのか。確かこいつはもう貴族だったと思うが」

 イリスにとっては、名誉騎士位とは金銭よりも価値のある物らしい。一方、クルトにとっては金銭の方が大事だったりする。どちらかに上下をつけているのでは無く、金の方が使い勝手が良さそうと言うのが大きな理由だ。

「惜しい話だ。騎士は騎士でも、名誉騎士の方じゃない。お嬢さんと同じ騎士の方さ」

 アレクの言葉は、クルトとイリス。両者ともに驚愕の感情をもって受け入れられた。

「王立騎士団にこいつが入ると言うのか! そんな馬鹿な話があるか!」

「そうですよ! あんな堅っ苦しい組織に入るなんて、まっぴらごめんです」

 二人共がアレクの話に反発しているものの、その内容はかなり違う。イリスは誇りを持っている組織に、魔法使いの様な人種が入ってくることに嫌悪感を抱いているのに対して、クルトは単純に王立騎士団という組織が嫌いなのだ。

「俺の決定じゃあ無いしなあ。もし嫌なら、アシュルまで行って、直接行動してみればどうだ? 多分、そっちから会おうとすれば、ヒレイ様もスガル様も会ってくれると思うぞ?」

「そうすることにします。何もかもが決まる前に、こっちの姿勢を見せつけて置かないと」

 クルトは休養のために立ち寄ったモノビーブから、早急に立ち去る準備をする。今日か明日にでも、町を出るつもりなのだ。

「私もそうすることにする。今回の件については、上役と言えども、一言いってやらないと………」

 王家の部下とも言えるイリスであるが、スガルに文句を言うつもりである様だ。

「ああ、動きは早い方が良いな。放って置けば、どんどん外枠が埋まっていくからな」

 慌てるクルトとイリスを見て、愉快そうにするアレク。ただ、クルトがもう少し冷静でいれば、彼の表情や動作から、もう一つの感情を読み取れたのかもしれない。

 しかし、残念ながら、クルトは相手の真意を見破ることはできなかった。“まんまと上手く行った”というアレクの真意を。



 モノビーブはイーチ国とマジクト国の国境線付近にあるため、マジクト国へと帰るにはそれほど時間は掛からない。ただし、アシュルへと帰るのは別だ。マジクト国の東側。その中央にあるアシュルの町へ、イーチ国との国境線から帰ろうとすれば、普通は数日掛かる日程になる。

 その道のりを、クルト達は二日程の強行軍で進んだ。アレクの話がその行動を起こさせたわけであるが、まさかそれがスガル達の狙い通りであるとは思いも寄らない。

 漸くそのことにクルト達が気が付いたのは、王城で面会を頼み、それがすぐに認められて、スガルの執務室に再び足を踏み入れた時であった。

「ようこそ。待っていたぞ。いやいや驚きの展開が続いて、お互い大変だなあ」

 笑みを浮かべるスガルと渋い顔のヒレイがクルトとイリスを待ち受けていた。ちなみに、ここまでクルト達を向かわせたアレク自身はと言えば、急ぐクルト達を尻目に、イーチ国でゆっくりしてから帰るらしい。

「王城の面会にすぐ許可が出た時点で、嫌な予感がしていたんですが、やっぱりですか………」

 普通、都合良くマジクト国の重鎮二人が揃うことは無い。クルト達がマジクト国に帰還することを予見し、事前に彼らと話し合う用意をしていなければであるが。

「状況が大きく変わった。早急に君らと今後について話し合う必要があったのだ」

 だからクルト達がさっさとアシュルへ戻る様に仕向けたということか。状況もそうだが、ヒレイの言葉は不吉な響きがある。

 そんな言葉に答えるのはイリスだ。

「アレクという男から、貴族議会がどういう状況であるかは概ね聞いています。魔法使いを王立騎士団員として雇うというのは、本気ですか?」

「それに関しては本当だ。魔法が有用な力で、王立騎士団という組織にとってもそうだということに、おかしなところはあるまい?」

 元々、王家直属の軍事組織に、魔法を十分に使える者がいないという状況がおかしいとヒレイは話す。

 確かに魔法を軍事力に活かすという発想は、別におかしくもなんでもない物だ。ただ、マジクト国内でそれを行うのは、もっぱら魔法大学である。

「大学生徒の多くは軟弱です。学問に精を出すのは良いですが、王権を守る存在足り得ない」

「否定はせんがな。そうであるならば鍛えれば良い。王立騎士団にはそういう機能もあるだろうに」

 騎士団員は、入団試験を通ればそのまま騎士団員になるわけではない。その後の訓練、仕事の合間の訓練。休む前に訓練と、大半の仕事が騎士団員としての訓練を繰り返すことで、その立場を維持しているのだ。

