魔法使いの参戦方(6)
翌朝、ハマツに残留することになった人員が発表され、また、各人員の担当も決まり、それぞれがそれぞれの仕事を行っていくことになる。
大多数は人造馬による物資の運搬に関わる物であったが、数少ない例外であるクルトはそうでなく、再びスリーアイランド港へと出発する支援団をハマツで見送る形になった。
「騎士団側のまとめ役だったワイズさんは、運搬側の管理者になるんですね。意外です」
「本人としてはこっちに残ることを希望していたのだろうが、魔法使い側のまとめ役がハマツに残るんだ。さらにもう一人というわけにはいかんさ」
ならばヘリスラー教師は先に自分の好みに合った選択肢を選べたということか。ちっとも羨ましく無いのが困った点である。
「僕らに関しては指揮権がリブクイン側に移ったわけですけど、何かありますかね?」
現状、支援団を見送った後の命令は受けていない。まさかこのハマツで待機し続けるということは無いだろう。
「さてな。そろそろ、リブクインの兵士が私を見つけて、指示を出してくるころだとは思うが」
「ヘリスラー先生をですか?」
「ああ。なにせ、なし崩し的にハマツに残った支援団の取りまとめ役となってしまったからな」
まとめ役とは、騎士団側の人員も含めてのことである。一応の決定として、騎士団側と魔法使い側がそれぞれ5人の人材を残し、互いに一人ずつ出し合ってペアを作るというまでは決定し、そのペアも決まっていた。クルトは騎士団員のイリスと行動を共にすることになるだろう。
しかし、では何をするのかと言う段階では一切話し合われておらず、未定のままだった。
「というか、僕らの行動拠点というものは無いんですか? バラバラに居たんじゃ、リブクイン側だって命令を出し難いでしょう?」
「そう言えばそうだな。昨日、リブクイン側の司令官と話し合った際にその様なことを言われた様な………」
「じゃあそこに伝令役の人が向かってるんじゃないですか!? なんでそれを忘れるかなあ」
「ああ、まて、思い出した思い出した。場所は町の中心地近くだ。案内するから、クルト、君は他のハマツ残留組を集めてくれ。できるだけ早く。伝令役が待ちぼうけているかもしれんし」
昨日の内に伝えておけば慌てる必要も無かったのにと思うクルトだったが、今は言い争っている時間も無いだろうと、クルトは他の皆を集める作業を開始することにした。
待機場所に集まったハマツ残留組は総勢10名のみである。さらに魔法使い側が戦地で能動的に動けないだろうとの懸念から、騎士団員一人が魔法使い一人に付く。つまり行動できるのは5組分のみとなる。
「ハッハッハ。気にする必要無いさ。いざとなりゃあ俺が敵兵なんてぶった切ってやる」
「は、はあ………」
クルトはその組みの一つであるケン・ニードとオチヤ・ウォーカーのペアを見ていた。
気の弱い魔法使いが、荒っぽい騎士団員に背中を叩かれている姿は、普通の場所なら可哀そうと思えなくないが、ここは戦地である。状況に尻込みする相棒を勇気づけているのだとも見られなくも無い。
「それで、リブクイン側の命令はまだなのか」
何故かそんなことをクルトに聞いて来るイリス。知っているとでも思っているのだろうか。
「さあ。この場所が僕ら支援団の待機場所であるなら、すぐに来るはずなんですけど」
そうとしか言えない。ヘリスラー教師が先程まで忘れていた場所であるので、ここが正しい場所なのか若干の不安を覚えるクルトだった。
「ううむ。確かにこの部屋が我々支援団にあてがわれた場所だった思うのだが」
不安気なヘリスラー教師を見て、さらに不安になって来る。半城塞化された町のさらに中心。リブクイン国北部方面に展開している兵士達の司令部のすぐそばに、支援団の待機場所である部屋が用意されていた。
部屋の大きさは、10人の人数が入ってもまだ広く感じる程の大きさであり、恐らく運搬の任務についた支援団達の分も兼ねた部屋なのだろう。
