魔法使いの盛り上げ方(5)
生徒組合宿舎にて、椅子にもたれ掛かりながらダレるクルト。まだ人造馬で街道を活性化させるというヘリスラー教室の計画は続いているのだが、どうにもやる気が起きなくなっている。
自分が行動してもしなくても結果は同じと思えば、そういう心情にもなるだろう。とにかくクルトは気が抜けていた。
「どうしたんですかクルトくん? 急にやる気が無くなっちゃったみたいですけどー」
心配そうに尋ねるルーナであるが、クルトは真面目に答える気力も無かった。
「どうせ僕が人造馬を動かさなくたって、誰も文句なんて言いに来ないから、どうでも良い感じなんだよね」
「本当にどうしたんだお前は。ヘリスラー先生と話してから途端にそうなったな」
生徒組合に居るのはクルトとルーナだけでなく、ナイツも同じくヘリスラー教師との一件からクルトに付き合っている。
ナイツ個人は計画の裏側をまだ探りたいらしく、クルトを誘って再び計画に参加しようと話しているが、肝心のクルト自身にその気が無い。
「ヘリスラー先生と何かあったんですかー?」
「ちょっと注意されただけです。あと、他人事だとか言われてましたけど。なんなんですかね? その一言でこいつのやる気は全く無くなったみたいですけど」
呆れ果てたと言う目線をこちらに向けてくるナイツ。一方でクルトはそれに動じない。その気力すら無いのだ。
「ま、魔法の言葉とかだったりするんですかねー………」
一言でクルトのやる気が無くなったと聞いて、ヘリスラー教師がクルトの精神に作用する魔法を使ったのではとルーナは想像している。
当たらずも遠からずと言った話だ。ヘリスラー教師の言葉は魔法では無いが、クルトの心理に強く影響を与えた。ヘリスラー教室の計画に対して、自分が何をやっても無駄であると強く考えさせる様になった。
「魔法の言葉でやる気が無くなるって、そんな魔法があるんですか!?」
「ううーん。どこかで聞いた覚えはあるんですけど、メジャーな魔法ではありませんよねー」
「ああ、もう! そういうのじゃないから!」
ナイツとルーナの話があらぬ方向へ進み始めたので、つい叫んでしまったクルト。
「じゃあどういうのなんだ。やる気が無くても、事情の説明くらいはするべきだと俺は思うぞ」
「……まあ、気が付いてないんなら話すべきだよね」
クルトがやる気を失った理由について、ナイツも同じ情報を知っているのだから、気が付いても良さそうな物である。しかし、どうにもそうでないらしい。
「前にヘリスラー教室の計画は戦争に関わる物だって話したでしょ?」
「ああ、人造馬は戦争用の道具で、しかもマジクト国の不況も他国の戦争が原因かもしれないって話だったか」
「そう。他国が戦争をしていて、マジクト国がその戦争について色々と画策しているって僕は考えたんだけど、肝心なことを思い付いてなかったんだよ」
「肝心なことですかー?」
ルーナが問い掛けてくるが、クルトはとりあえず溜息を吐く。もっと早く気が付くべきだったのだ。そうすれば無駄な労力を割かずに済んだのに。
「他人事ってことだよ。他国が戦争をしていたところで、マジクト国には直接関係無いんだ。なのに人造馬を用意するのはどうしてだと思う?」
現在のマジクト国に戦争が起こっていないというのは、住んでいるクルト達自身が一番良くわかっている。戦争云々の話は、恐らくリブクイン国とその隣国くらいが当事者であろう。マジクト国はリブクイン国とは国境線を隣り合っていない。
「余所で戦争をしているから、自分のところも一応の準備をしておこうって話じゃないのか?」
「それもあるんだろうけど………。もっと嫌らしい理由だよ」
「他人事ですかー。あ、つまり、余所が喧嘩をしているからそれを囃したてるみたいな感じですかねー」
「近いね。戦争状況って言うのは、フォース大陸で長らく無かったことなんだよ。どういう状況や結果になるかわからない。かと言って、マジクト国が直接危害を被ることは無いだろう。そんな考えから、多分、マジクト国は余所の国にちょっかいをかけるつもりなんだ」
