階段怪談
放課後の教室。そこで女子高生三人が何やら話をしている様だ。
「はい! じゃあウチから始めるよ! こんな話知ってる……?」
女子高生、ヒナは声のトーンを落として話し始める。
「理科室横の階段はね、上る時は十四段なのに下る時は十三段になるの。十三日はキリストが処刑された日。そして絞首刑台への階段も十三段……」
「キャー! 怖~い!」
マチは楽しそうに悲鳴を上げる。
そんな中、エミはスマホをいじりながら淡々と言った。
「それって一番上の段数えてないだけじゃね? あと、最近の日本にある絞首刑台はエレベーターなんかで行くらしいよ」
「……」
「……」
教室に静寂が流れる。
「……次行こ、次! マチの番ね!」
ヒナは気を取り直してマチに話を振る。
「ん~そうだな~。じゃあこれは~?」
マチは怪しい笑みを浮かべて話し始める。
「一年生の教室に向かう階段の上にはね~幽霊がいるんだ~。その幽霊は人を突き落とすの~。生きてる人が恨めしいから~。実際怪我した人が何人もいるんだよ~」
「えー! マジもんじゃんー!」
マチの話にヒナは盛り上がる。
そんな中、エミはまた淡々と告げる。
「あれ、滑り止めが劣化してたわんでただけらしいよ。もう直したって森先が言ってた」
「……」
「……」
教室に静寂が流れる。
「……つ、次ウチね!」
ヒナは咳払いをして話し始める。
「北棟の階段の踊り場にある大きな鏡。あの鏡は曰く付きで、四時四十四分に見るとあの世に連れていかれるんだって!」
「ヤダー! ホントー!?」
きゃいきゃいはしゃぐ二人にまたもやエミは淡々と言う。
「あれ、校長がメリカルで買った三年物だって。私、その時間に鏡見たけどなんも起こらなかったよ」
「……」
「……」
教室に静寂が流れる。
「……マ、マチ! 他なんかない!?」
「え、え~」
必死なヒナにマチは、うーんと、うーんとと頭をひねる。
「あ、えっと~旧校舎の階段には足を引っ張る幽霊がいるんだって~」
「うんうん! 旧校舎には幽霊がつきものだよね!」
少し顔を引きつらせながらヒナとマチは気分を高揚させた。
しかしエミは容赦なく淡々と告げる。
「ネタがなくなったな? 突き落とすやつとおんなじ」
「……」
「……」
エミは続ける。
「旧校舎なんて不具合のオンパレードじゃん。あと、夏休み中に取り壊されるって」
そんな冷静なことを言うエミにヒナは声を張り上げる。
「もー! 暑いから怪談してるのに、さっきからいちゃもんばっかじゃん! そういうエミはなんかないの!」
そんなヒナにエミは一言。
「『階段』で『怪談』しようって発想が一番のホラーだわ」
「……」
「……」
教室に静寂が流れる。
最初に口を開いたのはヒナだった。
「……カラオケ行こっか」
その言葉にエミはスマホをしまう。
「行こ行こー」
「アタシも~!」
マチも鞄を持ち、三人は教室から出ていった。
「怪談にツッコむくせによく知ってるよね」
「好きだからさ、現実にあってほしいけど、検証したらだいたい眉唾物なんだもん」
「だいたい?」
三人の声が教室から遠ざかる。
階段怪談、これにて終了。