ここで指令を待ち、待機中は休憩し、寝食を行う。そういう役目の大広間と言えた。
「粗末とは言え寝具や食料らしきものも用意されていますよ! ここが俺達の活動拠点で間違いないんじゃないですかね」
広間内部に置かれた物資を確認していたナイツが会話に参加してくる。食料関係は支援団が持ち込んだ分がまだまだあるが、それでもリブクイン側が用意してくれるというのなら有り難い話である。
「だとすると、やっぱりこの部屋で待機するのが正解なのかなあ………」
広間にいる全員が顔を合わせる。全員が全員、それなりの覚悟でハマツに留まったのだ。このまま何も無いとなれば、肩透かしも良いところである。
今までとは種類の違った不安が皆に漂ってきた頃、漸く広間にリブクイン兵らしき人間が入って来た。
「失礼します!」
張り上げた大きな声が広間に響く。野太い男の声であり、その姿も声に見合った物であった。
全体的に角ばった印象を持つ大柄の男。上半身を肩まで覆う金属鎧を着こみながら、それを感じさせずにきびきびと動く姿は、器用さより力強さを感じる。
「我が祖国の助けとなるべくいらっしゃった支援団の方々には感謝を!」
形式上の言葉の後、一礼をするリブクイン兵。すべてが大声なので、クルトを含む支援団の面々は圧倒されるばかりだ。
「皆様方にはリブクイン北部方面軍司令官、ホユニ・チーヤより直接指示を聞いていただくことになりました!」
リブクイン兵は大声のまま話し続けた後、入って来た扉を開けたまま、扉の横に体をどける。
大柄のリブクイン兵によって隠れていたが、その背後には別の人影があった。リブクイン兵の体格とは打って変わって、細い華奢な体。まるで女性の様な、というより女性そのものだった。
まだ若く、美しいと言える外見をした女。先ほどのリブクイン兵と似通った鎧を着ているためか、酷いアンバランスさを覚えるその女性であるが、見る限りでは、リブクイン兵よりは立場が上の様だ。
「彼女がこのハマツの総指揮官だ」
ヘリスラー教師がクルトに囁いてきた。もしその言葉が無く、向こうからの紹介でそれを告げられていたら、驚きの声を上げていたことだろう。
それくらいにその女性、ホユニ・チーヤは一軍の司令官という外見からは程遠い姿をしていた。
「紹介された通り、リブクイン北部方面軍司令官ホユニ・チーヤと申します。マジクト国の皆様方には、遠い地よりこの国へ馳せ参じて頂き、感謝の言葉もありませんわ」
辞儀をするホユニ司令官。その姿を見て、クルトは少し違和感を覚える。少々下手に出過ぎであるのだ。
(勿論、わざわざ支援に来たんだから、少しくらい褒めてくれても良い物だけど、ぶっちゃけまだ僕らは何もしてないんだよね。支援を決めたのだって、マジクト国内で決まったことだし、わざわざ軍の司令官が出て頭を下げる程のことじゃあない)
その様な態度は、例えば支援団の派遣がリブクイン国側の要望であったり、支援団が何か凄い功績を作った時にするもので、現状の支援団に対してなら、形式的な礼をするだけで良いとクルトは考える。
(まあ、向こうが丁寧な人だったのならそこまでの違和感なんだけどさ)
本当に感謝をしている可能性だってあるのだ。あくまで内心に留めて置く程度の違和感である。
「これはご丁寧に。恐縮ですな。私は一応、ハマツに残留することになった支援団の代表者になるヘリスラーです。確か昨日も顔を合わせているはず」
ホユニの態度があったからだろう。ヘリスラー教師も頭を下げる。双方が再びその頭を持ち上げたところで、話の本題が始まった。
「ヘリスラー様は既にお聞きのことかと思われますが、皆様方にはわたくしの指揮下にて、フィルゴ帝国兵に対処していただくことになります。宜しいでしょうか?」
既に決定したことの再確認。無駄ではあるが必要な会話でもある。
「勿論ですとも。ただ、我々への命令がいったいどの様な物であるか。それが重要になります。なにせ我々はこの国に来たばかり。何をどう行動すれば良いかさっぱりなもので」
