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魔法使いの歩き方  作者: きーち
魔法使いの盛り上げ方
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魔法使いの盛り上げ方(4)

「戦争!? あれか、弓や剣や槍でこう、血を流すアレ」

「そうだよ。人が大勢集まって言うに事欠いて死体を作るとか言うアレ」

 生徒組合宿舎にて、耳慣れぬ言葉について話し合うクルト達。アシュル街道活性化計画の裏にあるという別の計画が、戦争に関する物だということをクルトは話したのだが、言った本人にも実感の無い言葉だった。

「フォース大陸には長らくそういう戦争という物が起こってませんからねー。いざヘリスラー教室が戦争を企んでるなんて言われても、ピンと来ませんよー」

 ルーナの言葉はこの場にいる全員共通の考えだろう。しかし、クルトはこれまでの出来事からやはり計画が戦争と大きく関係していると考えていた。

「なんて言えば良いのかな。とりあえずヘリスラー教室が企んでるわけじゃあないよ。戦争なんて大事、もっと上、貴族とか王族が考えそうなことじゃない? 誰かは特定できないけど、黒幕なんてのがいるとしたらそのあたりだと思う」

 ヘリスラー教室はその黒幕が考えた計画に乗った形になるのだろう。国家の軍事力として魔法を活かそうというのがヘリスラー教室の行っている主な魔法研究であるため、権力者の、さらに戦争を望む様な相手との繋がりはいくらでもあるだろう。

「だからそもそも、なんで戦争なんだ。突拍子も無い発想でわけがわからないんだが」

 信じられないと言った様子のナイツであるが、クルトに意見を聞くあたり、万が一というのは考えているのかもしれない。

「発想の出発点は人造馬の存在かな。あれさ、どういう場面に使えると思う?」

「どういう場面って、ああも故障が頻発するゴーレム。何の役にも立たなさそう……いや、故障はヘリスラー教室が仕組んでいる可能性があるのか」

 考え込むナイツ。しかしなかなか答えを見つけ出せない様子。

「普通のお馬さんが役に立たない場所じゃないですかー? 名前の通り、馬の代わりとして人造馬が存在しているんですよねー?」

「ルーナさんが正解。あの人造馬はね、普通の馬が怯えたり、そもそも馬を運用できない様な状況でも、運搬作業の労力として使えるよう作り出された物なんだよ。魔法使い一人の魔力があれば、馬一頭分の労力にはなる。馬が使えない状況であるなら、代わりとしては丁度良い存在だと思えない?」

 人造馬の存在は、平時であれば既に存在している馬よりも劣るのであるが、馬という家畜の存在を抜いて考えると、かなり使える魔法道具であると言える。

「確かに。馬車なんかだと普通の馬と取り換えて使えるくらいには互換性がある設計だが、でもそれだけじゃあ戦争とは結びつかないんじゃないか?」

「いいかい? 僕も戦場がどういう場所かなんて詳しくないし知らないけど、とにかく血の気が多くて馬は興奮するし、大人数が仕事もせずに殺し合うんだから、とにもかくにも食料がいる。馬の食料まで用意できない場所だってことだよ? もし馬の代用品になる物があって、しかも怯えないし食料も用意しなくても良いとなれば、なんとしても開発したくなるんじゃないかな」

 この考えは人造馬がどうやれば役立つ存在となるかと考えた結果、逆説的に導き出した物であった。突発的な考えだったのであるが、どうにも当たっている様にクルトは思えた。

「ですけどー。戦争に役立ちそうだからって、戦争の道具って言うのは無茶に思えますよー?」

 比較的冷静なルーナがクルトの予想を否定しようとする。人造馬の存在だけでは、戦争が関わってくるとは思えない。そう言う考えはクルトにもある。

「うん。だから考え違いなんじゃないかとも思ったんだけど、どうにも今までの展開を見ると、そうにしか思えなくなってくるんだよね」

「例えば?」

 ナイツが尋ねてくる。今のところ彼も戦争云々に関しては懐疑的だ。一人で悩むのは馬鹿らしいので、クルトは早めに理解して貰える様に努力する。

「まず人造馬の機能だね。パーツ毎にすぐ交換して動かせるって言うのは、故障をすることを前提としている様に思える。壊れてもその部分をすぐに取り換えられるって言うのは、戦場での道具には最適だと思えない?」

