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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第39話 管理者権限 vs 世界改変。 〜お前のチート設定、全部「初期値《デフォルト》」に戻してやるよ〜


 カケルが変身した巨大な機械巨人(ポリゴン・ロボ)

 その圧倒的な質量の拳が、俺たちめがけて振り下ろされる。


「1箇所に集まるなッ!」


 ドゴォォォォォン!!


 俺の指示と同時に全員が飛び退く。

 床のグリッドが砕け散り、衝撃波が空間を歪ませる。


『ハハハッ! 逃げ回るだけですか先輩! この「神の体」の前では無力でしょう!』


 巨人の胸部にあるコアから、カケルの声が響く。


「神だか何だか知らんが、趣味の悪いアバターだな!」


 俺はガントレットを展開し、解析コードを走らせる。

 だが、弾かれた。


『Error: Access Denied. Object is protected by "Game_Master".(アクセス拒否。対象はGM権限により保護されています)』


「チッ、自分のデータに『変更不可リードオンリー』属性をつけてやがる!」


 これではステータスをいじれない。

 カケルは勝ち誇ったように笑う。


『無駄ですよ。今の僕は無敵だ』


 巨人の目が、俺を捉える。


『こんなもんですか? ガッカリだなぁ! 美咲先輩から「工藤先輩はすごかった」「あの人は天才だった」って聞かされてたから楽しみにしてたのに!』


「……ミサが?」


 俺は視線をミサに向けた。

 ミサは気まずそうに目を逸らしている。


『でも、実際はどうですか? ただ会社に使い潰されて、過労死した負け犬だ! 僕に手も足も出ない!』


 カケルが叫ぶ。


『僕はあなたとは違う! この世界に来た時、誓ったんです! ルールに従う側じゃなく、ルールを作る「神」になるんだって!』


「……なるほどな。それが、罪のない人々を巻き込んで、バグだらけの実験を繰り返す理由か」


 俺は眼鏡のブリッジを押し上げた。

 こいつはムカつくクソガキだが、言ってることは理解できる。

 現実世界で認められなかった承認欲求を、この異世界で暴走させているだけのただのガキだ。


「おいミサ。あんな奴にお前の後輩を名乗らせといていいのか?」


「……いいわけないです!」


 ミサがタブレットを構え、叫んだ。


「カケル君! 君には才能があると思ってたのに……。こんなことに力を使うなんて、最低ね!」


『うるさい! 美咲先輩(あんた)も、工藤先輩(あいつ)と一緒に消えちゃえ!』


 巨人の胸部コアが赤く輝き、膨大な魔力が収束していく。

 広範囲殲滅魔法だ。発動すれば、この空間ごと俺たちは消滅する。


「させねぇよ。……ミサ! あいつの『足場』を崩せるか!?」


「やります! あんな奴、顔も見たくないんで!」


 ミサがタブレットにペンを叩きつける。


「地形データ上書き! 『床』属性を『泥沼スワンプ』に変更!」


 ズブブブブ……!


