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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第59話 錬金術師の自動生産ライン。 〜物理的にコンセントを抜けば、どんなハイテク機械も止まります〜


 カレンの市場で偽物が溢れかえる異常事態。

 俺たちは広場の隅で作戦会議を開いていた。


「効率的に動くぞ。二手に分かれる」


 俺は地図を広げて指示を出す。


「俺とルナは、市場で情報を集める。偽物を売りさばいている末端の商人を締め上げて、黒幕の正体と流通ルートを吐かせる」


 対人交渉(物理含む)と解析は、俺とルナのセットが最適だ。

 ルナがいれば、運営にバレずに詳細な魔力解析(スキャン)ができる。


「ミサ、エルーカ、レギナ。お前たちは『生産工場』を叩け」


「工場、ですか?」


 ミサが首を傾げる。


「ああ。これだけの量の偽物を短時間でばら撒くには、拠点となる製造ラインが必要だ。さっきの偽物から微弱な魔力残滓(ログ)を辿った。場所は、街外れの廃倉庫街だ」


 俺は地図上のポイントを指差す。


「ミサ。今回はルナがいないから、お前のスキルは使えない。だが、お前の知識があれば、魔導具の構造を見抜いて止めることはできるはずだ。工場のシステムを物理的に停止させてくれ」


「了解です! スキルがなくたって、工具一本あれば十分です! 先輩や能力に頼らなくてもやれるってところ、見せてやりますよ!」


 ミサが頼もしく工具袋を担ぐ。

 エルーカとレギナも、やる気満々で武器を確認した。


「任せてください師匠! 悪い奴らのアジト、壊滅させてきます!」


「フン、雑魚掃除か。準備運動にはちょうどいい」


「よし、作戦開始だ」


 俺たちは頷き合い、左右に分かれて走り出した。


 ◇


 廃倉庫街は、不気味な静寂に包まれていた。

 カビと錆の匂いが漂う路地裏を、三人は慎重に進んでいく。


「……ここね。魔力駆動の音が聞こえる」


 ミサが耳を澄ませて足を止める。

 目の前には、窓が板で塞がれた巨大な石造りの倉庫があった。

 入り口には頑丈な南京錠と、簡易的な魔導ロックがかかっている。


「ミサさん、どうします? 私が斬りましょうか?」


 エルーカが剣に手をかけるが、ミサは首を横に振った。


「ダメダメ。大きな音を出したら奇襲にならないよ。……ここはアナログに行きましょう」


 ミサは工具袋から針金のようなツールを取り出した。

 前世で覚えたわけではない。この世界で一人旅をする中で身につけた、サバイバル技術の一つだ。


「魔導ロックの回路は……ここが動力源みたい。配線を切ればただの鉄屑」


 パチン。

 ニッパーで魔力線を切断すると、ロックの光が消える。

 続けて南京錠の穴にツールを差し込み、カチャカチャと弄る。


 カチリ。


「はい、いっちょ上がり!」


「おおっ! ミサさん、手先が器用ですね!」


「伊達に苦労してないからねー」


 三人は音もなく扉を開け、中に滑り込んだ。

 倉庫の中には、異様な光景が広がっていた。


「な、なんですかこれは……!?」


 エルーカが息を飲む。

 広い空間には、歯車とピストンで動く無骨な魔導装置が何列も並び、ガシャン、ガシャンと規則的な音を立てて稼働していた。


 ベルトコンベアの代わりに、小さな使い魔(ゴーレム)たちが列をなし、石ころや木の棒を運んでいる。

 それらが装置の中を通過すると、錬金術の光を浴びて、一瞬で「宝石」や「ミスリルの剣」に姿を変えて出てくるのだ。


「自動生産ライン……! これ、全部偽物を作るための機械!?」


 ミサが観察する。

 ハイテクな工場ではない。既存の錬金術釜を並列に繋ぎ、自動化の術式で無理やり動かしている、つぎはぎだらけのシステムだ。


「『表面変質テクスチャ・マッピング』の応用か。物質の表面数ミクロンだけを別の物質に錬成して、さらに認識阻害の幻術を重ねがけしている……。やってることは詐欺だけど、量産化の発想は凄い」


「感心している場合ではないぞ。客人が来たようだ」


 レギナが警告する。

 倉庫の奥から、警備用の自律ゴーレムたちが起動し、こちらに向かってきていた。

 その数、およそ30体。


「排除……排除……」


 無機質な声を上げて迫る鉄の塊たち。


「エルーカちゃん、レギナっち! やっちゃって!」


「はいっ! みなさん、下がっていてください!」


 エルーカが聖剣を抜き、疾風のように駆け出す。

 先頭のゴーレムの懐に潜り込み、下から切り上げる。


「『聖剣・斬鉄』!」


 ズバァァン!

