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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第61話 錬金術師の誤算。 〜殺人兵器を「マシュマロ」に変えて、偽物商品はDRM魔法で一掃しました〜


 領主の館、地下最深部。

 そこは、狂気的な実験室だった。


 棚には無数の「偽物」が並び、部屋の中央には巨大な錬金釜が煮えたぎっている。

 その前で、一人の男が白衣を翻して振り返った。

 黒幕、錬金術師ガリウスだ。


「……ネズミが入り込んだか。警備は何をしている!」


 ガリウスが叫ぶが、誰も来ない。

 俺たちは悠々と部屋の中央に進み出た。


「無駄だよ。上の連中は全員寝てる」


 俺が言うと、ガリウスは顔を歪めた。


「貴様らか……! 私の崇高な『量産計画』を邪魔する愚か者は!」


「崇高? ただのコピー商品だろ。中身スカスカのゴミを売りつけて、職人のプライドとかないわけ?」


「黙れ! オリジナルなど不完全だ! 私の技術で上書きしたコピーこそが至高なのだ!」


 話が通じないタイプだ。

 ガリウスは狂ったように笑い、手元の魔導コンソールを操作した。


「見せてやろう! 侵入者を排除する鉄壁の防衛システムを!」


 ズズズズ……!


 部屋の四隅の床が開き、浮遊する巨大なクリスタル――『自律迎撃魔導砲』が出現した。

 クリスタルの先端が赤く輝き、高密度の魔力を収束させていく。


「消えろ! 灰になれ!」


 ヒュンッ、ヒュンッ!


 魔導砲から、灼熱の魔力弾がマシンガンのように連射される。

 まともに食らえば人体など蒸発する威力だ。


「危ないっ!」


 エルーカが前に出ようとするが、それより早くミサが動いた。

 彼女はタブレットを構え、余裕の笑みを浮かべている。


「そんな物騒なもの、この部屋には似合わないんじゃない!? ……『外観定義スタイルシート』起動!」


 ミサがペンを走らせる。

 彼女が書き換えたのは、迫りくる魔力弾の「属性」と「材質」だ。


「材質変更! 『高密度魔力』を『砂糖とゼラチン』に置換! 形状は『ふんわり』!」


 パチンッ!


 ミサが指を鳴らした瞬間、空中で魔力弾がポンッ、ポンッと弾け、白いふわふわした物体に変化した。


 ボフッ、ボフッ。


 俺たちの体に当たったのは、熱線ではなく、甘い香りのする柔らかい塊。


「……ま、マシュマロ?」


 エルーカが自分の頬に当たって落ちた白い塊を拾い上げる。

 ぷにぷにと柔らかい、特大のマシュマロだ。


「な、なんだとォォォッ!?」


 ガリウスが目を剥く。


「私の『灼熱弾』が、お菓子になっただと!? 馬鹿な、物理法則を無視している!」


「ふふん! 見た目と材質が変われば、物理的な衝撃値もゼロになるんです! これぞ『無害化デザイン』!」


 ミサが得意げにVサインを作る。

 論理的……なのか? まあ、結果オーライだ。


「くそっ、ならばこれだ! 行け、合成獣キメラ!」


 ガリウスがレバーを引くと、部屋の奥から巨大な檻がせり上がってきた。

 中にいたのは、獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ怪物。

 だが、その檻が開くよりも早く、俺の懐からリリスの声が響いた。


『マスター。部屋全体の制御権、掌握しました』


 リリスのホログラムが飛び出す。


「リリス、状況は?」


『部屋の魔力供給ラインをハッキング済みです。ガリウス、貴方の権限では、もうここから逃げることも、増援を呼ぶこともできません』


 リリスが告げると、部屋の扉という扉がガシャン! と音を立ててロックされた。

 完全な密室。袋の鼠だ。


「き、貴様ら……何なんだ一体!」


 追い詰められたガリウスは、最後の手段とばかりにキメラをけしかけた。


「殺せ! 食い殺せェェッ!」


 グルルルルッ!!

 キメラが檻を破り、飛びかかってくる。


「来ます!」


「フン、合成獣か。品がないな」


 エルーカとレギナが前に出る。

 ミサが後ろから声を飛ばした。


「エルーカちゃん、レギナっち! あいつ見た目がグロいから、可愛くしとくね!」


「えっ?」


 ミサが再びペンを振るう。


「テクスチャ変更! テーマは『ゆるふわ牧場』!」


 ボロンッ!


 凶悪だったキメラの姿が、一瞬でピンク色の「ブタさんのぬいぐるみ」のような姿に変わった。

 爪はフェルトに、牙は綿に。


「ブヒッ!?」


 キメラ自身も驚いて動きが止まる。


「あはは! これなら怖くないでしょ?」


「は、はい! 斬りやすいです!」


 エルーカが聖剣を一閃させる。


「『聖剣・十文字斬り』!」


 ズババッ!

 ぬいぐるみの胴体が裂け、中からキラキラしたエフェクトが舞い散る。


「トドメだ! 『氷結ハンマー』!」


 レギナが追撃の氷魔法を叩き込むと、キメラは悲鳴を上げる間もなく消滅した。


「ひぃぃっ……! 私の……私の最高傑作が、ぬいぐるみになって……!」


 ガリウスが腰を抜かす。

 攻撃も防御も完璧に封じられ、成す術がない。


「……さて。仕上げだ」


 俺はガントレットを展開し、一歩前に出た。

 ルナが背中にくっつき、俺の行動を隠蔽してくれている。

 これで、遠慮なく「本職」の仕事ができる。


「ガリウス。お前の作った偽物は、この街中に溢れ返ってる。……全部まとめて返品処理してやるよ」


「な、何を……」


 俺は空中にキーボードを走らせた。

 狙うのは、この街にある全ての商品のデータ。


DRM(デジタル著作権管理)導入。……本物には『電子透かし(タグ)』を焼き付ける。そして……」


『target: Area_Karen_All_Items』

『condition: No_Tag(条件:タグ無し)』

『action: Revert_Texture(実行:テクスチャ剥離)』


「タグのない偽物は、メッキを剥がす!」


 ッターン!!


 エンターキーを叩いた瞬間、世界が波打った。

 実験室の棚に並んでいた宝石や剣が、次々とボロボロと崩れ、ただの石ころや鉄屑に戻っていく。

 この波動は今、街中に広がっているはずだ。

 市場で、店先で、あるいは悪徳商人の倉庫で。偽物は全てゴミに戻る。


「あああ……! 私の……私の財産がぁぁぁ!!」


 ガリウスがゴミの山に埋もれて泣き叫ぶ。


『通報完了。憲兵隊が到着します』


 リリスが告げると同時に、入り口の扉が破られ、憲兵たちが踏み込んでくる音が聞こえた。


「一件落着ですね!」


 ミサがマシュマロを一つ拾って、ぱくりと口に入れた。


「よく食えるな……」


「美味しいでふよ?」


 俺たちは勝利を確信し、混乱する地下室を後にした。


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