魔法使いの研究方(1)
フォース大陸において魔法使いと呼ばれる人種は、魔法を使える人間という意味ではない。
言葉本来の意味から離れてしまっているが、魔法使いとは魔法を研究する人種を指すのである。
例えば魔法の技能が一級品だとしても、魔法を研究せず、それを単なる便利な技能として使う者は、魔法使いとは呼ばれない。魔法を活かしている職や立場の人間として見られるのである。一方で、そういう例は非常に少ないが、魔法を一切使えなくても、魔法を専門に研究しているのなら魔法使いと呼ばれる。
魔法を研究せねば魔法使いに在らず。そんな風潮は、マジクト国魔法大学でも存在していた。
「研究会? なんでまたそんなことを?」
魔法大学内にある生徒組合宿舎。そんな場所で、クルトは友人であるナイツの相談を聞いていた。
「教室の先輩がな、そういうのを仲間内で開いているって聞いて、俺達もしてみないかと思ってさ」
ナイツが所属するヘックス教室は、クルトの教室と違い、生徒の年代が上から下まで万遍なく在籍する教室だ。
その関係から、自分より先に大学に入った人間から、効率的な学生生活の過ごし方を良く聞くらしい。
「人が集まって、自分がしている魔法研究を互いに紹介するんだ。勿論、自分が秘匿しているものまで話す必要はない。ただ参加する以上、他人の利益になるかもしれない情報でも拘り無く話すって感じですると、良い感じに相互利益になるそうだ」
授業や自分だけで研究をするのでなく、生徒間同士でも切磋琢磨し合おうという事だろうか。
「面白そうではあるよね。大学は魔法使いが多く集まる場所なんだから、研究会っていうのも良いかもしれない。人は集まりそうなの?」
「それがまだなんだよ。うちの教室から3人程。それじゃあ普段とあんまり変わらないから、他の教室の生徒にも参加して欲しくてな」
ナイツはクルトの目の前で、手の平を合わせて頭を下げた。
「頼む! 生徒組合からも、各教室へ研究会に参加する生徒を勧誘してくれないか」
ナイツが生徒組合に顔を出したのは、そういう理由だったかららしい。話を聞く限りは、確かに生徒組合が動く事案である。
普段はあまり交流の無い他教室の生徒が、互いに交流をしたいという話なら、生徒の利益を尊重する生徒組合としては、むしろ何もしなければ沽券に関わって来る。
「そうだね。生徒組合事務員として、何がしかの行動はしてみせるよ」
面倒事は嫌いなクルトだが、生徒組合事務員という立場である以上、その役目はきちんと全うするつもりであった。
「ああ、そうだ。どうせならお前も参加してくれよ。そうすれば、一応は他教室の生徒同士で集まっている形ができるだろ?」
ナイツはクルトの返答を聞き、顔を上げてから研究会へと誘ってきた。
「僕が? 良いの?」
「何か不安でもあるのか?」
怪訝そうにこちらを見るナイツ。
彼の言う通り、クルトには不安がある。クルトの魔法研究は、最近、少々遅れ気味なのだ。そんな状況で他人と研究情報を提供し合えば、相手の損になってしまうのではないかと遠慮してしまう。
「うーん。いや、でも得はこっちが多いわけだから、別に良いか」
遠慮はしたものの、面白そうであるという考えが先立ち、クルトは研究会への参加に了承することにした。
「よし、これで4人だな。人数としてはこの倍、できれば、後2つか3つの教室から生徒を呼び込みたいところだな」
「だね。規模の大きい教室なら、何人か参加希望者がいるんじゃないの?」
「あのー」
突然、クルトとナイツ以外の声が聞こえて来る。しかし二人はあえてそれを無視する。
「とりあえずは掛け合って見るが、内情を知りたいのは生徒数の少ない教室だな。そういう教室の研究ってのはどういうものなのか知りたいね」
「それってうちの教室を馬鹿にしてる? そりゃあ変な特徴があると思うけども」
「あのー!」
声が大きくなる。止めて欲しい。話がし難くなるじゃないか。
「けど! 小さい教室の生徒も誘うってのは賛成だね! 僕も気になるよ!」
とりあえず、邪魔な声が聞こえない様に自分の声も大きくするクルト。
