魔法使いの盛り上げ方(1)
景気と言うものがある。社会全体を包む雰囲気の様な物で、良い時もあれば悪い時もあり、またそのどちらでも無い中途半端な状態もある、あやふやな物であった。
良いのか悪いのかそうでないのか。それを判断するのは個人毎の考え方にも寄るのだろうが、魔法使いのクルトから見れば、現在のマジクト国は景気の悪い状況だと言える。
「どうにも国中に元気が無いというか、最近、空気が悪く無い?」
魔法大学があるアシュルの街で、クルトは友人のナイツと並び歩いていた。話し掛ける相手もナイツである。
「そうだなあ。お前の言いたいことが、今回の仕事の報酬が少ないことに対する愚痴じゃあないんだとしたら、確かに景気は悪いんだろうな」
ナイツは手に持った小さな袋を見ながら話す。片手で持てる程度のその袋の中には幾らかの硬貨が入っている。クルト達は魔法大学から紹介された仕事を行ってきたばかりであり、硬貨はその報酬であった。
「そりゃあね、食料品店で氷をひたすら作り続ける仕事の報酬がこれっぽっちっていうのは愚痴りたい話ではあるよ? けど、それにしたってどうにもなあ」
魔法使いの魔法は、社会に対して多大な貢献をする技能である。夏真っ盛りのこの季節に、本来であれば手に入らない氷を作ることだってできる。
ただ出来るという言葉の上に楽にとは付かない。魔法を使うということは精神的に疲労を感じる行為であり、例えば作った氷で氷室を作るとなれば、かなりの重労働となる。
「疲れたよなあ。一人じゃあとても無理な仕事だ」
クルト達が行った仕事は、食料品店の食料保存庫に簡易的な氷室を作ることだった。夏のこの時期では、野菜にしろ肉類にしろ足が早くすぐに腐る。それを防ぐために魔法使いの力を借りたいとのことであった。
「疲れて仕事して、貰ったのが1週間分の食費程度っていうのが、なんとも納得し難いというかね」
報酬の硬貨は金貨や銀貨と言った高価な物ではない。安価なマジクト国信用硬貨というもので、もっと安価な銅貨と高価な銀貨の間を埋めるためにマジクト国が鋳造しているものである。
材質としては銅貨とそれほど変わらないのであるが、流通量と銅貨への両替えをマジクト国が管理することで、その価値を維持している。
「贅沢な悩みだろうさ。一日の仕事でこれだけ稼げれば上等なんじゃないか? まあ、この硬貨の価値も最近になって下がっているらしいけどな」
マジクト国信用硬貨の価値は、信用という具体性の無い物に依存しているためか、日々変化している。最近はその価値が下降気味であるらしい。
「やっぱり不景気じゃないか。先輩のルーナさんもさ。西のリブクイン国から魔法研究に関わる資料を取り寄せようとしたらしいけど、かーなーり運搬賃が高くなってるらしくて断念してたよ」
クルトの先輩にあたるルーナは、最近になり漸く魔法研究を始めた女生徒なのだが、いきなり金銭面の問題が浮上して、かなり不景気な顔をしていた。
「流通の問題なんだろうなあ………」
クルトの話を聞いていたナイツがそんな言葉を呟く。
「流通? 何か知ってるの?」
訳知り顔でそんなこと言うナイツだから、クルトは気になって尋ねてしまう。
「今日、仕事をした食料品店だが、どういう店か気が付いたか?」
「確か珍しい食料を売ってるんじゃ無かったっけ? 珍品、名品なんでもござれ。世界を一目に見れないが、胃袋の中は世界で満たせる。みたいなキャッチフレーズが売りらしいから、輸入品を扱ってるんだろうね」
アシュルは港町でもあるため、多種多様な地域から様々な物品が集まってくる。当然、それらを取り扱う店も多く存在していた。
「そうだ。そういう店が食料の長期保存を望むってことは、本来処分する様な期間が過ぎた食料も商品として置いておきたいってことなんだろうさ。つまり買い入れ金に対する仕入れ量が減って来ていると考えられる」
「ふうん。どうして?」