「戦場の道具じゃなくても、そういう有用性っていうのは活かせるんじゃないか?」

 確かに壊れても一代丸ごと交換しなくても良い道具は、便利と言えば便利であろう。戦場に限ったものでもあるまい。

「なら、そもそも今回の不景気の原因はどうだろう」

「アシュルの街が主要商業路にしている海路の一つが駄目になったのが原因だろう?」

「なんで海路の一つが使えなくなったのさ。リブクイン国が他国との交易を禁止し始めたからって前に予測していたけど、じゃあどうしてリブクイン国はそんなことをしたの?」

「あー! リブクイン! あの国が魔法資料を出し渋っているせいで、わたしの魔法研究が中々進まないんですよう」

 ルーナの愚痴はとりあえず無視をすることにして、話を続けるクルト。

「この前、隣国のカガに行ったんだけど、そこはマジクトよりもリブクインに近いから、その国の噂も良く伝わってたよ。なんでもリブクインは戦争の準備をしているってね」

 単なる噂だと思っていたクルトだが、マジクト国まで不景気と言う影響が出始めている以上、やはりリブクインに何かが起こっているのだと考えるのは不自然では無い。

「そりゃ確かに怪しいが、マジクト国とは関係の無い話かもしれない」

「じゃあ、ヘリスラー教室がわざと人造馬を故障させているのはどう考える?」

「それこそ戦争なんて関係ないだろう。わざわざ故障させて信用を損なう様なことをするとは思えない」

「人造馬単体だけを考えればそうだけど、人造馬を運用していく上ではむしろ重要なことなんだよ。故障した時、御者側や修理側はどう対応するのか。それが続けばどういう状況になるか。問題が出れば出る程、緊急時への訓練になる。そう、戦場で人造馬を運用するための訓練こそが、計画の目的だと僕は考えたんだ」

 御者は人造馬の不調に対して、なんとか自分達で解決しようとする。現場での対処能力を磨いているのだ。修理をする魔法使い達は、いかに素早く効果的に修理をしていくか、実践で学んで行く。

 故障の頻発とは戦時という状況の模倣だ。どんな万全な道具でも、荒い使われ方や十分な調整が行われなければすぐに壊れる。戦場はそういう状況が起こりやすい。とクルトは予想する。

「仕事をしなくても良いから計画に参加する様にヘリスラー教室が強制したのも、戦時という状況を再現するために、多くの人間が計画に参加してくれないと困るからだ。一方で参加しているという状況さえ作り出せれば、仕事の士気が下がったり、サボったりするのも許容できる。どうしてかと言えば―――」

「士気の低下も、戦場を再現するのに必要不可欠だからですねー。明確な利益も無く人を動かそうとすれば、暴動に発展する可能性がある。そういうデータも貴重と言えば貴重かもしれませんしー」

 ルーナの話す通りだ。計画の範囲内で言えば、むしろ参加者一人一人が自身の欲求通りに行動してくれる方が良いのである。それだけ、有事の際に人がどう行動するのかがわかるのだから。

「だったらあの時、大学長が止めに入ったのもそれが理由?」

「調停者がいれば場もある程度は治まる。そういうデータが取れたわけだ。もし本当に暴動に発展すれば計画がおじゃんになるからそれもあるんだろうさ。少なくとも、大学長は計画がどういうものかを理解して行動してるね。首謀者の一人と言えるかも」

 まああの腹黒い大学長のことだ。まったくの関わりが無いということだけは有り得ない。

「そ、そう言えばヘリスラー教室の生徒が、必死に広場の状況をメモってたのを見た」

「それだよナイツ。データを取ってたんだ。人造馬を取り巻く人間がどう行動するのかを。顔は覚えてる? 少なくとも計画の一旦は知っているはずだ。揺さぶれば情報を聞き出せるかも」