「それはその通りでしょう。土地感の無さは即ち欠点となりえるのが戦場の常。あなたがたを見くびるわけでは無いのですが、現在でもこの国とフィルゴ帝国との戦闘行為が行われている場所へ直接向かって貰うというのは、双方共に不安が残ることですし………」
力を見縊って貰って前線から離れられるのなら、是非とも過小評価して欲しいところである。
ただまあ、それならそれで危険な指令を与えられるのだろうが。
「実際、このハマツ方面の状勢はどうなのです? 膠着状態であるというのは既に伺っていますが、詳しい状況がわからない」
ヘリスラー教師の発言は、支援団全体の意見でもある。戦争に直接関係していない国からの訪問者であるためか、状況の詳しい内容というのがわからないままなのだ。
「お恥ずかしい話なのですが、当初の勢いはフィルゴ帝国側に分がありましたの。リブクインは完全な奇襲の形でフィルゴ帝国に攻め入られ、領土の一部を奪われる形に………」
その奇襲とやらは、本来味方になるはずのフィルゴ帝国兵に裏切られたというやつだろうか。確かにそれは奇襲になるだろうが、ざまあみろとしか思えない話ではある。
しかし、それをこの場で話しても場がややこしくなるだけなので、クルトは沈黙を続けることにする。
「しかし現状はそうでない。ということは、押し返した形になるのですかな?」
「地の利に助けられたといえるでしょう。わたくし達だけの力ではなく、女神が与えて下さった大地の恵みがリブクイン国を守っているのだと思います」
突然女神という単語が出てきて戸惑う支援団一行。クルトはリブクイン国が宗教国家であることを思い出して、それに関わる言葉なのだろうかと思考を巡らす。
ただ、ヘリスラー教師はそういう事情も知っているのか、ホユニ司令官に言葉の意味を聞かずに話を続けた。
「確か……ハマツへの道は限られているのでしたかな?」
「その通りですわ。カナワの山とサンポの木々が、フィルゴ帝国の侵攻を阻んでいますの。フィルゴ帝国は予定していた通りの進軍が叶わず、その勢いに陰りが見え始めたのです」
(そうか、別の大陸から来た軍隊だから、時間が経てば経つ程に不利になるんだ。物資なんて船で持ち込まなきゃ増えない状況なわけだし、現状が膠着状態だって言うなら、今は圧倒的にリブクイン側が有利なわけか)
既にクルトはリブクイン側が勝つだろうという予想は聞いていたので、その理由を知った形になった。
「しかしその恵みが一転、こちらの攻勢をも阻む形となりました」
進軍する道が少ないという状況が自然によるものである以上、どちらかのみに味方するというのは中々に無いだろう。フィルゴ帝国がリブクイン国を攻めあぐねいていたのと同様、今度はリブクイン側はフィルゴ帝国攻撃の一手を打てずにいる。
その結果の膠着状態だろう。
「あの、一つ宜しいですか?」
気になることがあったので、その場で挙手をするクルト。質問は後にしようかとも思ったが、リブクイン国内の状勢を詳しく知る機会はあまり無さそうなので、今聞くことにした。
「あなたもマジクト国からの?」
手を上げるクルトを見て、首を傾げるホユニ司令官。この場にいるということは、その可能性しかないと思うのだが、わざわざ聞き返すことなのだろうか。
「ええ、彼は魔法使いの一人、クルト・カーナです。質問というのは、リブクイン国かフィルゴ帝国のことかね?」
「はい。聞いたところ、フィルゴ帝国は当初の勢いを失い、その戦力を弱めている状況だということですが、でしたら何もこちらから無理矢理攻める様なことはせずに、ただ相手の疲弊を狙えば良いんじゃないかと思ったんですけど」
というか、時間を稼げば稼ぐ程にリブクイン国側が有利になるのだ。何も無理にこちらが相手を攻撃する必要は無く、支援団やリブクイン兵が危険を冒すことも無い。
「いえ、それがそうでも無いのです。少なくとも秋、いえ、夏までには戦争を決着させなければ、この戦いは長期の物になるというのが、わたくし達の予測ですの」
「ほう。というと?」