「大学生徒でも、訓練次第でどうとでもなると?」

「やる価値はあるということだ。そもそも、王立騎士団に魔法使いをという話は、昨日今日始まった物では無い。もっと以前から、国内での魔法技術を魔法大学が独占しているという事態を憂慮する者がいて、その状況の打開案に王立騎士団への魔法使い入団は考えられていた」

 その、事態を憂慮する者とやらの一人がヒレイなのだろう。彼は適材適所や組織の健全化を好む人間だ。魔法という力があって、それを率先して利用する組織が、王家の直下では無く貴族議会の下にあるということに疑問を覚えていたに違いない。せめて、王立騎士団に魔法を利用して動く部署があっても良いと考えたのも不自然では無いだろう。

「その話がずっと前から話し合われていたことだとするのなら、僕への用はなんなんです? 僕らを急に呼び出したのは“昨日今日に始まった事”があるからでしょう?」

 クルトはイリスとヒレイの話を聞きながら、話の方向性を探っていた。アレクに一杯喰わされたこともあって、今度は注意して周囲を観察しようと心掛けていたのだ。

 そんなクルトに答える様に、スガルは口を開いた。

「鋭い人間は嫌いじゃあないな。それが自分と親しい間柄の相手となれば、中々に良いことだぞ」

 別にクルト自身は、スガルと親しいとは思っていない。恐れ多いという感情も無くはないが、それ以上に住む世界が違う相手だと考えている。

「狙いは何です? 親しいと言っても、目論見も無く話し合う関係でもないでしょう?」

「まったくだ。つい最近に始まったことと言うのはだな、今後、魔法使いという存在をどう扱っていくかということだった」

「魔法使いをですか?」

 魔法使いは魔法使いだろう。魔法を研究し、なんらかの成果を出す。そういう存在を魔法使いという。

「お前の考えている通りのこれまでの認識は、それそのままで良い。魔法研究というのは、将来にわたって、この国に必要になってくるだろうからなあ。問題は、リブクインでの戦果だ」

「戦いにおいて、魔法使いが役に立つことが証明されたから、支援団の存在は無駄にならなかった。そういう名目で貴族議会を治めたのは、あなた達だと聞いていますよ」

 スガルが話そうとしているのはそのことだろうか。何か少し違う気もするクルト。

「貴族達を納得させる決定という意味では、その点に関しては随分と役に立ってくれたな。ただ、余計な概念が付随してしまう」

「それはいったい?」

「魔法使いとは魔法を使って戦う存在だという認識だ。裏方に籠って研究に勤しむだけが魔法使いの生き方じゃあないと考える連中が出てくるかもしれん」

 まだその兆候は無いが、リブクインでの戦いは、そういう変化を齎す可能性が十分にあるらしい。

「どれ程の権力や戦力を持とうと、人の考え方まではどうしようもない。魔法使いが戦う者という考えは、何時か何処かで開花し、マジクト国に仇名す存在となるかもしれない。だから先手を俺が打つ」

「魔法使いを弾圧するつもりですか?」

「その逆だ。魔法使い厚遇する。だから王立騎士団に入れるんだ。魔法使いが戦う存在となるのなら、もっとも先にそれを利用する立場になる。それこそが国というものだろう。フォース大陸に魔法大学が一つしかないのはどうしてだと思う? マジクト国が真っ先にそれを作ったからだ。二番煎じでは、得られる利益も少ない。だから他国は作らない。今回の件でも、俺は何より早く行動するのだ。それが一国を支える者としての生き方だ!」

 スガルは熱弁を奮うが、聞く毎にクルトは冷静になっていく。

「その台詞は、別の相手に使うべきものですよね」

 魔法使いのクルトにとっては、どうであろうとも利用される側なのだ。良い気分はしない。

「まあ、他の貴族共向けの演説だ。お前が不快な気分になることは承知しているぞ?」

 熱が籠った言葉を続けていたとは思えぬ素早さで表情を元に戻すスガル。こういうものこそが王族としての才能なのかもしれない。

「結局、僕を呼び出した理由はなんなんですか。一切話していない」

「当たり前だ。これから話すんだからな。良いか? クルト・カーナ。我々は王立騎士団の一部分に、魔法に関する物事を進める部署を作るつもりだ。以前から計画していた物だが、リブクインでの件で予想より大分早く実行することになった」

 本題に入ったらしいスガルの話を聞くクルト。一方でイリスは空気を読まずに質問をする。

「予想より早いとは、本来はどういうもので、どれくらいの期間を想定していたのですか?」

 自分の参加する組織ということで、イリスの関心は王立騎士団がどう変わる予定であるのかに集中している。

 その興味に答えるのはヒレイだった。

「元々は王立騎士団に並び立つ戦闘魔法集団を作る予定であり、だいたい30年から50年くらいを掛けて作るつもりだった」

 先の長い話だ。国家を構成する組織を新たに作ろうと思えば、それくらい掛かる物かもしれないが、その間に国が滅びる可能性だって少なくはない。

「で、今はどれだけの時間を予定しているのでしょうか」

「そうだな。既存の騎士団という組織を利用しつつ、人材確保と組織編制なども加味して、10年を目途にその組織を完成させることになるだろう。名目だけならば一年と掛からんが、実際に役立つ物になるにはそれくらいだ」