「ああ。確か名前はロイとかライとか言った名前だ。顔を見ればわかる」

 これまでの話で、ナイツは今回の計画に戦争が関わっているかもしれないと信じる様になったらしい。クルトと共に情報を集める気でいる。

「あのー。クルトくんの話はわかりましたけど。結局、二人はどうしたいんですかー?」

 今のところ部外者であるルーナは、クルトとナイツの二人からは距離を置いた立場で話す。

「そりゃあ、戦争なんて荒っぽい計画なんて気に入らないし、なにがしかの邪魔をしてやろうって思ってるんだけど………」

 クルトは血生臭いことは嫌いである。そういう状況を呼び込もうとしているかもしれない計画は、あまり好きではない。

「俺は……まだわからないです。戦争っていうのもまだピンと来ていませんし。まあ、こいつと一緒に情報集めをしていれば何がしかの意見は持てるかなと」

 答える二人を見て、少し首を傾げるルーナ。

「何か言いたいことでもあるの?」

「いいええ。あ、そうですね、頑張ってくださーい。わたしも、戦争とかそういう荒々しい言葉って嫌いですからー」

「う、うん」

 クルトはルーナの様子に戸惑いながらも行動を開始した。まだ疲労感の残る体であるが、それでも意欲が勝る状態であったのだ。

 そんなクルトを見てルーナは考える。

(本当は言いたい事があるんですけどー、本人達がやる気なら、口を出すのは野暮ですよねー………)

 ルーナが言いたい事。それは戦争に関わる計画が事実存在するのなら、それを調べる行為は危険なのではないかという忠告だったのだが、彼女は黙ることを選んだ。


 クルト達が生徒組合から人造馬の整備が行われている広場まで向かう道で、幸運なことに探し相手であったヘリスラー教室の生徒を見つけた。

 丁度ヘリスラー教室から広場に向かう道でもあったので、出会う可能性は零では無かっただろう。

 生徒の名前はレイ・クロスト。貴族の家の次男であり、クルト達にとっては1年上の先輩でもあるそうだ。

「ああ、いや、俺はただ広場の様子をできるだけ詳細に書き留めておくよう先生に言われただけでさ」

 そんな相手が怯えながらクルト達に自分のことを話す。顔を見合わせて戸惑うのはクルト達の方だった。

 別にクルト達は彼を脅した訳でも無く、広場でいったい何を書いていたのかと聞いただけなのだ。だと言うのに彼は尋問された後の様にべらべらと話してくれる。

(昨日の騒ぎはヘリスラー教室の生徒にも結構な衝撃だったってことかな。もしくはこの人が計画にそれ程深く関係していない)

 クルトはレイの様子を幾つか推測し、恐らくはそれ全部だろうと当たりをつけた。

「先生ってのはヘリスラー教室のことを言っているんですか? なんでそんなことをするのかの理由はについては聞いていません?」

 一応、ナイツは相手が先輩であることがわかったためか、それ相応の話し方をしているものの、内心ではレイのことを下っ端だと考えているに違いない。つまり早く聞き出せる情報を聞き出して、次の相手を見つけようと言うのだろう。

(まあ、このライって人があんまり計画に関わっていなさそうって言うのは同意だけど、だからって有益な情報を持っていないとは限らないよね)

 少なくともヘリスラー教師との関わりはあるのだ。クルト達が知らない情報で、しかも重要な物を知っているかもしれない。しかも相手はこちらが何もしなくても、口を開いてくれる状況にある。好機と言えば好機だ。

「ヘリスラー教師はなんでそんなこと頼んだんですかね。いえ、知らないって言うのは知ってますよ? ヘリスラー教室の生徒は教師からの命令に絶対で、自分の意思を押し殺すことが多いというのは知ってますから」

 若干の嫌味を混ぜてクルトは尋ねる。勿論、挑発が目的だ。

「む。そういう言い方は良くない。個人では難しい魔法研究を集団で行うというのは当然だし、集団で行う以上、指揮する人間が必要だ。それがヘリスラー教師であるのは教室という集団では当たり前だろう?」