「だから流通の問題だって。多分、どこかの国との交易が上手く行ってないんだ。ルーナさんがリブクインからの運賃代が高いって言っていたのなら、恐らくはリブクインが他国へ物品の輸出を控えてるってことなんだろうな」
だから食料品店も仕入れることができる商品が限られて四苦八苦しているのだろう。報酬が安いのもそのためか。
「商売がやり辛くなっている店が、魔法使いを高値で雇うはずもないよねえ。これだけの賃金でも有り難く思っておくべきなのかなあ」
「マジクト国、それもこのアシュルの街は他国との貿易が主な産業だ。流通が悪くなればそれだけダメージがデカい。そうだな、もう一つの産業とも言える俺達魔法使いが何がしか頑張る必要があるのかもな」
アシュルは港町という特徴の外に、大陸一の魔法使いの組織と言える魔法大学が存在するという利点がある。
魔法使いの魔法は社会にとって有用な物であるため、港町としての機能に不備が生じれば、代わりに魔法使い達が魔法の力を使って街を支える必要があるのかもしれない。
「けど、いざ何かをしようったって、できるわけでも無いと思うけど………」
「だなあ。まあ、不景気なんて長く続くもんじゃないさ。ひょんなことから解決したりするんだ。俺達は見守ってれば良いんだよ」
仕事からの帰り道。学生二人は世の中の不景気について、自分達とは他人事だと思いながらも話を続けていた。
まさかこの不景気がさらに悪化するとも知らずに。
アシュル港に停泊する船が多くなったという噂をクルトは聞いた。噂を語る者の内、実際に港でその様子を見た者もいたので事実なのだろう。
「どう思う? 軍艦みたいなのがこう港にズラって並ぶと戦争だー! って空気になるんだろうけど」
「並んでるのは確か商船って話だろう? しかもこの国の貴族や商人が所有している。だったらそれも不景気から来る物だな。船を出港させるだけの商売が無いんだろうさ」
実家が商家らしいナイツは、クルトが語る妄想を訂正する様に話す。場所は食堂。教室が違うというのに、昼時になると良くこの場所で顔を合わせることが多い。まあ、昼食時間というのはどの教室でも同じなのでそういうこともあるだろう。
「不景気だからってそこまでになるもんかな。物の運搬の仕事なんて、幾らでもあるものでしょ? それが海運業なら尚更……ああ、なんだこれ。草の……塊? なんでこんなものがスープの中に」
食堂なので食事をしながらクルトとナイツは話す。
「そりゃあ幾らでもあるが、それが出来ない状況になれば無いのと同じさ。多分、航路の問題だな。海運で重要な航路の一つに、フォース大陸を一周グルっと回る物があるんだが、リブクイン国付近のそれが通行止めにでもなってるんじゃないか? だから航路丸々一つが駄目になって、その航路を使う船も出港停止。それとその草は新しく開発された加工食品らしいぞ。確か名前はブロックサラダ」
その後ナイツはブロックサラダについて語る。複数の野菜を細切れにして固めて乾燥させた物で、栄養価が高く、お湯にすぐ溶けて簡易スープを作れるそうだ。どうしてだかクルトのスープに入っていた物は塊のままだったが。
「海運云々の話だけどさ。別の航路を使えば良いんじゃないかな。まさか通行止めが解かれるのを待つなんて話は無いでしょ」
「航路なんてそう幾つもあるもんじゃないのさ。あったとしても、別の誰かが使ってて、そっちの方が上手く金を稼ぐ。船を出したって赤字しか出ないなら誰も仕事なんてしないだろうに」
ナイツはスープをかき混ぜながら話す。クルトとナイツは同じランチを頼んでいるため、彼のスープにもブロックサラダとやらが入っているのだろう。しかも十分に溶けずに。欠陥品なのではないだろうか。
「しっかし深刻な状況になったもんだねえ。アシュルの商船なんてこの街の名物みたいなもんじゃないか。それがまた商売ができずに港に浮いてるだけなんて」
景気が良いというのが良く人が動き回る状況だというのなら、不景気は何もかもの動きが止まる。船も動かず止まったままだ。
「他人事じゃないぞ? このまずいスープも不景気のせいだ」