「そうだろう? 案外、規模の小さい教室に在籍する生徒も、こういう研究会に乗り気だったりしそうだしな!」
思いが通じた様で、ナイツの声も大きくなる。こういう状況だと気が自然と合うのはどうしてだろうか。
しかしそんな二人の努力は、残念ながら徒労に終わる。
「もうー! 二人とも、どうしてわたしを無視するんですかー! さっきから、あんなに話し掛けてるのにー!」
目の前に女の顔が突然現れる。クルトの先輩であるルーナだ。先ほどから口うるさくクルト達の会話に入ってこようとするので無視していたのだが、視界まで塞がれては相手をする必要が出てきてしまう。
ちなみにクルトとナイツは生徒組合の窓口カウンター越しに話しているので、ルーナはカウンターの上に横たわりながらクルトの顔を見ている形になる。
「なんなのルーナさん。僕、今は生徒組合事務員として仕事をしているんだけど」
「わたしも事務員ですよー! 話くらいしてくれても良いじゃないですかー!」
どうやら構って欲しかったらしい。非常に面倒くさい。
「だそうだけど、どう思う? ナイツ」
出来得る限り相手をしたくないので、矛先を別に向けようと努力してみる。
「ええっ、俺!? いやあ、研究会についての相談だから、どこかの教室に属している生徒に話さないといけないだろうと思っていたから………」
「わたしも、今はオーゼ教室の一員ですよー!」
「そうだったんですか? なあ、クルト。本当か?」
友人はすぐにこっちへ話を向けて来た。役に立たない奴め。
「一応はね。でも、まだ自分の魔法研究も無いじゃないか。それで研究会の相談に乗るって変じゃない?」
ルーナはクルトより先に魔法大学の生徒になった人物であり、大学に入る前から魔法技能を教わっていた女性でもある。
それが問題だったのか、彼女は入学してすぐに所属した教室を追い出されて、生徒組合事務員をずっとしていた。それで本人は困っていなかったらしいのだが、最近、オーゼ教室に所属することになり、とある問題が噴出する。
彼女は、自分の魔法研究というものを持つ機会が無かったのである。
「うう……。研究云々を言われると弱いんですよねー。オーゼ先生からも、何がしかを見つける様にって何度も言われてるんですう」
なまじ魔法技能に優れているせいで、何か新しい研究を始めようとしても、やるまでにアレやコレやと考えて、諦めてしまうらしい。
「ああいうのは、勢いが大切だからねえ。僕も、ちょっとしたきっかけで見つけた研究だし。ナイツもそうだろ?」
「え? 俺は先生に幾つか紹介して貰って、その中から選んだぞ? 嫌なら別の方向を選べば良いって言われて」
「あれ? うちの先生は生徒の自主性がどうとか言われて、そういうことをして貰えなかったけど………。もしかして、面倒だった?」
オーゼ師ならあり得る話だ。生徒の魔法研究に頭を悩ますくらいなら、自分の趣味に没頭する。そう言えば自分の魔法研究を探せと言われた時も、彼の仕事を手伝う時のことだった様な。
「もうー! クルトくんの話はどうでもいいんでーす。問題は、わたしの魔法研究ですよー!」
「いや、ナイツの相談ごとだと思うけど」
「だよな。一瞬忘れられたのかと思ってヒヤッとしたが」
まさか生徒組合事務員の方が悩みを話す側になるとは思っても見なかった。だから彼女を相手にするのは嫌なのだ。
「そ、そうでしたけどー………。そうだ! わたしも、その研究会に参加しても良いですかー? そこでなら、何か新しい魔法研究を見つけられるかもー」
名案だとばかりに喜ぶルーナ。確かに彼女にとっては利益になる話だろうけど。
「研究会だよ? 一緒に魔法を学ぼうって集まりだよ? 今のルーナさんに、別の生徒へ用意できる物ってある?」
クルトは自分のことを棚に上げて、ルーナの魔法研究を持っていないという点を責める。
「いや、ルーナさんは魔法研究こそしていないものの、能力ならあるでしょう? そこを売りにすれば、もしくは………」
「そうですよー。上級生が、何の見返りも無く力を貸すんじゃないくてー、わたしみたいな人間が、他人の研究内容を教えて貰う代わりに、魔法技能を提供するんであればー、こう、相互利益になるんじゃないでしょうかー」
