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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第97話 世界一の結婚式。 〜神様からの祝福は、ド派手な花火とバフ効果でした〜


 王都中央広場。

 そこは今、世界で一番幸せな場所に変わっていた。


 雲ひとつない青空の下、真っ白なバージンロードが敷かれ、その両脇には溢れんばかりの人々が詰めかけている。

 カレンの商人たち、北の村の農民たち、冒険者ギルドの荒くれ者たち。そして、かつて敵対していたはずの魔族や、救い出された亜人の少女たちまで。

 種族も身分も関係ない。全員が笑顔で、今日という日を祝いに来てくれていた。


「……緊張するな」


 祭壇の前。

 俺は、特注の白いタキシードに身を包み、ガチガチに固まっていた。

 神との決戦の時ですら、こんなに掌に汗をかいたことはない。


「だらしねぇぞ、ナオトの兄ちゃん! 英雄様がビビってどうする!」


 最前列で、ドワーフのボルグが野次を飛ばす。

 彼は今日の媒酌人(仲人)代わりだ。


「うるせぇ。……ネクタイが苦しいんだよ」


 俺は首元を緩めようとして、やめた。

 今日だけは、完璧にしなきゃいけない。

 これから現れる「彼女たち」のために。


「新婦の入場です!」


 司会進行役のリリス(特製ドローンに投影されたホログラム姿)が高らかに宣言する。

 ファンファーレが鳴り響き、大聖堂の扉が開かれた。


 ざわめきが、感嘆の溜息へと変わる。


 先頭を歩くのは、フラワーガールのルナだ。

 背中に小さな妖精の羽をつけ、花びらを撒きながらトコトコと歩いてくる。

 その愛らしさに、会場のあちこちから「可愛い……」という声が漏れる。


 そして、その後ろに続く三つの影。


 右側を歩くのは、エルーカ。

 純白のシルクドレスに身を包み、ヴェール越しでも分かるほど顔を紅潮させている。

 その手には、剣ではなくブーケが握られている。

 かつて「偽物」と呼ばれ、必死になって戦っていた少女は、今、誰よりも清らかな「聖女」のように輝いていた。


 左側を歩くのは、レギナ。

 体のラインを美しく見せるマーメイドラインのドレス。

 背中が大きく開いたデザインは大胆だが、彼女の持つ高貴なオーラがそれを優雅に見せている。

 銀髪をアップにまとめ、赤いルージュを引いた姿は、会場の空気を支配するほどの「女王」の風格だ。


 そして中央には、ミサ。

 膝丈のミニドレスに、シアンのインナーカラーが映えるモダンなスタイル。

 歩くたびにレースが揺れ、彼女の快活さと愛らしさを振りまいている。

 前世の職場で見た疲れ切った顔はもうない。ここにあるのは、人生を謳歌する「主人公」の笑顔だ。


 三者三様の美しさ。

 三色の花嫁たち。


(……マジかよ)


 俺は眩暈がしそうになった。

 こんな美人たちが、全員俺の嫁になるのか。

 前世の俺が見たら、「バグだ! 修正しろ!」と叫んで卒倒するに違いない。


 三人が祭壇の前に到着し、俺の前に並ぶ。


「……ナオトさん。似合ってますか?」


「ナオト。見惚れているな?」


「もう、鼻の下、伸びてるよ。そんなに見惚れちゃった?」


 小声で囁かれる言葉に、俺は我に返った。


「ああ。……最高だ。みんな、世界一綺麗だよ」


 俺が素直に言うと、三人はパァッと顔を輝かせた。


 式が進み、誓いの言葉の時間がやってくる。

 神父役は、なんと、会ったこともない国王陛下が直々に務めてくれている(断ったのだが、「国を救った英雄の門出だぞ!」と押し切られた)。


「新郎、工藤ナオトよ。汝は、この三名を妻とし、健やかなる時も、病める時も、これを愛し、敬い、慰め、助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓うか?」


