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魔法使いの歩き方  作者: きーち
魔法使いの戦い方
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魔法使いの戦い方(3)

 ハイマウントへの侵入も上手く行った。やはり多くの兵が出払っているらしく、見張りの数自体が少なかったのだ。

 侵入して後は、それぞれが分かれて、食料生産施設のある場所を個別に叩くことになる。どういう組み合わせかと言えば、哨戒任務時と同じ騎士団員一人と魔法使い一人のペアである。ペアの顔ぶれも変わらない。唯一の変更点と言えば、ナイツの相手だったメッズが、ヘリスラー教師とナビィの二人と合わせて、3人で行動しているくらいだろう。

「破壊工作の開始は日没を待ってから。それまでは町の中で隠れながら待機。破壊工作後は夜闇に紛れサンポ大森林まで逃げて、個別にハマツへと帰ると。こういった現地でのやり方は、騎士団員の人達との相談で決めましたけど、定石だったりするんですかね?」

 ハイマウントに幾つもある廃屋の一つ。そこにクルトとイリスは隠れ潜んでおり、ことの実行まではここで待機することにしていた。

 話す内容は、日が沈んでから決行する予定の破壊工作について。作戦の概要自体はクルトが決めたが、作戦の実行方法に関しては、クルトはまるっきり素人のため、騎士団員の意見を多く取り入れることにした。

「夜の方が見つかり難いし逃げやすい。こっちが破壊工作を行う場所を把握しているのだから、目立つ昼間にする必要は無いだろう。個別に逃げることについては、分散した方が追手も撒ける可能性が高いからだ」

 イリスの説明は、つまり、もしかしたら少数が犠牲になるかもしれない作戦だと言うことだ。そのことを理解して、クルトは顔を歪める。

「誰も彼もが助かる作戦なんて無いんですかね………」

「そんな都合の良い物があれば、誰だってそうしているし、誰もがそんな作戦を取るのなら、結局は誰かが犠牲になる」

 そういうものなのだろう。戦争である以上、どれだけ上手く行ったとしても、敵か味方のどちらかに必ず被害が出るのだ。何も犠牲にしないというのは綺麗事どころか妄想事だ。

「けど……やっぱりできれば、味方に人死には出て欲しく無いです」

「当たり前の話だな。敵の被害は甚大に、味方の被害は最少に。そんな前提を考えない作戦なんて、意味の無い物だ」

 クルトが望むのは味方が死なない様にすること。それがイリスの言う通り作戦の本質だとするのなら、クルトが考え抜くことで、作戦の精度を上げることに繋がるのだろうか。

「……個人的に、まだやってみたいことがあります」

「攻める場所も時間帯も逃げ道も決まっている状況で、さらに何かをできるものか? 不可能だと判断すれば、すぐに却下するぞ」

 可能であれば考慮にいれてくれるということか。随分と彼女も優しい人間だ。

「事前に決めたことは当然守りますよ。作戦全体に関わることじゃあ無くて、ちょっとした効率化みたいなものですからね」

「そういう絡め手が、お前の戦い方か………」

 呆れたと言った様子でイリスはクルトを見てくる。

「どうなんでしょうね。魔法使い的な考え方……ともちょっと違うのかな」

 何にせよ、真っ向から戦うつもりはまったく無い。やるのなら、相手を陥れる手であると、クルトは考えるタイプだった。



 日が暮れて夜が来る。それはハイマウントに潜入した者達が動き出す合図だった。彼らは一斉に動きだし、夜闇に紛れ、目標までの最短距離を走り抜けた。

 町中には、幾つかの家を取り壊し、改造するなどして、畑や牧畜場が作られている。町を拠点としながら、町の中で食料を自給できる様に作られた物だが、まだ作製途中であった。

 これらが完成していれば、それなりの警備をしていたのかもしれないが、まだ目に見えた食料供給能力を持たない施設に対して、フィルゴ帝国軍はそれ程の人員を割くことをしていない。