とうとうナイツはブロックサラダのスープをまずいと認めた。そうだろうとも。クルトもずっと思っていた。
「なんで?」
「同じ材料費でも、商品の価値が上がれば買える物の質は低くなる。商船が動かないってことはアシュルに入ってくる食料品が少なくなるってことだからな。大学の食堂は大学が運営してるだろ? 配当予算も限られている。不景気の余波は俺達の食事にまで及んでいるってわけだ。うわ、良く溶かしたらマシになると思ったが、スープ全体が苦くなった」
本当にまずそうにスープを飲むナイツ。残すという選択肢は無いらしい。
「景気の動向とかには興味無いけど、食事が不味くなるのは嫌だなあ」
「ま、このまま国が動かないなんてことは無いだろうさ。何もしなけりゃジリ貧だ。商人達だって―――」
「お食事中申し訳ありませんが、チラシをお受け取りくださーい」
話の途中で、突然視界に紙が飛び込んできた。クルトとナイツの間にチラシが差しこまれたのだ。
チラシを持つ女生徒は、クルト達がチラシを受け取るとすぐに違う生徒にチラシを渡しに向かった。
「………なんだろうね。アシュル街道活性化計画?」
チラシにはそう書かれていた。どうにも仰々しい題名である。
アシュル街道とはその名の通り、アシュルの街から伸びる街道のことである。アシュルの東側は海なのでそれ以外、北と北西、南西、南の四つの街道が存在している。
街道はマジクト国全体に届く様に整備されており、海路を除き、マジクト国内の主要交通路となっていた。
「航路の貿易が駄目になったから、既にある陸路を活用しようって話じゃないか? どうしてうちの大学の女生徒が配っているのかわからないが」
「多分、これのせいじゃないかな」
クルトはチラシの吹き出し部分を指差した。そこにはこう書かれている。魔法使いの力で新たな交通手段を! 商業も魔法が主役の時代! と。
大学内の広場にて、チラシに釣られたらしい生徒達が集まっていた。別にチラシの内容自体に興味があったわけではないのだろう。
イベント事らしいから顔を出してみよう。そういう人種が最初に集まり、人が集まっているのでなんだろうとさらに人が集まる。そういう理屈で、魔法大学の生徒4分の1程が集まっている。
クルトとナイツはその最初に集まった人間である。食堂で配られたチラシに興味を持ち、どういう催しがあるのかと出向いてみたのである。
「えー、みなさん。お集まり頂きありがとうございます。僕はヘリスラー教室のカップス。現在、教室の代表としてここに立つ者です」
丁度チラシに書かれた指定の時間になり、代表者らしき人物が広場の中心に顔を出した。側には他の生徒もおり、尚且つ何やら大きな物を広場の中心へと運んで行く。布が被されているのでそれが何であるかはわからない。
「あ、カップスさんだ」
クルトは代表者の生徒の顔に見覚えがあった。
「知り合いか?」
ナイツは代表者を知らない様子。クルトも大学内での仕事で顔を合わせたことがある程度だ。同じ大学の生徒だとしても、普通はその程度の関係でしかない。
「うん。本人も言ってる通りヘリスラー教室の………」
「どうかしたのか?」
クルトが言い淀むので不審に思うナイツ。
「いやあ、その、ヘリスラー教室の代表としてって言ってるうえに、この人数の集まりとなると」
「……ああ、なるほど」
生徒を集めた理由がなんであるかがわかったわけではない。ただ、代表者のカップスがヘリスラー教室の生徒で、広場に大学生徒の多くが集まっているということは、集まりの中にサクラの客がいるということを意味している。
ヘリスラー教室は魔法大学内でもっとも生徒の在籍数が多いため、大学生徒が多く集まる状況となれば、その中に必ず一人か二人は存在するはずだ。
その生徒達はきっと、広場で人を集めるから見物客を装ってくれと頼まれているのだろう。
「怪しい集まりかもしれないってことか?」
小声でナイツが囁く。それにクルトは頷いた。眉に唾を付けて見物する必要はあるだろう。