例えばあの人造馬。一応、国内で様々な状況に対するデータを取っているのだろうが、それもまだ計画の始まりに過ぎないはずだ。最終的には、リブクインで起こっているかもしれない戦争に投入して、そこで正式に実験なりなんなりをする予定だろう。
「わかるかな? 戦争に危機感を覚えたからでも、漁夫の利を得ようとしているのでもない。もっと、こう、他人の不幸を見て笑うような感覚で計画は行われているってこと。貴重な事件だから何かしておこう。でも別に失敗しても良いや。今回の計画は、まさにマジクト国にとって他人事なんだ」
そのことに気付ける機会ならいくらでもあった。他国の状況と、マジクト国やヘリスラー教室の姿勢は事前に分かっていたのだ。それをヘリスラー教室の一言で気付かされた。
「例えば、僕らが計画を邪魔したとするでしょ? 当然、権力者に立てつく様な行動をした僕らは邪険に扱われる。もしかしたら命を狙われるかもしれない。けど、それだけなんだ」
「それだけってのはなんだ。大事じゃないか」
自分の命は大切な物だと話すナイツ。それはまあそうなのだが。
「マジクト国にとっては、どうでも良いことだよ。魔法大学に入って1年と少しの生徒二人の命なんて。国家の体制に大きく影響することもない。そして、僕らが今回の計画を実際に邪魔できたとしても同じ」
計画そのものが、危険回避のためや利益を得ると言った物を主体にしていないのだ。運が良ければそれらを達成できるかも程度の考えに過ぎない。クルト達が計画を察知し、それを駄目にしたところで、国家側に被害は無い。
「僕らが何をしたって無駄なことを思い知ったんだよ………。やる気だって無くなるでしょ? 命を賭けても意味が無いのなら、それは馬鹿のすることだ」
だからクルトはヘリスラー教師の一言で気が抜けてしまったのだ。自分がいくら気を張ったところで、何ら影響の無いことを知ってしまったから。
「うーん。確かに自分の命は大切ですしねー。仕様が無いと言えばそうなんでしょうかー………」
何故か残念そうな表情をするルーナ。彼女こそ、本当に他人の立場であったはずなのだが。
「だからなんなんだよ」
「うん?」
クルトはナイツの顔を見る。さっきから常にしかめっ面であるが、どうにもそれがさらに深くなっている。
「無駄だからなんだってんだよ! マジクト国が余所の国の不幸を笑ってるんなら、それは駄目なこうだろう?」
「あのね。だとしても僕らには関係無いし、何したってどうしようも無いことなんだよ?」
「いいや、違うね。悪い事には悪いと言うべきだし、言って聞かない相手なら、どんな手を使っても止めさせるべきだ。クルト、何か考えろ」
「何かって………」
クルトは友人を見て今更ながら思う。こいつは馬鹿なんじゃあないかと。
「何かは何かだ。残念ながら、俺はそういうことに知恵が回らないのは自分でも知ってる。お前の方がよっぽどそういう才能に恵まれていることもな。だから考えるのはお前に任せる。俺は手足にでもなんでもなってやるよ」
「だーかーらー。何も思いつかないからやる気が無いんじゃないか! それを何か考えろって、自分の言ってることわかってる?」
「ああ! わかってるさ! だけどな、クルト。俺は小理屈で先のことを見据えて、無理だ無駄だの考える頭は、当の昔に実家へ置いてきたんだ。マジクト国の、この魔法大学に入ったのは、できないことをできる様にするためだ。ここに来て、腹の立つことだけど無駄だから諦めようなんて、納得できると思うのか?」
なんという身勝手だろう。馬鹿なんじゃあないかと疑っていたが、こいつは正真正銘の阿呆である。
「どんなに言っても、僕にだって限界があるんだよ。そりゃあそっちからしたら少し頭が回るかもしれないよ? だけど、それだけだ。誰よりも優れているわけじゃあ―――」
「本当にそうでしょうかー」
クルトとナイツの口論を静観していたルーナが、突然に割り込んでくる。