 製作のための労働力が、そのまま警備兵を兼ねているという有様であり、さらにその中から、ハマツへ侵攻するための人員を出したためか、兵士の数はなお少ない。

 そんな気の抜けた場所の一つに、魔法使いのケンと騎士団員のオチヤが近づく。

「養豚場ってわけか。ブヒブヒ聞こえてきやがる」

 物陰に隠れ、小声で呟くオチヤを見て、ケンは肝を冷やした。

「あんまり話すと、僕らがいるって気付かれますよ」

 オチヤよりさらに小さな声で注意をするケン。小さすぎて聞こえたかどうか怪しいが。

「これで気付かれる様なら、奇襲したって意味はなんかねえよ。ほらみろ、あの緊張感の無い顔を」

 オチヤは、町の屋敷を改造したらしき養豚場を見まわる兵士を指差す。暗闇に薄らとしか見えないが、あくびをしている。

「敵が潜入しているかもって危機感が無いんでしょうか?」

「緊張感のある奴はハマツへ向かっているか、もっと重要な施設の警備でもしてるってことかもな。良いじゃねえか。やりやすい。俺はあの見張りを斬るから、その隙にお前は魔法であの建物を焼いちまえ」

「相変わらず無茶苦茶ですよね」

 一月程の付き合いであるが、ケンはオチヤという男の性格を理解し始めていた。言うことや、やる事は荒っぽく、だが考えなしの行動では無かったりする。むしろ、目的を最短でやり遂げるための方法を取っている場合が多い。

 これについて、ケンはオチヤと言う人物が実は思慮深いと言う風には考えず、経験に裏付けされた直感が鋭いのだろうと考えていた。

「いいか? いざ始めたら、躊躇なくやれよ。他の兵士達が集まったら、そこでアウトだ」

 敵が集まる前に逃げるのが作戦の成功だと言うことだろう。ケンも同意見だった。

「よし! 作戦決行だ!」

 わざと大声を上げるオチヤ。驚く見張りの兵士はこちらを見るも、それより先にオチヤは兵士に近づき、すぐさま兵士を斬り捨てた。

 以前のケンならば、そのやり方に驚いていただろうが、何度かの哨戒任務を経て、耐性がついていた。

 むしろ、オチヤが目立った動きをしている隙に、自分が養豚場を焼かなければならないと考える。

「火は短く、大火力に」

 ケンは養豚場に手を向けて、強力な火の魔法を放つ。

 森林開拓によって経済が成り立つリブクイン国は、立つ家々の多くが木造だ。春過ぎの季節であり、乾燥はしていないものの、十分な威力を持った火の魔法であるならば、すぐに燃え上がらせることができる。

「はっ! リブクインからフィルゴ帝国へ、豚の丸焼きをプレゼントだ!」

 さらにオチヤは叫ぶと、養豚場から逃げ出す。次の標的へと向かったのだろう。ケンもそれを追う。そろそろ、あちこちのフィルゴ帝国兵が異常に気付き、動き出す頃だ。さっさと町での任務を終えて、森へと逃げなければならない。

 ケンは身を翻して、走り出す。背後にはさらに勢いを増す火の手があり、彼を赤く照らしていた。

 それと同時に、パァンという破裂音がどこからか聞こえてきた。かなり大きい。町中に響いたのではないかと思えるくらいのものである。

「他の魔法使いが、何かしたのかな?」

 もしかしたら、自分の知らない魔法を使った音なのかもしれない。深く考えるのは中止して、ケンは走り続ける。戦いの素人である自分は、与えられた命令に従うことだけが生きる道だと考えていたから。



 一方で、音の原因となる魔法を使ったクルトは、すぐにその場から逃げ出していた。

「あの魔法はなんだ! 言われた通りに耳を塞がなければ、鼓膜が破れているところだぞ!」

 怒鳴るイリスの声が、キーンとした耳鳴りの向こうから聞こえてくる。

「あれで、町中の兵士が、あの音が発生したこの場へ向かってくるはずです。だから僕達も逃げないと」

 クルトが使った魔法は、魔力の力場を使い、空気を圧縮するという魔法だ。力場を発生させる魔法とは、その力場にある種の方向性を持たせることで、風を起こしたり、体の周囲に防御壁を作ったりなどがあり、死んでしまったナイツが得意としていた物である。

 一方でクルトはそれほどでは無く、力場を発生させるまでは良いが、そこからその力場を操る術が不得手だった。そんな能力で、なんとか効率的な魔法を使おうとして考えたのが、音の魔法だ。