「………」
クルトは反論する言葉を見つけられなかった。納得できる話だったからだ。
「そ、そうだ。同期生だけの集まりなんだから、ルーナさんが参加するのはどうなの?」
なんとか、彼女が研究会に参加しない方向で話を進めようとするクルト。
「悪い。最初に言った、参加する予定の3人のうち、一人は一つ上の先輩だ」
「うっ……。そうなの?」
これではルーナが研究会に参加しない理由が無くなってしまう。
「っていうかー。なんだかクルトくんはわたしが研究会に参加することに反対みたいですけどー。どうしてですかー?」
睨む様にこちらを見るルーナだが、全体的な迫力に欠ける。そんな彼女に反対するクルトであるが、その理由はと言うと。
「だって………ねえ」
生徒組合の関係で顔を合わせることが多く、最近は同じ教室の所属生徒にもなり、これで研究会とやらでも同じになれば、なんだが鬱陶しくなるとは、さすがに口が出せないクルトだった。
肝心の研究会参加者であったが、各教室にクルトが生徒組合からの勧誘を行ってみると、結構、順調に人が集まった。ナイツの方も独自で参加者を募っていたらしく、そちらも何人か希望者がいたそうだ
全員合わせて21名。所属する教室は6つに跨ぐ。なかなかの数というか、集まり過ぎにも感じる。それだけ、研究会という集まりの場を求めている人間が多かったのだろう。やはりというか、クルトと同年代が多い。
「集まったのは喜ばしいことだが、こうなってくると悩むのが、どこでするかだな」
数日後。またもや生徒組合宿舎にて、クルトはナイツの相談を聞いていた。
「どこかを貸し切らなきゃ無理っぽい人数だしねえ。空いている教室とかは………なんか違うか」
ここまで人数が集まったのなら、小さいながらもお祭り騒ぎだ。それなりに特別な場所で研究会を行いたいという願望がクルトにはある。
「研究会なんですからー、1日貸し切れる場所じゃないと、話がすぐに終わっちゃいますしねー」
今度は最初からルーナも話に加わっている。まあ、研究会の一応の参加者になったのだから仕方ない。
「大学外に詳しいのはクルトだろ? 丁度良い場所を知らないのか?」
「そう言われてもなあ。それなりの場所を大学外に用意するとなると、やっぱりこれが必要になるけど………」
右腕の人差し指と親指で輪を作るクルト。要するに金がいると表現していた。
「参加費の徴収は、だいたいコレくらいを予定しているが」
「安いね。まあ、初めてでどんなことをするのかも詳しく決まってないから、仕方ないっちゃあ仕方ないか」
一人当たりの参加費は、今日一日の昼食代よりも低い。人数が多いので、それでもまとまった額はあるだろうが、大学外で多人数が入れる場所を探そうとすれば、少し足りないと考えるクルト。
「あ、ちゃんと魔法研究に関わることでしたら、生徒組合から支援金をだせるかもしれませんよー。活動内容と、予定、終わった後は報告書を書いてもらう必要がありますけどー」
「そっか。生徒が魔法研究のためにする行動だから、生徒組合の支援が期待できるんだ。確か、ちゃんと活動したっていう証明も必要なんだっけ」
クルトとルーナはお互い生徒組合事務員のため、そういう手続きなら手慣れた物である。
「なら悪いんだが、そういう手続きをそっちでしてくれないか? こっちは、場所さえ指定してくれるなら、会場準備や進行予定について全部決めるつもりだ」
とりあえずの役割分担が出来て行く。勢いと言う物が大事なのだろう。一旦、始めてしまえば、不備があったとしても話は進む。
「よし。全体で使える可能性が高い予算をまとめて行こう。それが決めれば、会場をどこにするかだ」
クルトが話をまとめる。本番がどの様な物かは知らないが、準備の段階では楽しいと思える物であった。
最終的に決まった会場は、アシュルの街にある「親方商売」という宿と酒場を兼任している店になった。
大学からも比較的近くにある店で、最終的に選んだ理由は、ここがクルトが普段の部屋を借りている宿でもあったからだ。
「結構良い場所だな。全員が入っても余裕がある」
ナイツが酒場を見回しながら、クルトに話す。