 巨人の足元の床が、突如として粘度の高い泥沼に変わった。

 巨大な質量が仇となり、カケルの体が沈んでいく。


『なっ……小賢しい! こんなもの!』


 カケルが空を飛ぼうとスラスターを噴射する。

 だが、そこへレギナとエルーカが突っ込んだ。


「逃がすか! 『氷結鎖アイス・チェーン』!」


 レギナが無数の氷の鎖を放ち、巨人の手足を泥沼に縫い止める。


「今です! 『聖剣・断空』ッ!」


 エルーカが跳躍し、巨人の背中にあるスラスターを一刀両断した。

 プスンッ、と煙を上げて飛行機能が停止する。


『ぐあああっ! 離せぇぇぇッ!』


「俺はお前を知らないがな、カケル」


 俺は巨人の目の前に躍り出た。

 ガントレットからケーブルを射出し、巨人の装甲の隙間にある「外部端子」に無理やり突き刺す。


「お前みたいな、自分一人で世界を回せると勘違いしてる馬鹿は、前世でも腐るほど見てきたんだよ!」


 ――物理接続ハードウェア・コネクト


『うぐっ!? 僕の中に……!?』


「見つけたぞ、カケル。お前の『GM権限』の認証キー!」


 脳内に流れ込む膨大なデータストリーム。

 カケルは自分のステータスをロックしているが、そのロックを管理している「認証サーバー」自体は、この空間のシステムを使っている。

 なら、そこを叩けばいい。


「リリス! 認証バイパスを構築しろ! 俺の権限を『スーパーユーザー』に偽装する!」


『了解! セキュリティ突破……残り3秒!』


『やめろ! 僕のデータをいじるなァァァッ!』


 カケルが暴れるが、泥と氷に拘束されて動けない。

 俺は左手のキーボードを、指が残像になるほどの速度で叩き続けた。


『Authentication: Success.(認証成功)』

『Admin Mode: ON(管理者モード起動)』


 俺の視界に、巨人の全てのパラメータが表示される。

 無敵設定、攻撃力無限、HP固定……ふざけたチートの山だ。


「ゲームオーバーだ、カケル。……お前のチート、全部『無効化オフ』にするぞ」


 俺は最後のコマンドを打ち込んだ。


『Execute: Restore_Default_Settings(初期設定に戻す)』


 ッターン!!


 強烈なエンターキーの音が響いた瞬間。

 巨人の体を覆っていた金色のバリアが霧散し、赤く輝いていたコアの光が消滅した。


『あ、あれ……? 力が……抜ける……?』


 カケルの困惑した声。

 巨人の装甲がボロボロと剥がれ落ち、ただの鉄屑へと変わっていく。


「今だ! 全員で畳み掛けろ!」


「はいっ! 『聖剣・エクスカリバー』!」

「『終焉の氷河ニブルヘイム』!」

「『デリート・コマンド』! 消えちゃえ!」


 エルーカの極大の光、レギナの絶対零度、そしてミサが描いた消去ビーム。

 三つの必殺技が同時に直撃する。


『いやだ……嫌だぁぁぁぁぁっ!! 僕は神だ! 主人公なんだ! こんなところで……!』


 カケルの絶叫が響く。

 だが、その声も爆発音にかき消され――。


 ドォォォォォォン!!


 巨大な爆発と共に、機械巨人は跡形もなく消滅した。


 ◇


 煙が晴れると、そこには半透明になりかけたカケルが倒れていた。

 アバターの維持ができなくなり、魂だけの存在になりかけている。


「……チート使って負ける気分はどうだ?」


 俺が見下ろすと、カケルは虚ろな目で天井を見ていた。


「……なんでだよ。僕の方が……才能も、スキルも、上だったのに……」


「簡単なことだ」


 俺は静かに告げた。


「お前は一人で『神様ごっこ』をしてただけだ。俺たちは『チーム』で仕事をした。……システム開発はな、一人じゃできないんだよ」


 カケルが視線を動かし、俺の後ろに立つミサ、エルーカ、レギナを見る。

 そして、自嘲気味に笑った。


「……ハハ。美咲先輩の言ってた通りだ。工藤先輩は……すげぇや……」


 カケルの体が、光の粒子となって崩れ始める。

 消滅の間際、彼は俺を睨みつけ、最期に不穏な言葉を遺した。


「……勝ったと思うなよ、工藤先輩。僕はただの『プレイヤー』だ。……この世界には、『運営(アドミニストレータ)』がいる」


「運営……?」


「気づいてないのか? この世界自体が……もう『サービス終了(サシュウ)』に向かってるってことに……」


 言い残し、カケルは完全に消滅した。

 後に残ったのは、静寂と、不気味な予言だけ。


サービス終了(サシュウ)……?」


 ミサが不安そうに呟く。

 俺は崩れゆくダンジョンの天井を見上げた。


 カケルを倒しても、まだ終わらない。

 いや、むしろこれが始まりなのかもしれない。

 このバグだらけの世界の、本当の真実に触れるための。


「……帰ろう。みんなが待ってる」


 俺は振り返り、仲間たちに笑いかけた。

 先のことは分からない。

 だが、このチームなら、どんな無理ゲーでもクリアできるはずだから。



 第2章、完結。


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