 若干、目筋を歪めて話すライ。乗って来た。そう考えるクルト。

「それはまあそうでしょうけど。その命令にどうして従わないといけないのか。理由を知らないっていうのは、外から見れば変に思えますよ」

「痛い所を突くなあ。そりゃあね、うちの教室は生徒数も多いし、その中で立場の上下もできてしまう」

 自分はその下の方の立場だと話すライ。そのことは知っている。聞き出したいのは、上に位置する人間は誰かと言うことだ。

「カップスさんなんかは計画の中心って感じでしたよね。やっぱり教室内での地位も高い?」

 とりあえず知っている生徒の名前を上げるクルト。話をとめどなく続けることで、相手が深く考える機会を少なくする。

「彼は教師内の顔役みたいな地位に何時の間にかなっているなあ。ヘリスラー教師に直接会う機会が多い様だし………。ヘリスラー教師に会うと言えば、人造馬の修理を担当している生徒は、かなり前からその訓練を直接受けていたね。羨ましい」

 最後には嫉妬の言葉を漏らすライの話だったが、欲しい情報を得ることはできた。

 クルトはナイツに視線を向ける。話をここで切り上げようと言う合図だ。ナイツもそれを察知し、口を開いた。

「計画について詳しく聞くには、ヘリスラー教師に直接聞いた方が早いってことですか」

「ま、まあそうなるが、先生はいつも忙しいから、難しいんじゃないかなあ」

「一応、会う努力はするつもりです。時間を取らせたみたいで、すみません。ありがとうございました。いくぞクルト」

 ナイツは素早く歩き出し、クルトもその背中を追う。目的地があるわけではないが、とりあえず誰かに見られず話し合える場所に向かうつもりだった。


「で、どうする? 本当にヘリスラー教師に会うか?」

 魔法大学の校舎は広く、実は使われていないのではないだろうかと思える教室も幾つかある。それらの部屋は生徒のサボり場に使われることが多々あり、クルト達もそういう場所を知っていた。

 今、ナイツとクルトはがいるのはそういう部屋である。監視の無さそうな場所と考えて、思い付いたのがここしか無かった。

「まさかだよ。いきなりそんな目に見えた黒幕に飛びつくのなんてまだ早い。さっき聞き出した話によると、比較的ヘリスラー教師に近い生徒っていうのが何人かいるみたいだし、まずそっちから当たろう」

「確かカップスって人だったか?」

「その人もだけど、人造馬の修理担当をしている生徒も怪しい」

「そう言えばわざと人造馬を故障させてるんだったか。ヘリスラー教師から直接訓練も受けているらしいから、もしかしたら計画がどういうものかを知っているのかもしれないな」

 話を聞くべき相手はいくらでもいる。今回の計画はそれなりに規模の大きい物であり、それだけ隙が存在するのだろう。

「それじゃあ手分けして聞き込みを続けるということで良いかな?」

「ああ、何か分かればまたここで落ち合お―――」

「二人別々に行動されると、監視もやり辛いから止めて欲しいがね」

「は?」

 クルトとナイツは空き教室の入り口を見る。そこから二人以外の声が聞こえたからだ。

 そこには一人の男が立っている。顔は知っていたが、こうやって話すのは初めてかもしれない。自分達が参加している計画の、一応の立案者となっている人物。ヘリスラー教師その人だと言うのに。

