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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第49話 拾った幼女は「歩くセキュリティホール」でした。 〜彼女の側なら、運営にバレずにチート使い放題!?〜


 オークション会場での騒動から数時間後。

 俺たちは無事に拠点へと帰還していた。


 深夜のオフィス。

 普段なら仕事に追われる俺のデスクチェアには、今、小さな先客が座っていた。

 ……というか、座っている俺の膝の上に、ちょこんと収まっていた。


「……あのな、ソファ広いぞ? そっち座ったらどうだ?」


「やだ。ここがいい」


 銀髪の少女は、俺の胸に頭を預けて首を振った。

 華奢な体が、俺の体温を求めるように密着している。

 助け出した直後だから不安なのは分かるが、完全に懐かれてしまったようだ。


「ぐぬぬ……。あそこは私の指定席だったはずなのに」


「師匠の膝の上……子供の特権ですね。羨ましいです」


 レギナとエルーカが、少し離れたところから羨ましそうに見ている。

 張り合うな。


「さて、改めて自己紹介しようか。俺はナオト。ここの店主だ」


「ナオト」


 少女が復唱する。


「こっちはミサ、エルーカ、レギナだ」


「ミサ、エルーカ、レギナ」


 彼女は一人一人を指差して名前を呼んだ。

 呼び捨てだ。どうやら彼女の中には、人間社会の上下関係や敬称という概念がないらしい。


「それで、君の名前と、家を教えてくれるか?」


 俺が優しく尋ねると、彼女は少し考えてから名乗った。


「名前は……ルナーリエ・アズライト・ミスティルテイン・アウローラ・ファンタズマ」


「……長いな。略してルナでいいか」


「家は、きたのほう。『久遠の揺り籠エターナル・クレイドル』」


 聞き慣れない地名だ。

 だが、その名前を聞いた瞬間、レギナが息を飲んだ。


「久遠の揺り籠だと……!? 伝説に聞く、世界樹の根元にあるという聖域か?」


「知ってるのか?」


「人間はもちろん、魔族さえも立ち入れない絶対不可侵領域だ。そこに住まうのは、世界のマナそのものから生まれたと言われる高位種族……」


 レギナが、信じられないものを見る目でルナを見つめた。


「『星霊種アストラル・スプライト』。……まさか、実在していたとは」


「せいれいしゅ?」


 ミサが首を傾げる。


精霊スピリットよりも上位の存在だ。星の記憶を管理するとも言われている。……なるほど、オークションであれほどの値がついたわけだ」


 星霊種。

 俺の眼鏡の解析でも、彼女の構成データは人間とは全く異なっていた。

 肉体というよりは、高密度の魔力情報の塊。プログラムで言えば、OS直下の「システムファイル」に近い存在感だ。


「……ナオト。おうち、かえりたい」


 ルナが俺の服をギュッと掴む。


「ああ、分かってる。必ず送り届けるよ」


 俺は彼女の頭を撫でた。

 だが、問題はどうやって行くかだ。

 北の果てまでは、通常の旅路なら数ヶ月はかかる。

 俺たちが持っている移動手段《ハイエース改》を強化したいところだが、今の俺たちは「運営」に監視されている。

 派手な改造チートは使えない。


「……さて、どうするか」


 俺は考えながら、懐からオークションで手に入れた魔石『星の心臓』を取り出した。

 まずはこいつの状態を確認しておこう。

 俺は無意識に、いつもの癖で「詳細解析ディープ・スキャン」を行おうとして――ハッとした。


(しまっ……! 解析コマンドは監視対象だ!)


「先輩ッ! 何して……!」


 ミサが慌てて止めようとしたが、もう遅い。

 俺の指先が空中のウィンドウを叩き、深層解析のコードが走ってしまった。


『Scanning target... Complete.(スキャン完了)』


 詳細なデータがHUDに表示される。

 ……しまった。これで運営に位置がバレた。

 即座にBAN(消去)の雷が落ちてくるはずだ。


 俺は身構え、天井を見上げた。


「…………?」


 来ない。

 何も起きない。

 警報も鳴らなければ、リリスからの警告もない。


「……おいリリス。今の、検知されたか?」


 俺が恐る恐る呼びかけると、リリスのホログラムが現れた。


『いえ、マスター。今のスキャンログ、監視網に引っかかっていません。……というより、ここ一帯の通信が「透明化」されています』


「透明化?」


『はい。まるで強力な「ホワイトリスト(許可設定)」の中にいるような……。マスター、その原因は』


 リリスの視線が、俺の膝の上に向けられる。

 ルナだ。

 彼女が俺に密着している部分から、淡い光の波紋が広がっている。

 その光が、俺が展開したウィンドウを優しく包み込み、外部への信号漏洩を完全に遮断(マスク)していた。


「……まさか、ルナ。お前が隠してくれてるのか?」


「ん。ナオトの魔法、きれいだから。かくしてあげた」


 ルナが無邪気に笑う。

 俺は戦慄した。

 星霊種。星の記憶を管理する種族。

 彼女自身の存在が、この世界のシステムにとって「絶対的な肯定(承認コード)」として機能しているのかもしれない。

 だから、彼女の側にいれば、どんな不正なコードも「正規の処理」として誤認させることができる。


「……歩くセキュリティホールかよ」


 とんでもないチートだ。

 俺の「管理者権限」がシステムを強引に書き換える力なら、ルナの存在はシステムそのものを騙して黙らせる力だ。


「おいミサ! ちょっと試しにスキル使ってみろ! 派手なやつ!」


「えっ? いいんですか? BANされたら死ぬんですよね?」


「いいからやれ! 責任は俺が持つ!」


「じゃあ……もし死んだら(BANされたら)、新しい世界にも転生して来て、()()取ってくださいね! 『外観定義:部屋全体をファンシーなピンク色に変更』ッ!」


 ミサがタブレットを操作すると、オフィスの壁紙が一瞬でショッキングピンクに変わった。

 大規模なテクスチャ改変。普段なら即アウトな処理だ。


 だが、何も起きない。

 空からの雷撃も、警告音もない。


「……うそ。バレてない?」


 ミサが目を丸くする。


「確定だ。ルナが近くにいる限り、俺たちは運営の監視をすり抜けられる」


 俺は膝の上のルナを抱きしめたくなった(変な意味じゃなく)。

 これで、手詰まりだった状況が一気に打破できる。


「よーし! これなら何でもありだ!」


 俺はガントレットを展開し、ニヤリと笑った。


「ミサ、ワゴンの改造プランを書き直せ。長旅仕様どころじゃない、空も飛べるくらいの『超・魔導車両』を作るぞ!」


「了解です! エンジン出力500%アップで設計し直します!」


「エルーカ、レギナ。お前らの装備もフル強化してやる。この旅で、俺たちは最強の準備を整えるんだ」


 ルナを『久遠の揺り籠エターナル・クレイドル』に送り届ける旅。

 それは同時に、俺たちが再び「最強の力」を取り戻し、神への反逆の準備を整えるための、最高の機会となった。


「……ナオト、うれしそう」


 ルナが俺の顔を見て、くすりと笑う。


「お前のおかげだ、ルナ」


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