「このたび集まって貰った理由は、配布したチラシにある通り、アシュル街道を活性化しようという計画に、みなさんの力をお借りしたいからです」
カップスの話が集まる。現段階ではチラシに書かれている内容と大差は無い。
「どうして魔法大学生徒の僕らがそんなことを。と考える人達もいるでしょうが、それは僕達の計画が魔法使い無しには達成できないものだからです」
魔法大学内で計画されたものだから当たり前なのではとクルトは考える。ヘリスラー教室はいったい何を企んでいるのか。
「現在、マジクト国内の空気は悪い状態だと言えます。それは皆さん自身、肌身で感じていることでしょう。知っている人は知っているでしょうが、現在マジクト国が重視している海運業において、主要な航路の一つが他国の事情によって使用することができないという状況が続いています。結果、運輸関連の商売や事業が上手くいかなくなっているというものが原因となり、不況となってしまったのです」
ナイツが話していた通りの言葉をカップスも話す。海運業重視の状況で航路一つが使えなくなったので景気が悪くなったという内容だ。
「さてこれにどう対処すれば良いか。僕らの様な学徒が考えることではないでしょうが、やはり何かしらアシュルの街に貢献したいと思うのが人情というものでしょう。そこで僕らの師であるヘリスラー教師が、教室が秘匿している技術を使ってアシュル街道を航路に匹敵する流通路にできないかと考えたのです」
魔法研究によって得られた知識や技術は、その功績が奪われない様にと、個人や個人が属する教室が内密にしている場合が多くある。大学関係者の研究であれば最終的に大学へと帰属するのであるが、大学側だって無暗やたらと魔法技術を公開しないので、結局は周囲に明かされない魔法研究というものが多くなる。
ヘリスラー教室にも当然、そういう周りが知らない魔法技術というものを所有しているのだろう。
問題は何故それを不特定多数の人間に話しているかであるが。
「みなさんを集めた理由ですが、それは教室単体での知識や技術だけでは、ヘリスラー教師の考えた計画を実行できないからです。そこで、みさなんには魔法使いとしての力を貸して頂きたい! 勿論、計画に必要な技術、知識、費用はすべて当教室が提供します」
「具体的にはどういうもの行う予定なのでしょうか!」
集まった魔法使い達の一人がカップスに向けて問い掛ける。声からして女生徒だろう。随分と都合の良い合いの手だと思う。
(多分、今の生徒がサクラの一人なんだろうね)
勘付くクルト。他の生徒のうち何人かも冷めた様子で見つめている。
「そう、それを説明するためにこの広場を集合場所に選んだのです。これをご覧ください!」
カップスの合図と共に、広場に運び込まれていた大きな荷物、それに被された布が取り払われる。
中から現れたのは四足の獣だった。いや、獣の像と言うべきだろうか。太い足と丸みを帯びた体。そういう造形であり、既存の動物をモチーフにしているとは思えない。
「これは当教室が開発している新式のゴーレム。人造馬です!」
カップスが獣の像に手を伸ばし紹介する。
「馬?」
「えっ、馬?」
「ロバだって言われてもまだ抵抗が………」
広場中でざわめきが起こる。獣の像はどう見たって馬には見えなかった。何がしかに無理矢理例えろと言われれば、クルトならブタかイノシシだと答えるだろう。
「と、とにかくこの人造馬こそヘリスラー教室が秘匿していた魔法技術であり、今、それを公開して、アシュルの街に活気を取り戻そうとするのが僕らの教室の目的です。もし、参加したいと考える方が居れば、是非、ヘリスラー教室まで来てください。詳しく話を聞きに来たという程度の目的でも結構です。参加するかどうかはその後で決めてください」
細かな説明の後、ヘリスラー教室の生徒達は広場から去った。残されたのはチラシに釣られて集まった生徒のみである。
それらの生徒も時間が経つにつれ、その場からいなくなった。
「ほう、ヘリスラー教室がそんなことをのう。わしなんぞはなーんも知らんかったが」