 原理は周囲に力場を箱型に発生させ、それが内側に進む様に調整する。クルト自身が発生させることができる力場はそれほど大規模では無い。しかし規模を絞れば、力場の強度はそれなりに上げることができた。

 強度のある力場の箱は、調整された通り内側へと進み、箱内部の空気を圧縮させる。そして圧縮した空気が力場の強度を超えた時、あの破裂音が発生するという仕組みだ。

「いったい何の意味があったんだ? しかも、標的の一つをあの音を発生させるだけで狙わないなどと」

 分かれたそれぞれペアには、複数の標的が指定されている。クルト達の場合は、畑が二つに牧畜場が一つ。その一つ目で、クルトは音の魔法を使うだけ使い、そのまま逃げたのである。

 当然、音を警戒して人が集まるため、そこを奇襲するのはもう不可能だろう。

「一つだけ、無事なまま置いておくんですよ。他は当然、燃やしますけどね」

「………なるほど、要するに見せ餌だな?」

「はい。時間が経てば、フィルゴ帝国兵達だって、食糧自給用の施設を狙っていると気が付くはず。そうして、無事な場所を厳重に護衛しようとしますから………」

「音で町中の意識を向けたあの畑なら、特に人が集まりそうだな。我々はそこを襲うつもりが無いから、その集まった人間は無駄な労力になる」

 町を逃げ出す際の追っ手は少ない方が良い。町の護衛の方に兵力を割いてくれれば、それだけ逃げ出しやすくもなるだろう。

「だが、これで町中全体が警戒状態になった。思ったより、音が大きかったんじゃあないか?」

「ですね。だから、できるだけ早く任務を終わらせないと」

 クルト達は走る速度をさらに上げる。現状、時間の経過はクルト達にとって不利だ。

「それで、さっきのが作戦の効率化とか言うやつか」

「そうですね。後はまあ、こうしておけば良いかな?」

 クルトはそう口にした後、近くの家に火の魔法を飛ばした。燃やしやすそうな家を選んだため、すぐに燃え上がり、火はどんどん大きくなっていく。

「いきなり凄いことをするな………」

「ああして無関係の場所を燃やしておけば、相手は混乱するでしょうし、近くに無事なままの食糧自給施設があるのなら、必死で消火しようとします。さらに労力を割くことになるわけですね。せっかく魔法使いが敵地に直接侵入したんです。色々しないと」

 走り続けるクルトだが、何故か疲れず、そして頭の回転はいつもより早くなった様に感じる。

 まだ何かやれる。まだできることがある。もっと新しい情報は無いのか。友の死すら忘れて、クルトは走り続けた。確かにこれがクルトなりの戦い方なのかもしれない。



 クルト達が一つ目の畑を見逃し、二つ目に辿り着いた養鶏場は燃やした後、最後の標的である畑に向かう途中、問題が起きた。

「敵兵の動きが思った以上に早い。この辺りで逃げ出さないと、町を抜け出せなくなるぞ」

 家々の影を走るクルト達であるが、そこから見える表通りには敵兵らしき影が動き回っていた。

「他国への侵攻に慣れている国だけあって、奇襲されることにも慣れているのかもしれませんね。さて、どうしましょうか。命の危険があると言うのなら、ここで逃げても別に構わないんですが………」

 任務より命を優先とは、クルト自身が行った言葉だ。本人にだって従う権利くらいある。

「とりあえず、目標の畑だけでも見ておこう。それで無理だと判断したら、そのまま撤退だ」

「もし破壊工作が可能かもと思えたら?」

「勿論、実行する。命の危険が無い範囲でな」

 可能であれば敵に被害を与える。リブクインへの義理は、その程度にはあるだろう。

「さて、見えてきたぞ。どう思う?」

 最後の目標に辿り着いたクルト達。物陰に隠れながら見える景色は、畑が町の中に存在するというおかしな風景だ。その周囲に兵士達が集まっているとなると特に。

「…………この場所からあの兵士達に追われて、逃げ切ることができるのであれば、まあ可能かなと」

「畑を魔法で焼く時間は無視できるということか?」

「作ったのが早かったからか、収穫予定物がある程度成長してますよね。あれらを一気になんとかする方法ならありますよ。畑自体は無事なままでしょうけど、再び収穫物を育てようとすれば、もう一度季節を越えないと駄目でしょうね」