店の酒場になっている場所には、現在、クルトを含めて21名の魔法使いが存在している。30名程の客数が定員の店であるため、それだけ空間に余裕があるのだ。
「店主とはもう顔見知りというか、大学入学当初からの知り合いだから、無理が利くんだよね。一日貸切代も少しは負けてくれたし」
「大学入学“前”からだろ。坊や。確か、最初に部屋を借りに来たときは、魔法大学への入学希望者だったじゃないか」
クルトがナイツと話していると、腰掛けていたカウンターの向こうから声が聞こえてきた。
この店の店主である、リネという女性だ。40から50代くらいの見た目で、ふくよか、いや、太っていると表現すべき体格の持ち主である。
若い頃は今より痩せており、美人でもあったらしく、その美貌を駆使して、この店の購入資金を稼いだとは彼女の弁だ。ただ、クルトはむしろ彼女の豪快な性格こそに原因があるのではと推測していた。
「リネさん。今日はすみません。無理を聞いてもらったみたいで」
「いいよいいよ。坊やは毎月きちんと家賃を払ってくれる良客だ。頼みごとがあるなら、なんだって頼みな!」
リネという女性は、クルトのことを坊やと呼ぶ。初めてこの店にやってきた時、子どもに縁の無い場所だから、坊やは帰りなと言われたことに起因している。
部屋を借りに来たのだと何度も説明して、なんとか納得して貰った時のことは鮮明に思い出せる。つくづく自分の身長が低いのだと認識させられた日だったから。
「食べ物や飲み物を頼むかもしれませんので、今日一日はよろしくお願いします」
「若い子たちばっかりだからね。魔法使いなんて、みんなひょろいんだから、ちゃんと飲み食いするんだよ」
随分な言い方だが、大学の学生が平均的な体格が一般人よりも劣りがちなのは、れっきとした事実であった。
「あはは。他の人にはそういうことを言わないでねっと、ナイツ。そろそろ始めた方が良いんじゃないかな」
朝から集まってもらった生徒達であり、皆が魔法使いというのもあって、既に何人かがお互いの魔法知識について、アレコレ話し合っている。
「ああわかった。みんな! 聞いてくれ!」
大声を上げれば、部屋全体にちゃんと声が届く。ナイツの言葉に、部屋が一瞬静かになった。
「今日は集まってくれて礼を言う。勿論、みんな自分の魔法研究を発展させるというのが目的だろうが、研究会自体は、うちの教室の先輩から聞いた真似事だ。まだまだ、十分にできないことも多いだろう。だが、今、ここにいるみんなは、向学心溢れる人間だと理解している! その意気込みさえあれば、必ず得られる物があるはずだ。今日この日に集まったということだけで、それは証明されたと同然であり―――」
(長い……)
これはクルトの感想であるが、きっと、この場にいる人間全員の意見だっただろう。しかも話が進んでいないし。
「ええっと。進行役のナイツの話はここらまでとして、とりあえず、近くに人間と、自分の魔法研究について話し合ってみましょう! 話がはずめばそれで良いし、なかったらなかったで、別の人の話に混ぜれば良い。最終的には全員での会議みたいな形式になれば良いなと思ってます。じゃあ、よろしく。あ、出されてる料理は飲み食い自由です!」
クルトはナイツの話を遮り、進行に必要な分の情報を全員に伝える。どうせ仲間内での集まりなのだ。前口上なんぞはこの程度で十分だ。
「お、おい。クルト。せっかく色々と考えていたのに………」
不満気なナイツ。努力の方向性が根本的に間違っていると伝えたい衝動に駆られた。
「そんなのなんだって良いじゃないか。ほら、みんなお互いに話し始めたよ」
酒場内がざわついていく。みながみな魔法使いとしての好奇心を持っているのだ。その方面の話は留まることを知らないのだろう。
「本当だ。おい、どうしよう。この後、俺も誰かと話せば良いのか?」
狼狽しているナイツ。進行役では無かったのだろうか。
「とりあえず、話し相手がいなさそうな人がいたら相手をしてあげて。研究会なんだから、全員が積極的に魔法研究を話してくれないと上手くいかないよ。ほら、ルーナさんも、自分は魔法研究なんてしてないって言うのに、あんなに積極的に」