「本当にって何が」
ルーナの言葉の意図が読めずに困惑するクルト。
「クルトくんが、本当にこの状況で何もできないのかってことですよー。自分の限界だーなんて話す人って、実は本気を出してないことが殆どなんですよねー」
「本気じゃないわけないよ。こうやって色々考えて、どれも意味の無いことだから、どうしようも無くなってるんだからさ。自分で考えて何も解決策が浮かばなければ、それが限界ってことなんじゃないの?」
別にクルトは手を抜いているわけではない。むしろ何もできずにいる自分に苛立ちさえするが、だからと言って良い案が思い浮かぶわけでもない。
「本当に何も考えられないんですかー? 自分の能力だけじゃなく、他人の力を借りたって別に良いんですよー? 色んな状況を考えて、目の前の物事に挑める才能がクルトくんにはあると思うんです」
「何を根拠にそんなことを………」
「だってこの前に遺跡へ行った時は、自分の命が掛かってる状況なのに、わたしなんかじゃあ思いつかない様なことを考えていたじゃないですかー」
ルーナが言っているのは、以前に古代遺跡へ二人で出かけた時、襲撃者に遭遇した時のことを言っているのだろう。
その襲撃者を倒したのはクルトでは無かったが、倒す過程において、いかに効率良く敵を倒すのか。そういうことを考えたのはクルトだった。
「もう一度聞きますけどー。本当に何も良い案が浮かびませんかー? これっぽっちもー?」
「…………」
ルーナに言われて考え込むクルト。人造馬に関わる計画について、クルトが手を出せることは本当に何も無いのか。
ヘリスラー教師の警告。戦争に関わる計画。人造馬の存在。ヘリスラー教室から計画参加への勧誘。深く考えるうち、思考を遡っていく。
過程で幾つかの案が浮かび、現実と照らし合わせてそれらを没にするという作業を行い続ける。その中で最後まで消えない物があるのなら、それは可能だと言うこと。
「……もしかしたら」
「何か良い案が浮かんだのか! ヘリスラー教室の計画を台無しにする様な!」
クルトが口を開いたのを見て、飛び掛からんばかりにナイツはクルトへ迫ってくる。
「ちょ、ちょっと待って。もしかしたらの話だからね? 本当にできるかどうかもわからないし、労力が必要だ」
「労力と言うのは、人手が必要ってことですかー?」
「うん。何人かの協力者が必要なんだ。それに準備も」
それらが必要であったから、クルトは自分の考えた策に自信を持てなかった。用意できるのかどうかが怪しいからだ。
「俺はさっき力を貸すって言ったよな」
「わたしも手伝ってあげても良いんですよー。なんか面白そうですしー。あ、でも計画を邪魔したら危険かもしれないんですよねー。どうしましょうかー」
身の危険があれば参加を迷うのは普通である。その迷いを隠さず話すルーナ。
「いや、この件に関して危険は無いと思う。あったとしても考えた僕くらいだろうね。でも、二人から力を貸して貰っても、まだ人手が必要と言うか」
安全性の面は、策を考えるうえにおいて一番の条件にしている。命の危険は恐らく無いだろう。一方で協力者がいるという前提の策であった。
「とりあえず必要な物や人がいるのなら、ここで全部話せよ。それに関しては俺がなんとかしてやる。とりあえずお前は諦めず頭を動かしてくれ」
「あはは。なんだかできる様な気がして来たよ。だけど一つだけまず聞いてほしいことがあるんだ」
重要なことである。一見、ナイツの望みに反しているかの様な話があるのだ。
「なんだ?」
「僕が考えているのは、何も計画を台無しにする様な物じゃあ無いんだ。むしろ、計画を積極的に成功させる物なんだよ」
クルトはナイツとルーナに、自分の作戦を話し始めた。
その日、ヘックス教室所属の生徒シーリアが同じ教室の同級生であるナイツに呼び出されたのは、最近噂になっている人造馬という装置を整備する広場でのことだった。
「頼む! 君の力を貸してくれ!」