 どちらにせよ、気の長い話だ。10年後の話をここで話していても、クルトには実感が湧かない。だからこそ、どうにも今後の話の展開がクルトには恐ろしかった。

「ヒレイ老の言う通り、10年後には王立騎士団内部に完成した魔法使いの戦闘組織を作る。これは決定事項だ。その上で、組織編制の鍵となる第一歩。組織を作る上での中心人物と場所を一年後くらいには用意しておかなければならない」

 遠い先の話であったはずが、随分と近い将来の話になってきた。10年後に組織を作る予定と言っても、いきなり完成した物ができるわけがない。それまでの準備が必要な以上、明日からでも始めなければならない事柄なのだろう。

 スガルの説明を補足する様に、今度はヒレイが口を開いた。

「場所や地位については、スガル様の権限さえあれば、すぐにでも王立騎士団内部で用意できる。後は人材だ。中心人物となる者には、組織の結成準備段階から関わる者が望ましい。そして、完成が10年後と先である以上、現段階では年若い魔法使いを登用したい」

 スガルとヒレイ。両者がクルトに視線を向けるのを見て、クルトは確信した。

「僕が……その組織の中心人物になれと?」

 話の展開上、そう続くことは目に見えていた。どうしてクルトをアシュルに急遽呼び戻したのか。何故、魔法使いを中心とした組織を作る話をクルトにするのか。それらの答えを予想することは容易い。

「曲りなりにも、リブクインでの戦いで活躍したのだろう? その結果が現在の状況だ。お前の作戦の成果で新たな魔法使いの組織が作られることとなった。そこでお前自身を中心人物にするという筋書きは、それほど悪くない」

 ヒレイが話すのは、結果の原因となった者が責任を取るという構図だろうか。見る者が見れば、羨ましい立場だと思われるかもしれない。

「僕自身に、そんな能力があるとは思えません」

 クルトにとっては大きすぎる話だ。いきなり国の用意する組織の中心に立てなどと言われて、はいと頷ける人間の方が少ないだろう。クルトは当然多数派に属している。

「まったくです。こいつは学生で年少ですよ? 人をまとめる器では無い」

 イリスにも能力不足を指摘される。それらが正論である以上、クルト自身が不満を感じることはない。

「能力云々は後からどうとでもなる。というかさせる。重要なのは、俺達の息が掛かった人間であり、さっきヒレイ老が説明した用件を満たしていて、尚且つ候補に挙げた時、違和感の無い人物であるということだ。今のところ、お前しかいないわけだな」

 スガルに指を向けられる。最近、指を差されることが多い様に思うのはクルトの気のせいだろうか。

「対象者の能力より、その立場の方が重要ってことですか?」

 スガルの言いたい事をクルトなりに要約するとそうなる。

「そんなもんだ。能力というのは後からついてくるものだしなあ」

 生まれた時から王族としての立場が決まっている者の台詞であるので、重みが違う。ただし、クルトはそれで納得するわけではなかった。

「僕があなた方の選ぶ候補者に向いていることと、僕自身がそれを望むのは別の話ですよね?」

 クルトは王立騎士団という組織が嫌いである。何故そうであるかと聞かれれば、相性が悪いからだと答えるだろう。

 規律とその行動の指針を国の繁栄と維持のためだけに向ける。そういう組織に入った自分というのをまったく想像できないのだ。

「お前が望まないでいることと、俺達がお前に責任を押し付けることも別の話だろう?」

 決定権がクルトには無いということか。確かに、相手の立場を考えればそうなってもおかしくない。

「ですけれど、将来に渡って重要な組織になるかもしれない物の中心に、非協力的な人間を置くなんてできますかね?」

 相手がクルトに立たせようとしている場所は、それなりな場所である以上、その立場を利用して交渉することも可能だ。例えば、どう考えてもその立場に向いていないことを相手に知らせることで、相手の命令から逃げたりとか。

「さて……それが問題なわけだなあ」

 スガルは顎に手をやって、漸く閉口した。今回、スガルやヒレイの狙いにとって、一番の壁になっているのがクルトなのかもしれない。そう思うと、少しだけクルトは気分が良かった。

