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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第64話 世界樹の記憶《メモリ》。 〜星霊たちは「容量不足」を嘆き、少女は別れを告げる〜


 クリスタルの森を駆け抜けながら、俺はふと、頭の片隅で冷静に考えている自分がいた。


(……ルナは、もう自分の家に帰ったようなもんだろ?)


 ここは彼女の故郷、『久遠の揺り籠エターナル・クレイドル』の内部だ。

 結界を抜け、森に招き入れられた彼女は、放っておいても安全に家族の元へ帰れるはずだ。

 俺たちが必死に追いかける必要なんて、論理的に考えればないのかもしれない。


 チラリと隣を見る。

 ミサも、エルーカも、レギナも、誰もそんなことは口にしない。

 ただ必死に、前を見据えて走っている。


 分かっているんだ。

 これは「任務」じゃない。「感情」の問題だ。


 ここまで一緒に旅をしてきた。

 同じ釜の飯を食い、隣で笑い、手を繋いで眠った。

 俺たちとルナの間には、確かに家族のような絆が生まれている。


 だから、こんな形じゃ終われない。

 はぐれて、そのままサヨナラなんて、俺たちが納得できない。

 ちゃんと顔を見て、頭を撫でて、「またな」って笑って送り出したいんだ。


「……行くぞ! 絶対に見つける!」


 俺が声を上げると、三人が力強く頷いた。


「リリス! ルナの魔力痕跡(トレース)頼む!」


『了解です、マスター。現在、微弱な残留思念を追跡中……。マップデータ更新』


 俺の懐からリリスの声が響き、眼鏡のHUDに森の地図が構築されていく。


『前方、座標(X:502, Y:880)に高密度のマナ反応。この森の中枢……「世界樹」の直下です!』


「そこか! 案内頼む!」


『お任せください。最短ルートを算出……右の獣道です。ただし、防衛システム(エネミー)の反応多数!』


 リリスが指し示した方向から、再びクリスタル・ビーストの群れが現れる。


「邪魔です! ルナちゃんに会う邪魔をしないでください!」


 エルーカが叫び、聖剣を振るう。

 一撃で先頭の獣を粉砕し、道をこじ開ける。


「数は多いが、動きは単調だ! マスター、そのまま突っ切れ!」


 レギナが氷の壁を展開し、側面からの攻撃をシャットアウトする。

 完璧な護衛だ。

 俺とミサは、二人が作ってくれた道を全速力で駆ける。


『警告! 頭上より飛行型接近!』


 リリスのアラートと同時、頭上の枝から鳥型の魔物が急降下してくる。


「エルーカ! 12時の方向、枯れ枝だ!」


「はいっ!」


 エルーカが跳躍し、魔物ではなく、その手前の「枯れ枝」を斬り飛ばす。

 落下した巨大な枝が、急降下してきた魔物に直撃し、地面に叩き落とした。


「見えてきました! あれです!」


 ミサが指差す先。

 森が開け、圧倒的な存在感を放つ巨木が姿を現した。

 世界樹。

 その幹は水晶のように透き通り、内部を脈動する光が流れている。

 まさに、この星のメインサーバーだ。


 その根元に、小さな影があった。


「ルナ!」


 俺が叫ぶと、銀髪の少女が振り返った。


「……ナオト?」


 ルナは無事だった。

 だが、彼女の周囲には、ゆらゆらと光る人影がいくつも浮遊していた。

 人間ではない。高密度の魔力で構成された、半透明の精神体。

 長い耳と、透き通るような翼を持つ美しい存在。


「あれが……星霊種アストラル・スプライト


 レギナが息を飲む。

 星霊たちは、ルナを守るように囲み、俺たち侵入者に冷ややかな視線を向けていた。


『……去れ、人間よ』


 頭の中に直接響くような声。

 星霊の一人が、俺たちの前に立ちはだかる。


『ここは久遠の揺り籠。汚れた定命の者が足を踏み入れてよい場所ではない』


 強烈な拒絶の意思。

 空気がビリビリと震え、俺たちの肌を刺す。

 ただ立っているだけで、魂が削られそうなプレッシャーだ。


「……ルナに、会いに来たんです」


 俺は一歩前に出て、星霊を見据えた。

 声が震えそうになるのを、腹に力を入れて抑え込む。


「彼女は、俺たちの仲間です。……ちゃんと、お別れを言わせてほしい」


『仲間? 滑稽な。星霊と人間が交わることなどあり得ない』


 星霊は無慈悲に告げた。


『この子は迷子になり、穢れた下界に落ちてしまった哀れな同胞。我々が浄化し、再び「星の記憶」へと還す。……貴様らの出る幕ではない』


「浄化……? 記憶へ還すって、どういうことだ?」


 嫌な予感がした。

 ルナが、不安そうに俺を見ている。


『個としての自我を消し、世界樹の一部として統合するのだ。それが星霊の定め』


「ふざけるな!」


 俺は叫んだ。

 家に帰すために連れてきたんだ。消滅させるためじゃない。

 あの子は、笑ったり、怒ったり、たい焼きを半分こしたりできる、一人の「女の子」なんだぞ。


「ルナはデータじゃない! 生きてるんだ!」


『……理解不能な思考だ。排除する』


 星霊が手をかざす。

 周囲のマナが収束し、致死レベルの閃光が放たれようとしていた。


「全員防御を!」


 俺が指示を飛ばすと同時に、エルーカとレギナが前に出る。

 だが、相手は「星の管理者」の眷属。

 チートなしの俺たちで、果たして止められるか。


「……やめて!」


 その時。

 ルナが、星霊たちの前に飛び出した。

 小さな両手を広げ、俺たちを庇うように。


「ナオトたちを、いじめないで!」


 ルナの体から、眩い光が溢れ出す。

 それは星霊たちの光よりも強く、温かく、そして力強い輝きだった。


『……ルナ? その力は……』


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