クルトの質問で始まった話であるが、ヘリスラー教師の興味をひいたらしい。
「フィルゴ帝国は、自分達の拠点に小規模ですが農場を作り、家畜も育てているという情報が入ったのですわ。フィルゴ帝国は異大陸では多くの国々へ攻め入った経験を持っているそうですから、拠点に自給用地を作ることにも慣れているのでしょう。もし、そこが完成してしまえば………」
両者共に敵を撃ち滅ぼす決定的な一撃が無い状況になる。そうこうしているうちにフィルゴ帝国が新たな増援を別大陸より送り込んでこないとも限らない。
だらこそ、リブクイン国は早急な決着を望んでいるのだろう。
「リブクイン国内にフィルゴ帝国の植民地が出来てしまう様なものですかな? いや、確かにそれは由々しき事態です」
フォース大陸に一つ小さな国ができる様な物だろうか。それはリブクイン以外の国家にとっても無視できない事かもしれない。
「現状、わたくし達の目的は、夏が過ぎるまでに如何にしてフィルゴ帝国の拠点を潰すか。という物ですの」
「ならば支援団の行動指針も、その目的に関わる物だと理解すれば良いのですな?」
ハマツのリブクイン軍の目的と支援団のハマツ残留組の目的は合致するはずだ。だからこそ、クルト達はリブクイン軍の指揮下に入ったのだ。
「大凡はその通りですわ。そして詳しい指令の内容ですけれど、サンポ大森林はご存知ですわよね? 聞けば支援団は既にそこでフィルゴ帝国兵と交戦したとか」
「その通りです。先ほど質問をさせて頂いたクルトと、その隣に立っている彼女、イリス・ウォーカーが敵国兵と交戦、撃破しました」
ヘリスラー教師が手をクルトとイリスに向ける。それに一番早く反応したのはイリスだった。
「マジクト国王立騎士団員のイリス・ウォーカーです。フィルゴ帝国兵の撃破自体は事実ですが、相手が本当に戦闘要員であったかについてはまだ不確かでしょう。私見ではフィルゴ帝国の斥候を務めている類の兵士かと思われますが」
「恐らくそれは事実ですわね。フィルゴ帝国側も、現状を打破しようと必死です。その策の一つに、サンポ大森林をどうにかして越えようという物があったとしても、おかしくありませんわ。あなた方がフィルゴ帝国兵と遭遇したことがなによりの証拠。そうしてそれに対処しなければならないという問題がわたくし達の間で浮上したばかりですの」
「つまり我々がそのままサンポ大森林の哨戒任務に付けば、リブクイン国は兵士達を割かずに済むことになると」
ヘリスラー教師は納得した様子で頷く。ホユニ司令官も同様だ。サンポ大森林内の警備と探索。それがリブクイン国から支援団ハマツ残留組に与えられた指令であった。
ホユニ司令官が支援団の広間を出た後、支援団はどの様にしてホユニ司令官より与えられた指令を実行するかについて話し合われていた。
「サンポ大森林内の地図は用意されるのでしょうか」
騎士団員の一人、ナビィ・ウォーカーが話す。まだ若い男性だが、騎士団員である以上、腕は立つ青年のはずだ。彼はヘリスラー教師と行動を共にすることになっている。
「確か、あの司令官の御付きの兵士さんが、後で必要な装備は用意するって言っていたから、その中に入っているんじゃないかしら」
ナビィの疑問に答えたのは、魔法使いのマホ。クルトより先輩の女性魔法使いだ。支援団へは自身の正義感から参加したらしく、独自の価値観を持つ女性だとクルトは聞いていた。そこが役に立つかとクルトが残留組へと推薦したのである。
「装備の確認は後でするとして、まずは森の哨戒をどうやって行うかを決めませんか? 全員で行うのか、それとも交代で行うのか。そういうことを今の内に決めておきたい」
眼鏡を掛けた騎士団員が提案する。名前は確かガイ・ウォーカー。先ほどのマホとペアを組むことになっている男性だ。
「………支援団の本体がまたハマツにやってくるまで………何もしていないという状況は避けたい………」
先程のリブクイン兵に匹敵する大柄な肉体を持つ男、騎士団員のメッズ・ウォーカーが話す。