 しかしそんな気分も、ヒレイの言葉に吹き飛ばされる。

「大学生徒がリブクインへ出兵する様な事態を繰り返したいというのなら、別にそれでも構わんがね」

「なんですって?」

 ヒレイのその言葉は、クルトにとって聞き流せない物だった。リブクインへの学生出兵は、ナイツの死へと繋がる物事だったのだから。

「わからんか? もし、私達が戦闘を行う魔法使い達の組織を作れなければ、その役目は必然的に魔法大学へと向かうことになる。支援団の活動が、ある程度の評価を得てしまった以上、リブクインでの実績が存在することになるのだからな。その点を、あの功名心豊かな大学長が見逃すはずがない。もう一度栄光をなどと考え出すかもしれないな」

「あの大学長……まだ健在なんですか」

 クルトはファイム・プリューニ魔法大学長を頭に思い浮かべる。まだその立場に反して若い青年の様な男だが、内心は権力者的な野心に満ちた人物。

 大学生を支援団に参加させる決定を下した張本人と言えるかもしれない。てっきり、その責任を取って失脚したと思っていたのだが。

「憎まれっ子世にはばかるという奴かな? ああいう手合いは存外にしぶとい物でな。支援団の活躍が議会で認められるや否や、自分の決定の正当性を主張して、なんとかその地位を転げ落ちずに済んだわけだ」

 ヒレイの話を聞いて、どうしようもない苛立ちがクルトを襲う。あまりにも無責任では無いか。権力を使うことは権力者としての常であるが、それに失敗すれば、それなりの代価を支払うべきだろう。

「私も中々に歯痒いよ。彼は確か、支援団の存在が無意味だと論じられていた時は、大学生徒達が勝手に志願したことだと議会で答弁していたのだぞ? それが今では、自分の選択が良い結果を生んだなどと周囲に吹聴している。まあ、それで本人の信用が帰ってくるわけではないがね」

「それだけですか?」

「うん?」

 ヒレイの話を聞いていると、生まれた苛立ちがクルトの中でどんどん大きくなっていく。

「信用が落ちる。それだけで済む話なんですか?」

「あー、そうだな。それだけで済んでしまうのが現状だ」

 答えるのはスガルだった。大学長はやってしまったことに対して上手く切り抜けた。そう納得するしかないと話す。

「支援団が出した被害。それが甚大であれば話は別だったが、死人が一人だけとなると―――」

「スガル様!」

 スガルの失言をイリスが止める。もっとも、スガルがその言葉を完全に漏らしていたとしても、クルトは怒らなかっただろう。事実だからだ。

(ナイツの死は、大学長みたいな権力者には、それ程の痛手にはならない。そういう世界の話だからだ………)

 権力を持つ者とはそういうことができてしまうのだ。人一人の命の価値に鮮卑は無い。しかしその重さは人それぞれ。大学長と彼の地位にとって、ナイツの命は軽かった。それだけだ。だが、それでも納得できない物がクルトにはある。

(せめて……目に物を言わせなければ気が済まない。でも、どうしたら良い?)

 クルトと大学長では、圧倒的に大学長の方が有利だ。ただの学生であるクルトには、どうしようも無い。せめて、自身の立場がもう少し相手に近ければ。

 そこまで考えて、クルトはある事に気が付いた。今、スガル達から提案されているのはどういった物だっただろうか?

「もし、もしですよ? 僕が新たに作られる魔法使い達の組織……その中心人物になったとして、その地位は、あの大学長を攻撃するのに使えたりしますか?」

 かなり危険なことを話すクルトであるが、スガルは笑う。

「ほう。気が付いたか。魔法大学の他に魔法使いの組織ができれば、それだけ大学にとって損になる。そして新たな組織の中心に立つ人間が、明確に大学長へ敵意を向けることとなれば、その失脚を狙うことも不可能では無い」

 権力者にあがなうには自らも同じ舞台に立たなければならない。クルトはふと思いつき、それをスガルは肯定していた。

「おい、クルト。おかしなことを考えているんじゃないだろうな。傍から見ていれば、悪い大人に騙されている子どもにしか見えんぞ」

 悩むクルトを横から諌めるイリス。彼女の言うことももっともである。スガル達に乗せられ過ぎているとクルト自身も感じているのだ。

「悪い大人か。確かに俺達みたいな人種は良い大人とは言えんな」

 イリスの言葉がツボに入ったのか、笑い声を上げるまでに上機嫌になるスガル。ヒレイはと言えば、相変わらず鉄面皮のままだ。

「………少し、考えさせてください。時間が無いってことはないんでしょう?」

「決めることが大事だからな。準備にもそれなりに時間が掛かる。そうだな。返答は2,3ヶ月後でも良いぞ?」

 スガルの返答は有り難い物だった。冷静になる期間が必要だ。今後を考える期間も。そうして、落ち着いた心境の中で将来を決めるのだ。例え、今の時点で答えが決まっていたとしても、その決定には慎重にならなければいけない。




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