拝み倒す様に頭を下げるナイツに、困惑するシーリア。良く話す友人程度には仲の良い相手であるが、この様に頼まれるのは始めてのことである。
「いきなりどうしたの? この場所とも何か関係があるのかしら?」
おどおどと周囲を見渡すシーリア。何台かの馬車が止まるその広場は、ある程度人通りがあり、この様に同級生に頭を下げられているところを見られるのは、かなり恥ずかしい。
「ああ。そうなんだ。人造馬に関わることでさ。ヘリスラー教室が行っている計画については知っているかい?」
「ええ。アシュル街道をあのゴーレムを使って活性化させるのだったかしら。どうにも上手く行ってないとは聞くけれど………。もしかしてそのこと?」
シーリアはヘリスラー教室のアシュル街道活性化計画には参加していない。配られたチラシを一目見て怪しい話だと感じたし、自分の魔法研究とも無関係だったからだ。
シーリアの魔法研究は魔力を如何に制御するのかと言う観点を中心にした物であり、計画とはあまり関係ない。一方でゴーレムについての研究をしているナイツが計画に参加しているのは、人造馬という存在を知っているので理解できる。
「もう知っているのなら話は早い。人造馬が故障続きなのも知っているだろう?」
「うん。当初の予定通りにいかない理由は、ヘリスラー教室の発明品が欠陥だからけだからって、もう大学中で噂になっているもの」
専門外なので、人造馬がどの様な構造で、どれ程の性能があるのかはわからないものの、噂通りにならまったくの役立たずであろうとシーリアは考えていた。
普通の馬と同じだけの力で、普通の馬より乗り手を選び、普通の馬より良く不調を訴える。馬を魔法で再現した物だというだけなら面白い話かもしれないが、実用度の観点で見れば、とてもでは無いが評価できない。
「その噂通り、このままじゃあ街道の活性化なんて夢のまた夢の状況でね。どうしたものかと仲間内で考えていたんだが、人造馬を改良しようって話になった」
「改良? そんなことを勝手にしても良いの?」
「俺なんか修理自体を任されているんだぞ? ある程度手を入れるくらい大丈夫だって。けど、そのためには何人か協力者が必要でさ」
大丈夫そうにナイツは話すが、本当にそうだろうかと疑うシーリア。人造馬はヘリスラー教室の研究成果だろうから、それを他教室の生徒が手を出すのはまずい気がする。
「その、改良をするために集めている協力者は、今何人くらい集まっているの?」
数が多ければ大丈夫という保証も無いだろうが、ナイツの頼みを聞く前に、とりあえず彼に賛同する者の人数を知りたい。
「俺がこうやって頼み込んで参加を決めてくれたのは1人だけだよ。クルトは知っているだろ? 実を言えば、人造馬を改良しようって言い出したのはあいつなんだ。俺はただ、ヘリスラー教室の計画について、色々と不満を持ってただけでさ………」
ナイツの話に出てきたクルトと言う生徒を思い出す。同じく同級生である彼だが、教室が違うので接点はそれ程無い。
以前に自分の相談ごとに乗ってくれたことがあるので、その時は随分と感謝したのを覚えている。今、自分が扱っている魔法研究があるのも、彼のおかげかもしれない。
ただ、それ以後に会う機会はあまりなかった。人の噂で聞く程度である。曰く、自分達の世代では一番の変人である。あの師にしてあの生徒あり。魔法使いでなくもっと違う何かが向いているあいつ。口と行動が達者などなど。どれも面白い噂だ。
「そうなの……彼が」
「不安かもしれないが、あいつが頭を動かして企むことのだいたいは、成功率が高いというか、信頼できるんだよ。あいつもあいつで人を集めている。最終的に何人集まるかわからないが、とにかく街道の活性化に貢献しようと動き回っていてな。特に君の力が必要だとクルト自身が話すんだ」
自分の力と言われてシーリアが思い付くのは、自分の魔力についてのことだ。
人よりも多い魔力を放出できるシーリアは、その才能を周囲から評価されている。個人的にはその力だけで認められるのは不快ではある。正真正銘才能によるもので、努力によって得た物では無いのだ。