午後の授業が珍しく行われるオーゼ教室。最初は普通の授業を行っていたのだが、途中で昼の広場での騒ぎはなんだったのかとオーゼが聞いてきたので、クルトはそのことについて話していた。
「先生が知らないってことは、ヘリスラー教室の独断ってことなんですかね? いや、でもそれはそれでおかしいけど」
考え込むクルト。ヘリスラー教室が企画するアシュル街道活性化計画がどうにも気になってしまう。
「何か思うところでもあるんですかー? わたしもよく知らないんですけどー」
同じ教室のルーナも聞いてくる。彼女は昼は生徒組合の宿舎にいたらしく、広場での集まりには参加していなかったそうだ。
「街道って要するに公道でしょ? 教室単独で活性化計画なんてできるとは思えないんだよね」
許可だの必要な労力など用意しなければならない物が多すぎる。魔法使いの勧誘はしているから、労力についてはそれで用意するとしても、勝手に魔法技術を使って、公道で怪しげなゴーレムを動かすというのはどうなのだろうか。
「でもでもー。もし活性化に成功すれば、わたしが取り寄せたい資料本なんかも安く仕入れられたりするんですかねー」
おかしな期待をするルーナ。しかしその期待に誰かが答えてくれることは無さそうに思う。
「アシュル街道はマジクト国内の道じゃからのう。ルーナ君が欲しいのはリブクイン国の資料じゃろう? 計画の成功不成功は関係無く、手に入れるのは難しいと思うが」
そういうことである。アシュル街道を流通路として活性化させたとして、アシュルの街の不景気は無くなるかもしれないが、航路運航禁止の原因である国同士の問題は解決しないだろう。あくまで応急処置的な計画なのである。
「そうなんですかー……。うーん。それじゃあ魔法研究については、もっと別の観点から調べた方が良いんでしょうねー」
「おお、ルーナ君も漸く魔法研究を始めたのか。良いことじゃぞ。大学側へ正式に認める様に手続きをしようか?」
「あ、全部自分でやったから大丈夫ですよー。大学の在学歴はそれなりにありますからー、そういう方法は良く知ってるんでーす」
オーゼ師とルーナは、ルーナの魔法研究について盛り上がり始めた。広場での騒ぎについては、既に興味を失っている様だ。
一方、クルトはまだ頭の中でヘリスラー教室の計画について考えている。
(そもそも街道を航路の代替手段にするって自体が無謀なんだよなあ。用途が違うっていうのもあるけど、いくら魔法で動かすゴーレムを使うからって、船の運搬量に勝るわけでも無いだろうし)
恐らく、街道を活性化させるという目的以外に何かあるだろう。そういう結論をクルトは導き出した。そしてそう考えるのはクルトだけではあるまい。
(そんなこと、ちょっと考えれば誰でもわかることなんだ。それで計画に人が集まるのかどうか………)
計画には裏がある。そう気付いた大学生徒達が、わざわざヘリスラー教室に顔を出すのか。
(多分、出すんだろうねえ。ヘリスラー教室側は自分達が隠している魔法研究を公開すると言っている。計画に参加すれば、真っ先に知ることができる訳で、興味を持たない生徒なんていない)
しかも広場であの馬に見えない人造馬と言うゴーレムを見せられた。人目をひくあのゴーレムを見て、好奇心をくすぐられない魔法使いは魔法使いでは無いだろう。
いったいあれは何であるか。それだけでも聞こうとヘリスラー教室に出向き、計画の説明を聞く。そうしてなんだかんだと説得されて計画を手伝うことになるのだ。
(押しに弱いのも魔法使いの特徴の一つだからなあ。魔法以外の物事に関しては気弱なんだよ。それじゃあ僕はどうするか)
クルトは考える。人造馬のゴーレムは気にはなるが、わざわざヘリスラー教室まで出向く程かと問われればそうでもない。しかし。
(ヘリスラー教室の計画には興味がある。いったい何を考えているのやら)
オーゼ師が雑談を止めて授業を再開する頃。クルトは授業が終わった後にヘリスラー教室に向かうことを内心で決めたのだった。