「十分だ。やってみよう」

 敵兵に追われても、夜の闇の中なら逃げ切れるという算段があるからだろうが、イリスは即決する。

「それじゃあ魔法を使いますけど、僕が魔法を使ったら、すぐに決めていた通りの逃走経路を走りますから、準備しておいてください」

「走る速さなら、お前には負けんさ」

 頼もしいことだ。クルトはむしろ、自分が逃げ切れるかどうかを心配した方が良いかもしれない。

「まあ、やるって決めたんだからやるんだけどね」

 クルトは魔力を放出する。今回の魔法は少し調整が厄介であるが、クルトの魔力量でも広範囲に効果を及ぼせる。隠れながらであればそれなりに集中できるため、魔法の発動は問題無い。

「さてと……よし、走りますよ!」

 クルトは魔法を発動し、すぐにその場から逃げ出した。クルトが先ほどまで居た位置には、火の玉が存在している。これがクルトの発動した魔法である。火の玉はすぐに消えたかと思うと、火の玉の周囲に白い冷気を発生させる。さらに次の瞬間には、冷気が消え、それと同時に周囲へ火を発生させた。

 火と冷気は、互いに消失と発生を繰り返し、連鎖的にその効果範囲を広げていく。範囲が広がる毎に、その効果は薄くなっていき、火の部分に至ってはただの熱気へと変わる。ただ、それでも畑全体を熱気と冷気で包むことはできる。

 兵士達もその異変にすぐに気が付くだろう。魔法の発生場所近くに居た者は、火傷する様な暑さと凍えそうな寒気に襲われただろうし、もう少し範囲を広げても、妙な気温の変化には敏感に気が付くはず。

「魔法だって気が付けば、僕らを見つけようとしてくるでしょうから、魔法が全体に広がる前に逃げ出すのが肝心なんです」

「それはわかったが、一体どういった効果があるんだ。その魔法は」

 夜闇を逃げるクルト達。事前に決めていた通りの道を進んでいるためか、話す余裕があった。

「魔力は現実世界を塗り替えて奇跡を起こすわけですが、その消失と同時に、世界には反作用のブレが生じるんです。例えば火の魔法を使えば、魔力で作った火が消える瞬間、ほんの少しだけ、逆にその場が冷えるんですよ。その冷えた瞬間を見計らって、冷気を発生させる魔法が発動する様に調整すると、ブレがより大きくなり、ブレが空間全体へと――――」

「講釈は良いから、効果を早く教えろ」

 せっかく盛り上がりそうな話題だったと言うのに、何が気に入らないのか。イリスは話を本題に戻そうとしてくる。

「効果は冷気と熱気を広範囲に伝えるものです。人間相手なら、それ程の効果は無いんですけど、ああいう作物用の植物って、寒暖差に結構弱いんですよね。夏場の霜なんかで作物全部が駄目になることも多くて」

 地方の村出身のクルトは、作物の弱さを知っている。だから、効果の薄い魔法だったとしても、十分にあの畑に被害を及ぼせると考えたのだ。

「つまり、あの畑の作物の大半が駄目になったというわけか」

「だと思いますよ? ここらへんは安定した気候ですから、そこで育つ作物は不安定さに弱い」

 季節が春過ぎで助かった。早ければ種のままなので、気候の変化には強いだろうし、駄目なら駄目で再び育てれば良い。遅ければ、そのまま無理にでも収穫を実行されたことだろう。

「とりあえず僕らの仕事はこれで終わりですね。他のみんなは、上手くやってるからなあ」

「他人の心配をするのは、逃げ切った後だ。気を抜くなよ」

 イリスの注意があったからか、その後は無事、町を抜け出すことができた。



 サンポ大森林へと逃げ切ったクルトとイリス。一応の安全圏だとは言えるのだが、前は森を抜ける過程で友人を失った。だからなのか、クルトは今日一番の緊張をこの場所で感じている。