 重々しい問いかけ。

 俺は一人ひとりの顔を見た。


 エルーカ。

 俺を信じ、俺の背中を守り続けてくれた勇者。


 レギナ。

 俺の生活を支え、俺の心を溶かしてくれた魔女。


 ミサ。

 過去を共有し、未来を共に作る相棒。


 誰一人欠けても、今の俺はいない。

 これは「一夫多妻」なんて制度の話じゃない。

 俺の人生における、最強のチーム結成式(ローンチ)だ。


「……誓います」


 俺は力強く答えた。


「俺の持つ全てのスキルと、知識と、人生をかけて。……彼女たちを、一生守り抜くことを誓います」


 会場から拍手が湧き起こる。


「では、新婦たちよ。……誓うか?」


「はい! 誓います! 彼の剣として、盾として、そして妻として!」


 エルーカが元気よく答える。


「誓おう。私の魔力も、心も、全ては彼のために」


 レギナが妖艶に微笑む。


「誓いまーす! バグ取りも、体調管理も、一生面倒見てあげます!」


 ミサがウィンクする。


 そして、指輪の交換。

 俺が作った三つの指輪が、彼女たちの左薬指に収まる。

 サファイア、ルビー、そしてプリズムクリスタル。

 それぞれの輝きが、太陽の光を受けて一層煌めいた。


「では、誓いの口づけを」


 国王が促す。

 会場のテンションが最高潮に達する。

 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


 ……順番はどうする? じゃんけんか?

 いや、ここは男らしく……。


「……行くぞ」


 俺はまず、エルーカの手を取った。

 ヴェールを上げると、彼女は潤んだ瞳で俺を見上げていた。


「ナオトさん……」


 俺は彼女の唇に、優しく口づけた。

 柔らかくて、甘い感触。

 会場から「ヒュー!」という冷やかしと歓声が上がる。


 次に、レギナ。

 彼女は自分から少し背伸びをして、俺のネクタイを引いた。


「……覚悟はいいな?」


 情熱的なキス。

 一瞬、息ができなくなるほど深く、濃密な口づけ。

 離れた時、彼女の顔は真っ赤で、とろんとしていた。


 そして、ミサ。

 彼女は悪戯っぽく笑っていたが、俺が近づくと、急に神妙な顔になった。


「……もう逃げられないからね?」


「ああ。捕まったよ、お前に」


 俺は彼女の肩を抱き、キスをした。

 懐かしくて、新しい、パートナーの味。


 三回の口づけが終わると、拍手喝采が巻き起こった。

 フラワーシャワーが舞い、ルナが俺たちの足元で飛び跳ねて喜んでいる。


 その時だ。


『Wait. I haven't given my blessing yet.(待ってください。まだ私の祝福が終わっていません)』


 俺のポケットから、デウスの声が響いた。

 空気が震える。


『System Command: Execute "Heaven's Blessing".(システムコマンド:「天の祝福」を実行)』


 デウスが勝手にプログラムを走らせた瞬間。

 王都の上空に、巨大な魔法陣が展開された。

 だが、それは攻撃魔法ではない。


 ポンッ、ポンッ、パァァァン!!


 青空に、無数の花火が打ち上がった。

 昼間だというのに、鮮やかな極彩色の光が空を埋め尽くす。

 さらに、空から光の粒子が雪のように降り注ぎ、触れた人々を温かい光で包み込んだ。


「うわぁっ! なんだこれ!?」


「空から光が……! 体が軽いぞ!」


「肩こりが治った!」


 それは、デウスによる全住民への「状態異常回復(バフ)」のプレゼントだった。


『Congratulation. Be happy, Admin.(おめでとう。お幸せに、管理者)』


 スマホの画面で、ドット絵の神様がクラッカーを鳴らしている。

 粋な真似をしやがる。


「……ありがとな、デウス」


 俺は空を見上げて笑った。


「ナオト! 空、キラキラ!」


「すごいですね……! 世界中が祝福してくれてるみたいです!」


「フン、やるではないか元神様」


 ルナ、エルーカ、レギナが空を見上げる。


「ふふっ! 最高の演出だね!」


 ミサが俺の腕に抱きつく。


「んなっ! ミサ! 貴様協定を忘れたのか!」


「ぬ、抜け駆け禁止です!!」


 つられて、エルーカとレギナも俺にしがみついてきた。


「ちょ、重いって! ドレスが汚れるぞ!」


「いいでしょ? 今日は私たちが主役なんだから!」


「そうだ! この愛を受け止める義務があるぞ!」


「そうですッ!」


 三人の花嫁と、一人の天使(ルナ)に囲まれて。

 俺は世界で一番の幸せ者として、広場の中心で笑っていた。


 前世の俺よ、見てるか。

 お前の人生の結末は、バッドエンドなんかじゃなかったぞ。

 ここからが、本当のスタートだ。


「よし! 式は終わりだ! これからは……披露宴(パーティー)だ!」


 俺が叫ぶと、会場全体が歓声で応えた。

 終わらない宴が始まる。

 俺たちの新しい「家族」の門出を祝う、最高の宴が。


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