世間話をしているところを見たことがない寡黙な男性であるが、任務の話については積極的に話すらしい。
「始めは交代で良いのでは? とにかく、僕らは僕らで森林哨戒という任務の経験が積むことが重要です」
魔法使いのケンは、まず地道に任務を行っていこうという提案をする。
「だがね、坊や。その拙い経験で、敵さんと交戦したらどうする? 経験を積む前に死んじまう可能性だってあるんだぜ?」
騎士団員のオチヤ・ウォーカーが反論する。彼らもまたペアであり、お互いの意見を飛び交わせる姿を見れば、一応、コンビとしては上手く機能しているのではとクルトは考えた。
「なあクルト、お前はどう思うんだ?」
ナイツはどうしてだかクルトに話を振る。戦場での行動指針なんて、詳しい様な人間で無いことは知っているだろうに。
「ケンとオチヤさんの話はどっちも的を射た発言だと思うよ。だから間を取って、とりあえず2組のペアが共同で一度森を哨戒して、それが終われば片方のペアが一旦休み、片方のペアがまた別のペアと組んで哨戒っていう風なのを繰り返して行けば、皆が哨戒経験ゼロのまま敵と遭遇する可能性は少なくなるんじゃないかな」
計4人が常に森林内部を探索し続けることになる。哨戒となれば、森林内には必ず誰かいるという状況を作りだす必要があるため、全員で森の中に入るという選択肢は無い、全員が同じように疲れて、同じ様に休息をとる必要がでてくるからだ。
「ならば一度目に哨戒をするペアの片方は私達がすることになるのか」
イリスはクルトを見て話す。ハマツ残留組の中で、森を探索し、敵と遭遇した経験を持つのはクルトとイリスのペアであるため、必然的にそうなる。
「なら、もう片方は私がしよう。代表者が任務の経験がまったく無いままというのは問題だからな。ナビィ殿もそれで良いかね?」
ヘリスラー教師が一度目の哨戒任務について自ら手を上げた。他の者は異論が無い様子。これで一度目の哨戒任務は、クルト、イリス、ヘリスラー教師、ナビィの四人で行うことになった。
「さて、まだ装備が来るまで時間があるな。一応、我々の立ち位置について再確認をしておこうか」
話が纏まったのを見て、ヘリスラー教師は次の話題に移った。
「立ち位置と言うと、あの女の指揮官の下に付くことになったんでしたか」
ナイツは頭を掻きながら尋ねる。どうにも自分達の状況がまだ良くわかっていないらしい。
ヘリスラー教師がこのことを話題に出したのは正解だった様だ。
「ホユニ司令官から直接指令を貰った以上、司令官直下の部隊ということになる。ホユニ司令官はハマツの事実上最高責任者であるから、他から何かを指示されることは無いだろう。司令官直下とはそういうものらしい」
顎に手を当てて答えるヘリスラー教師。彼自身、まだはっきりとハマツ残留組がリブクインでどの様に見られているか自信が無い様子だった。
「へえ。そんなに偉い人が、わざわざ私達に直接会いに来てくれたわけね。それだけ期待されているってことなのかしら」
どこか嬉しそうにマホは話すが、クルトにはそう思えなかった。
「あの、ヘリスラー先生? あのホユニ司令官って、もしかしてリブクイン国独特の………」
「ほう、君は知っているのか」
大学で同じ教室に属する生徒が、リブクインについて色々調べていた関係から、クルトはある程度リブクインの文化を知っていた。
そしてホユニ司令官は、リブクイン特有の文化が関わった立場なのでは無いかとクルトは勘繰っていたのである。
「何か知っていることがあれば話してくれませんか。ここでは、全員の知識や考えを共有しておきたい」
ズレかけた眼鏡を直しながらガイ・ウォーカーが尋ねてくる。
「ええっと、どう表現すれば良いのか難しいんですけど、リブクイン国においては、一番偉い立場に立つ人間が、一番権限を持っているとは限らないんです」
空いた時間を使い、クルトはリブクイン国の文化と風習について、他の皆へ話すことになった。