積極的というか、必死というか、そんな形相でルーナは周囲の人間に話し掛けている。今更ながら、自分の立ち位置に危機感を抱いているらしい。
「あれは……いいのか? むしろ周りは引き気味だが」
「あくまで意気込み的な意味だから。何もかもを見習えってわけじゃないことを理解して欲しい」
「………」
そんな風に見るな。彼女の姿があまりにも愚かに見えたとしても、それは自分の責任ではない。
「ほら、行ってきなよ。誰かと話さないと、何にも始まらないよ」
ナイツの背中を押して、人の輪の中に向かわせる。進行役が魔法研究の話をしないでどうするのか。
「さてと……僕はどうしようかな」
友人に色々と気を使えと言った手前、自分が何もしない訳には行かない。ここは場を盛り上げつつ、他人から有用な情報を聞き出す術を考えなければ―――
「あのさ、もしかしなくても、オーゼ教室のクルトって人で良いのかな?」
「うん?」
女性が二人、クルトに話し掛けて来た。一人は見るからに勝気そうな、鋭い目をした長身の女性。そんな彼女の背中には、もう一人の女性が隠れていた。まあ、そんな風にしているのだから大人しいのだろう。酷く長い髪がなお、その雰囲気を煽っている。
「わたしはタニア教室のカーリー。こっちは同じ教室アーシャって言うんだ」
長身の方の女性カーリーが自分を紹介し、そのすぐ後に、後ろに隠れた長髪の女性アーシャを指差す。
タニア教室と言えば、女性の生徒が多く在籍する教室だ。研究内容よりも、同性が集まることの安心感で生徒を集めている教室だと聞いている。
教師のタニアがそっちの趣味があるという噂もあったりするが、クルトは悪評の類だろうと思いたかった。
「えっと。カーリーとアーシャだね。うん。僕はオーゼ教室のクルトだけど、もしかして魔法研究について話しに来た? だったら大歓迎だよ!」
タニア教室には知り合いがいない。教室内ではどんな魔法研究をしているのか興味があるので、向こうから話し掛けて来てくれたのは幸運だ。
「あ、ごめんごめん。そっちの集まりだったよね。いやあ、わたし達は、むしろきみの方に興味があってさ。ねえ、アーシャ」
「う、うん」
勢いのあるカーリーに、クルトの喜びは打ち消される。もう一方のアーシャにも魔法研究の方の話ではないと肯定されて、結構ショックだった。
「研究会なのに? 魔法大学生徒同士なのに?」
せっかく企画に関わったのだから、魔法研究の方の話をしたいのだが。
「あのねえ。女の子二人から、きみの方に興味があるって言われたら、普通は喜ぶもんよ」
「好意の類だったらそりゃあ喜ぶけどね、僕ときみらとは初めて会うわけで、そんなことを言われても、喜んだりしないよ」
姉がいるせいか、クルトは女性からの好意と言うものに結構敏感だ。相手の女性がどういう感情を持って話し掛けてきているか。なんとなくだがわかる。
この場合は、好きとか嫌いとか言う話ではなく、自分への好奇心が強いと感じる。
「あらら。見かけによらず、冷めた考え方なんだ。どうする? アーシャ。簡単には話が聞けないかもね」
「カーリーが強引なのよ。あのね、クルト君。クルト君に興味があるのは、私の方なの」
漸くカーリーの背中から出てきたアーシャ。良く見れば、長い髪は目元まで髪が掛かっている。痛くないのだろうか。
「その興味云々に関してだけど、もしかして、僕が結構な頻度で大学外に出掛けていることと関係がある?」
自分が他の生徒と違う点と言えば、それくらいだろう。たぶん。
「話が早いじゃん。もしかして、正直に話す方がてっとり早かったりする?」
笑うカーリーを見て、クルトは頷く。
「そりゃあね。話は早い方が好きだよ。それがこの場とは関係の無い話なら特に」
自分の魔法研究の発展に関わらない話なのなら、さっさと終わらせたいというのがクルトの本音だ。
「だそうだよアーシャ。話は早くだってさ」
「うん………。ならクルト君に質問なんだけど………クルト君は、幽霊を見たことはありますか?」
「幽霊?」
アーシャの口から飛び出したのは、予想もしていない言葉だった。