ただ、それが本当に必要であり、頼られるというのは悪く無い気分ではある。
「うーん。どうしようかしら。人造馬の改良と言うけれど、一朝一夕に行く物では無いのよね?」
「最低でも3日は掛かりそうだな。それも実は君が手伝ってくれる前提の話で、そうでなければもっと時間は掛かるかもしれない」
「それ以上の期間が経てば、計画そのものが終わりそうだけれど………」
「そうなんだよ。本当に困っていて、クルトの奴も君が手伝ってくれないのなら、改良の話も無しだと話していたな」
「へえ………」
学内の変わり者である存在から、それなりに頼られるというのは不思議な感覚である。相手が何を考えているのかは分からないのに、肝心の相手は自分を認めているのだ。いったいどういう目的だろうか。
「うん。良いわ。手伝って上げる。当然、3日間だけの約束よ?」
クルトが何を求めているのかを知るのは面白いことかもしれない。短い期間という条件であれば、別に手伝っても構わないとシーリアは考えた。
「本当か! ああ、必ず約束は守る! できればこれから生徒組合に向かって、そこにいるルーナって人にその話を伝えてくれないか? 俺も一緒に行きたいけれど………」
「協力者集めを続けるつもりなんでしょう? わかってる」
ナイツは見るからに必死であった。友人のこの様な姿を見るのは、これが初めてかもしれない。
手伝って上げたいと思った。力を貸す理由は、もしかしたらそれだけで良かったのかもしれない。シーリアは約束通り生徒組合に向かった。
「あんなので良かったんだろうか………」
生徒組合に向かうシーリアの後ろ姿を見て、呟くナイツ。彼には罪悪感があった。彼女に伝えるべき情報を伝えなかったからだ。
「俺がヘリスラー教室の計画を成功させたいと思っていると、彼女は勘違いしただろうに」
ナイツの心情としては、戦争に関わる計画なんて潰したいというのが本音だ。だというのに、クルトはむしろ計画を成功させると話していた。シーリアに伝えた情報も、クルトがそういう風に伝える様にと頼んできた結果だ。
「一応、それがいったい何を意味しているのかについては説明してくれたが、どうにもなあ」
クルトの考えた策通りなら、確かに計画全体へ影響を与える様なことができるかもしれない。しかしその全容を知るのは、発案者のクルトを除けばナイツとルーナだけに限らせるという話だった。
「安全策は取ってあるとは言え、もしかしたら国に楯突く様な行為だから、協力者側とはある程度無関係を装って危害が及ばない様にしたい……だったか」
確かに戦争が関わる計画となれば、裏で糸を引いているのはそれなりの権力者だろう。万が一にでも目をつけられたらまずい。だから協力を頼む相手にも、知らせる情報は限らせるというのはわかる。わかるのだが。
「なんだか嘘を吐いている気分になる。いや、話す内容に嘘は無いんだが、どうにもなあ」
まるで人の行動を操る様な行為に思えて、ナイツは心中に引っ掛かりを覚える。発案者であるクルト自身はどうなのだろうか。何か頭を動かす度に、妙な罪悪感を覚えているのか、それとも何も感じていないのか。
「まあ、あいつにヘリスラー教室の計画をどうにかするよう頼んだのは俺だ。あいつの言うことには従うさ」
疑念や不安は当然ある。本当に成功するかどうかもわからない。だが、もし何もかもがハッタリで何ら成果を上げられなくても、それはそれで構わない。クルトを責めたりはしないとナイツは心に決めていた。
「相手が何でもできるから頼るってんじゃなくて、こいつなら別に騙されても良いやって思えることが信頼だからな」
今回に限っては、ナイツはクルトを信頼していた。大学に入ってからはそれなりの付き合いだ。そう思えなくて何が友人だろうか。
ナイツは気分を新たにし、協力者の勧誘を再開する。見返りを用意できるもので無いため、そう何人も集まることは無いだろうが、それでも多い方が良いと考えていた。