「な、なんであなたがこんな場所に?」

 予想もしていない人物の登場に戸惑うクルト。壮年の教師はそんなクルトをしげしげと見る。

「そう言われてもな。ここに来たのは君達だろう。私はそれを追って来たに過ぎないわけだが」

「だからどうして追ってきたのかを聞きたいのですが。あとどうやって気付かれずに尾行を?」

 身構えたナイツが尋ねる。警戒したところでどうなるものでも無いだろうけれど。

「魔法に練達すれば、本人の魔力を見極め、それを追尾することが可能となる」

「本当ですか!?」

 驚くクルト。自分の魔力ですらはっきりと感じとることが困難な彼からしてみれば、ヘリスラー教師の言うことは現実離れした話である。

「まあ、嘘だ。そんなことができる奴は見たことが無い」

「なんですかそれは………」

 拍子抜けをするクルト達。魔法大学の教師ならそれも可能かもしれないと疑った自分達が馬鹿みたいではないか。

「長く生きていれば君らの知らんやりようがいくらでもあると言うことだ。聞いたってわかるまい。それと、私が君達に接触したのは警告のためだ」

「警告? 一体なんのことでしょうか」

 とぼけるナイツであるが、恐らくヘリスラー教師には通じまい。こちらの事情を知った上で教師は話している。

「うちの教室の計画について、色々と疑いを持っているのだろう? まさか私がアシュル街道を活性化させたいなどと本気で考えているとは、思ってはいるまい」

「だとしたらどうなのです? あなたにとやかく言われる筋合いは―――」

「あるさ。当たり前だろう」

 ナイツのはったりもヘリスラー教師はどこ吹く風と言った様子で流す。年の功に勝てぬのが若者の常だ。勿論、クルトも相手を探ろうとする。

「計画がもっと別の、そう、血生臭いことに関わっているというのは知っています。あなたはそれに関わっているんですか? 僕らはそれに邪魔になるからなんとか対処しようと?」

「自分を買い被り過ぎだな。君らの動きに気が付いているのは今のところ私くらいだろうし、別に君らがこれまで何かをした訳でもあるまい? 私だって、そこのナイツ君がうちの教室を通さずに他の生徒から人造馬の故障状況を調べていると聞いて、注視していたに過ぎん」

 そして目を向けているうちに、怪しげな行動を始めたから警告に来たと言うことだろうか。

「まるで親切心みたいな言い方に聞こえますが」

「まさしくその通りだ。これ以上踏み込めば、何がしかの理由で君らに危害が加えられる可能性がある。無論、私がするのではないぞ? 私の手の届かないところでそうなるから警告をしているのだ」

 やはり今回の計画は大事だったらしい。計画の裏を知っただけで命の危険があるくらいに。

「私は腐ってもこの大学の教師でね。生徒が危険な行為をしようとしているのなら、止めなければならない立場にいる。君らがまさにそれだよ。自分の立っている場所がいかに危険かも知らないで、さらに前に進もうとしている。その先にあるのが谷底とも知らないで」

「なら先生は道に明かりでも付けてくれるんですか? そうでないと引き返した先が安全かどうかもわからない」

 なんとか相手から情報を引き出そうとするクルト。相手が相手だけに、乗ってくるかどうかははなはだ怪しいが。

「私の例えに揚げ足を取ったって始まらんさ。だが、一言だけ伝えて置けば、君らは引き返してくれるかもしれんな」

「一言?」

「“他人事だ”ということだよ。私にとっての君らもそうだが、それ以前に計画そのものがそうだ。それでも深入りするか?」

「あ………」

 文字通り、ヘリスラー教師の一言で何もかもを理解したクルト。そうして彼の思惑通り、計画を探る意欲が削がれていく。

 クルトが想像した通りであるならば、クルトが計画の裏を探ったところで、それはまさしく他人事であり、関わり合いに成りたくもない話になる。

「おい、クルト。どういうことだ。さっぱりなんだが」

 ナイツはまだ理解していない様子である。ヘリスラー教師の言葉がどういう意味を持っているのかを。

「さて、一応これで私は自分の義務を果たしたことになる。この後、君らがどの様な選択をするのかについても、まさに他人事だな。まあ、好きにすることだ」

 そう言い残してヘリスラー教師は教室を去った。残されたクルト達は互いに目を向ける。

「で、どうするんだクルト。本当にヘリスラー先生の言う通りに、計画を探るのを止めるってのは無いだろう?」

 ナイツはまだやる気だった。なんだかんだで正義感が強い彼は、計画に裏があると知って、それを暴くことに義憤を燃やしている。だが、クルトはと言えばすっかり気が抜けていた。

「止めよう。どうせ数日で終わる計画だ。命を賭ける価値とかも……多分ない」

「は? ちょっと、おい」

 ナイツの戸惑いを余所に、クルトは肩を落とす。どうにも今までのすべてが徒労に終わった気分だった。



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