「このまま、ハマツへと帰還するんですよね。他のみんなを待つでも無く………」

 緊張の主な理由は、自らの危険と言うのもあるが、仲間がナイツと同様に命を失っていないかという不安にも起因する。

「ハマツに帰れば嫌でもわかる。無事なら帰還するだろうし、そうでなければ行方不明のままだ」

 後者は絶対に嫌だった。今回の作戦はクルトが発案したのだ。避けようも無い責任がクルトにはある。

「今さらの話なんですけど、今回の作戦。成功したとするなら、有益なものだったと思いますか?」

 クルトは話を変えて、作戦自体の有効性について相談する。

「本当に今さらだな………。リブクインにとっては、間違いなく有益だ。敵兵の生命線を幾つか潰せたんだ。長期戦に関しては、リブクイン側が圧倒的に有利になった。もともと、リブクインに有利な状況だったんだ。これで、戦争の勝敗が決してもおかしくはない」

 言い過ぎの様な気もするが、実際に名誉なことであったとしてもクルト達にとっては関係の無い話である。

「なら、僕ら支援団やマジクト国にとってはどうでしょうか?」

「支援団に関しては、今後次第だろう。ハマツが現在どうなっているかがわからない以上、気の抜けない状態だ。確か………私達がスリーアイランド港へ帰還できる様に交渉するという話があったな?」

「司令官側は当初、そういう名目で僕らをフィルゴ帝国兵と戦わせるつもりだったみたいですから、今回の作戦が成功したのであれば、そういう企みは向こうにとって弱みになります。有能な人材を無駄死にさせるつもりかって感じで」

 自分で自分達を有能というのはこそばゆい感じもするが、いざ交渉となれば、そういう話もするつもりだ。

「そこらに関しては、私には良くわからん。お前の方が想像しやすいんじゃないか?」

「ですね。なら、マジクト国にとってはどういう意義があったと思います?」

「マジクト国か………リブクインに大きな貸しを作れたというのがあるが、政治的なあれこれも、私には良くわからん」

 その答えに関しては別に不満は無い。彼女の回答に、そこまで期待していたわけでは無いのだ。会話の流れで聞いたに過ぎないのだから。

「ただ……騎士団員としては、今回の作戦それ自体が興味深い」

「どういうことですか?」

「作戦前にも言った通り、魔法使いが前線で直接行動する様な作戦は、これまで無かったわけだ。だが、今回の作戦を見てみると、魔法使いはかなり役に立ったと言える」

 イリスと行動を共にした魔法使いはクルトだけなので、クルトのことを褒めているのかもしれない。

「魔法使いの地位向上に繋がるとか?」

「無くはないだろうが、それよりも、今回の作戦。魔法使い側に騎士団員としての能力があれば、もっと有機的に動けたと思わないか?」

「そりゃあ、まあ、そうですけど。無いものねだりですよ、それは」

 そもそも王立騎士団に魔法使いがいれば、大学の魔法使い達が支援団に参加するということも無かったかもしれない。魔法使いという労力が他から用意できなかったからこそ、大学の学生が戦争に参加することになったのだから。

「今後の話だ。騎士団員と魔法使いのペアが上手く行動できたとなれば、その両者を兼ねた戦力を用意しようという声も上がる」

「騎士団員が魔法まで習わなくちゃいけなくなるかもですねえ」

 騎士団側もやることが多くて大変だろう。

「その逆もだ。大学の魔法使いが、王立騎士団にスカウトされる。そういう事態も起こり得るということだ」

「それは……嫌だなあ」

「まったくだ」

 両者共、お互いの組織に良い印象を持っていない。正義や悪だという話では無く、資質や相性の問題なので根が深い。

 話題が途切れたためか、暫く黙ったまま歩くクルト達。現在地を確認するため、地図を確認した時、クルトはあることに気が付いた。

「………このまま進めば、ナイツが死んだ場所に辿り着きます」

 前回も今回も、サンポ大森林を短時間で抜けるための道を選んでいるため、同じ場所を通ることになる。

「どうする? 少し迂回するか?」

「………穴を掘る時間はありますか? 小さなお墓なら作れるかもしれない」

「それは魔法で?」

「そうですね。あまり長居もできないだろうし………」

 イリスは黙っている。そして頷いた。それくらいならやっても構わない。そういう許可だろう。

 森はそこに有る物を瞬く間に浸食する。暫く歩いた場所の地で、クルト達は、骨だけになった死体を一つ。地面へと埋めた。





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