 硬いはずの装甲が、紙のように斬り裂かれる。


「援護する! 『氷結散弾アイス・ショットガン』!」


 レギナが扇子を振るうと、無数の氷の礫が放たれ、後続のゴーレムたちの関節を正確に撃ち抜いた。

 動きが止まったところを、エルーカが次々と各個撃破していく。


「すごい……! 二人とも、息ぴったり!」


 ミサは感嘆しつつ、自分も動く。

 彼女の戦場は、敵ではなく「生産ライン」だ。

 スキルは使えない。だが、仕組みが分かれば壊すのは簡単だ。


「こんなふざけた機械、止めてやるんだから!」


 ミサは制御盤らしき魔導装置に駆け寄った。

 歯車が噛み合い、魔石が光っている。


「構造解析……動力源はここね。そして、この魔力パイプが冷却用っと」


 彼女はスパナを取り出し、主要なボルトを緩めにかかった。

 さらに、魔力供給の要となる水晶を、バールで強引にこじ開ける。


「悪いけど、強制終了(シャットダウン)よ!」


 ガキンッ!

 水晶を引っこ抜くと、装置全体からバチバチッと火花が散り、歯車の回転が止まった。


「ライン停止確認! 次!」


 ミサは倉庫内を走り回り、次々と装置を物理的に無力化していく。

 襲いかかる警備ゴーレムは、エルーカとレギナが完璧にシャットアウトしていた。


「ミサさん、危ない!」


 天井から降ってきた小型ドローン(飛行型魔導具)を、エルーカがジャンプして叩き斬る。


「サンキュ、エルーカちゃん!」


「ふふっ、ミサさんの背中は守りますから、思う存分壊してください!」


 互いに背中を預け、得意分野で暴れ回る。

 ナオトがいなくても、チート能力がなくても、彼女たちは十分すぎるほどに強かった。


 ◇


 一方、市場の裏路地。

 俺は一人の男を壁に追い詰めていた。

 偽の宝石を売りさばいていたブローカーだ。


「ひぃぃっ! 許してくれ! 俺はただ、商品を預かって売ってただけなんだ!」


 男が腰を抜かす。


「誰から預かった? 名前を言え」


 俺が冷たく見下ろすと、男は震えながら口を開いた。


「ガ、ガリウス……。『錬金術師ガリウス』だ! 奴がこの偽物を作ってる!」


「ガリウス……?」


 聞き覚えのない名前だが、錬金術師か。

 やはり、転生者絡みじゃない。現地の悪党だ。


「奴は天才なんだ! 『薄皮一枚の真実(スキン・レイヤー)』っていう独自の理論で、どんなゴミでも宝石に変えちまう! ギルドを追放された異端児だが、腕だけは確かで……」


「なるほどな。技術の使い道を間違えた馬鹿ってわけか」


 俺は男を拘束し、ため息をついた。

 技術そのものに罪はないが、それを使って人を騙す奴はエンジニアの風上にも置けない。


「わるいひと?」


 俺の背中で、おんぶされていたルナが顔を出す。


「ああ。とっても悪い大人だ。……ルナ、こいつの魔力反応、覚えておけるか?」


「ん。おぼえた。……あっちから、おなじにおいがする」


 ルナが小さな指で指し示したのは、街の中心部――領主の館がある方角だった。


「……んん?まさか、領主もグルか?」


 あるいは、ガリウスという男がそこにいるのか。

 どちらにせよ、根は深そうだ。


「行くぞルナ。ミサたちとも合流して、カチ込みだ」


「ん! こらしめる!」


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