第46話 指名手配された管理者。 〜チート能力使用禁止!? 最弱になった俺たちの、闇オークション潜入作戦〜
リリス奪還作戦から一夜明けた、拠点のオフィス。
勝利の余韻に浸る間もなく、俺たちは深刻な顔でモニターを囲んでいた。
『……というわけで、現状は「詰み」の一歩手前です』
リリスが淡々と告げる。
空中に表示されているのは、王都上空の魔力分布図だ。
そこには、俺たちの拠点「何でも屋」を中心として、真っ赤な警告マーカーが無数に点滅していた。
「……これ、全部監視の目か?」
『はい。昨日の電脳空間での戦闘で、マスターとミサさんの「個体識別波長」が完全に運営側に割れました』
リリスが、首を横に振る。
『現在、運営システムは最高レベルの警戒態勢に入っています。もし今後、マスターたちが「管理者権限」や「世界改変スキル」を行使した場合……』
「した場合?」
『その瞬間に座標を特定され、対消滅魔法による「即時削除」が実行されます。猶予はありません。0.1秒で蒸発です』
俺は息を飲んだ。
つまり、今までのような「気に入らないから削除」「不便だから書き換え」というチート技が封じられたということだ。
使った瞬間、ゲームオーバー。
「うわぁ……。私たち、世界から指名手配されちゃったってことですか?」
ミサが青ざめる。
「そういうことだ。これからは、ただの人間として振る舞うしかない。……面倒なことになったな」
俺は眼鏡を外して揉んだ。
消えた街「レイクサイド」を元に戻すには、次元の狭間にある運営サーバーへ行き、バックアップデータを復旧させなきゃならない。
だが、そのためのゲートを開くのにも、莫大な魔力操作が必要だ。
そんなことをすれば、一発で感知されて消される。
「待て。では、どうやって運営の元へ行くのだ? 手詰まりではないか」
レギナがもっともな疑問を口にする。
「……方法はある」
俺は顔を上げた。
「俺自身の魔力を使わずに、ゲートを開けばいい。外部バッテリー……つまり、純度100%に近い『賢者の石』クラスの魔石を使って、回路を駆動させるんだ」
それなら、俺のIDは検出されない。
ただの自然現象として偽装できる。
「ですが師匠、そんな凄い魔石、どこにあるんですか? 国宝級ですよ?」
エルーカが首を傾げる。
そう、そこが問題だ。
普通に買えば国家予算が吹き飛ぶ。そこらの冒険者ギルドの報酬でちまちま稼いでいては、100年経っても買えやしないだろう。
その時、リリスがポンと手を打った。
『検索しました。……一件だけ、該当する魔石の反応があります』
モニターの地図が切り替わる。
表示されたのは、王都の裏街にある、大きな屋敷だった。
『明日、この場所で非合法の「闇オークション」が開催されます。その目玉商品として、古代遺跡から発掘された『星の心臓』が出品される予定です』
「闇オークション、か……」
俺はニヤリと笑った。
正規のルートじゃないなら、好都合だ。
犯罪者同士の取引なら、多少強引な手段を使っても心が痛まない。
「よし、決まりだ。その魔石をいただくぞ」
「いただくって……先輩、お金ないですよ? 入札で勝てるわけないですよ」
ミサがジト目で見てくる。
「誰が金で買うと言った? ……『押収』だ」
俺は悪い顔で笑った。
「今回の敵は犯罪組織だ。ついでに悪事の証拠も掴んで、ギルドに突き出してやれば報奨金も出る。何でも屋としての名も上がって依頼もバンバン舞い込む。一石二鳥だろ?」
「うわ、悪っ。……でも、今回はチート禁止ですよ? どうやって潜入するんですか?」
「だから、お前たちの出番だ」
俺はエルーカとレギナを見た。
「俺とミサは、今回はただの『一般人』だ。派手な魔法も、物理無効化も使えない。……だから、お前たちが頼りだ。俺たちを守って、魔石までの道を切り開いてくれ」
俺の言葉に、二人の表情が引き締まった。
今までは「サポート」だった。
だが今回は違う。彼女たちが主戦力だ。
「……任せてください! 師匠は私が守ります!」
エルーカが聖剣を抱きしめる。
「フン。ようやく私の本領発揮というわけか。……安心しろマスター。貴方には指一本触れさせん」
レギナが不敵に笑う。
「よし。作戦開始だ」
俺たちは地図を囲み、詳細なプランを練り始めた。
チートなし、管理者権限なし。
頼れるのは、仲間の力と、エンジニアとしての知恵だけ。
これは、最強から最弱(?)に転落した俺たちの、初めての「命がけの冒険」だ。
消えた街を取り戻すため、まずは悪徳商人たちの宴をぶっ壊しに行く。




