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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第44話 電脳の海と、強制アップデートの罠。 〜「更新プログラムを構成中」画面で敵をフリーズさせる〜


 電脳空間サイバー・スペース

 そこは、物理法則から解き放たれた、0と1の情報の海だ。


『Exclude... Exclude...(排除……排除……)』


 数体の『天使型セキュリティ』が、光の翼を広げて襲いかかってくる。

 奴らの手にある光の剣は「データ削除(デリート)」の概念そのものだ。掠っただけで、俺たちのアバター(精神)の一部が削り取られる。


「先輩! 右から来ます!」


「見えてる!」


 俺は空中にキーボードを展開し、防御壁(ファイアウォール)を構築する。

 天使の剣が障壁に激突し、火花のようなノイズが散る。


「くっ、硬いな……! さすが運営直属のセキュリティだ!」


 こちらの攻撃(ウイルス)が通じない。

 奴らは常に最新の「定義ファイル」で守られており、既知の攻撃パターンを全て無効化してくる。


『Target Analysis: Malware. Execution of Purification.(対象解析:マルウェア。浄化ヲ実行)』


 天使たちが円陣を組み、巨大な光の柱――極大消去魔法のチャージを始めた。

 あれを食らえば、俺たちの精神データなんて一瞬で藻屑になる。


「マズいですね……。まともにやり合ってもジリ貧かも」


 ミサがタブレットを構えながら脂汗を流す。


「だな。真正面から突破するのは無理だ。……なら、搦め手で行くぞ」


 俺は眼鏡を押し上げ、ニヤリと笑った。

 どんなに堅牢なシステムにも、必ず「隙」はある。

 特に、ルール通りに動く真面目なプログラムほど、想定外の挙動には弱い。


「ミサ。あいつらの視界(UI)をハックできるか?」


「それはもちろんできますけど……まさか先輩、アレをやる気ですか?」


「ああ。PCユーザーなら誰もが絶望する、あの『最強のトラップ』をお見舞いしてやる」


 俺の意図を察したミサが、悪戯っぽく笑う。

 俺たちは同時に動き出した。


「あらら、ご愁傷さま! 『強制ポップアップ』!」


 ミサがペンを振るう。

 すると、天使たちの目の前に、視界を覆い尽くすほどの巨大なウィンドウが出現した。


『更新プログラムの準備ができました』

『今すぐ再起動してインストールしますか?』


 パソコンを使っている最中、一番いいところで出てくるアレだ。

 しかもミサの性格の悪さが遺憾なく発揮されており、『いいえ』や『後で』のボタンが存在しない。

 画面いっぱいに『はい(今すぐ再起動)』のボタンだけが表示されている。


『Error...!? Window obstruction...(エラー……!? ウィンドウ障害……)』


 天使たちが動揺し、チャージが中断される。

 視界を塞がれ、攻撃目標を見失ったのだ。


「今だ! バックグラウンドで重いパッチを流し込め!」


 俺はその隙を見逃さない。

 ガントレットを最大出力で叩き、天使たちのシステム内部に侵入する。


『command: System_Update(システム更新)』

『priority: High(優先度:高)』

『progress: 1%... 1%... 1%...(進捗:1%で固定)』


 俺が送り込んだのは、終わらない更新プログラムだ。

 天使たちの処理能力(CPU)を強制的に「アップデート処理」に向けさせ、戦闘機能を停止させる。


『Update initiated. Do not turn off power.(更新ヲ開始シマス。電源ヲ切ラナイデクダサイ)』


 天使たちの動きがピタリと止まった。

 頭上にグルグルと回る「読み込み中(ローディング)」のアイコンが表示される。

 こうなれば、もう手出しはできない。完了するまで彼らはただの置物だ。


「やった! 再起動ループに入りました!」


「へっ、ざまあみろ。仕事中の強制アプデの恐ろしさ、思い知ったか」


 俺たちは動かなくなった天使たちの横をすり抜ける。


 ◇


 セキュリティを突破し、俺たちはさらに深層へと進んだ。

 そこは、光のコードで構成された鳥籠のような空間だった。


 その中央に、彼女はいた。


「……リリス!」


 光の鎖に繋がれ、うなだれている小さな少女。

 俺たちの声に、彼女がゆっくりと顔を上げる。


『……マ、スター……?』


 その瞳は赤く明滅し、ノイズが走っていた。

 意識があるのかどうかも怪しい。


「待ってろ、今助ける!」


 俺が駆け寄ろうとした瞬間、リリスの口が勝手に動き、無機質な声を紡いだ。


『Warning. Approach prohibited.(警告。接近ヲ禁止スル)』

『I am the guardian of the core.(私ハ、中枢ノ守護者)』


 ザザッ!

 リリスの周囲に膨大な魔力が渦巻き、彼女の背中から黒い翼が生えた。

 アバターが強制的に「戦闘モード」に書き換えられている。


「先輩! リリスちゃんの制御権、完全に奪われてます!」


「……クソッ、運営の野郎、リリスを番犬代わりにしやがって!」


 俺は歯を食いしばる。

 リリスが、俺たちに(てのひら)を向ける。

 そこには、さっきの天使たちとは比較にならない、高密度の消去魔法が収束していた。


『Target locked. Deletion start.(対象ロック。削除開始)』


「リリス! 目を覚ませ! 俺だ、ナオトだ!」


 俺の叫びも虚しく、閃光が放たれる。


「くっ……『絶対防御(シールド)』!」


 ミサが前に出て、タブレットで防壁を展開する。


 ドォォォォン!!


 衝撃で俺たちは吹き飛ばされた。


「……強い。俺がハイスペックに作りすぎたのが裏目に出てる」


 俺は苦笑いしながら立ち上がる。

 リリスの演算能力は、この世界でもトップクラスだ。それを敵に回すということは、自分自身と戦うに等しい。


「どうします先輩? リリスちゃんを壊すわけには……」


「……強引に『再インストール』するぞ」


 俺はガントレットを構え直した。

 リリスの筐体(ハード)にある「運営用のバックドア」を物理的に塞ぎ、俺のOSで上書きして正常化する。

 そのためには、彼女の懐に飛び込み、直接触れる必要がある。


「ミサ。リリスの攻撃パターン、お前なら読めるだろ?」


「楽勝です。先輩の『()』がそのまま入ってますからね!」


「よし。お前がリリスの攻撃を誘導して、隙を作ってくれ。その一瞬に俺が飛び込んで、接続(コネクト)する!」


「行くぞ! 反抗期は終わりだリリス!」


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