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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第36話 Tポーズの住民と、無限湧き《インフィニット・スポーン》。 〜処理落ち(ラグ)が酷いので、描画範囲を制限して軽くしました〜


 ゲートを抜けた先に広がっていたのは、奇妙な「街」だった。


「……なんですか、これ。作りかけですか?」


 ミサがスクーターの上で呆れた声を出す。

 無理もない。

 建物はどれも「豆腐」のような真っ白な直方体で、テクスチャ《色や模様》が貼られていない。

 地面は紫と黒の市松模様。空には太陽の代わりに「ERROR」という巨大な文字が浮かんでいる。


「開発中のテストマップみたいだな。……おい、あれ見ろ」


 俺が指差した先には、街の住人らしき人影があった。

 だが、その姿は異様だった。

 両手を水平に広げ、直立不動のまま、地面を滑るように移動している。


「うわっ……なんですかあのポーズ。呪いでしょうか?」


 エルーカが気味悪そうに身震いする。


「『Tポーズ』だな。キャラクターの3Dモデルにおける初期姿勢(デフォルト)だ。アニメーションの設定が読み込まれてないせいで、棒立ちのまま動いてるんだよ」


 俺が説明するが、不気味なことには変わりない。

 Tポーズの群衆が、無表情で街を滑走している光景は、シュールを通り越して超絶ホラーだ。


「マスター。奴ら、敵意はあるのか?」


 レギナが杖を構える。


「今のところは中立(ニュートラル)だな。攻撃判定もな……ッ!?」


 俺が言いかけた瞬間、Tポーズの男が突如として「巨大化」し、首がゴムのように伸びてこちらを睨んだ。


『ヌルポ……ガッ……』


 意味不明な音声を残し、男の首がねじ切れるように消失する。


「ひぃっ!? く、首が飛びましたよ!?」


「バグだ。モデルの頂点座標が狂って、ポリゴンが破綻したんだ。……関わるな。触るとこっちまでバグりそうだ」


 俺たちは極力、住人たちを避けて大通りを進んだ。

 目指すは、街の中央にそびえる巨大な塔。

 あそこがこのダンジョンの制御中枢だろう。


 だが、そう簡単に通してはくれないらしい。


 ザザッ……!


 前方の空間がノイズ混じりに歪み、無数の影が現れた。

 黒い鎧を着た騎士たちだ。だが、その数は尋常ではない。


「……10、20……いや、増えてる!?」


 エルーカが叫ぶ。

 騎士の一人が分裂するように「コピペ」され、一瞬で通りを埋め尽くすほどの大軍勢となった。

 百、いや千はいるかもしれない。


「『無限増殖インフィニット・スポーン』かよ。……おいクラッカー、メモリの無駄遣いもいい加減にしとけよ!」


 俺は空に向かって怒鳴った。

 これだけのオブジェクトを一度に表示すれば、当然、処理落ちが発生する。

 視界がカクつき、動きが重くなる。


『Warning: Frame Rate Dropping...(警告:フレームレート低下)』


 リリスの警告通り、世界の動きがスローモーションのように重くなってきた。

 このままじゃ、フリーズして動けなくなる。


「エルーカ! レギナ! 範囲攻撃で数を減らせ! 処理を軽くするんだ!」


「は、はいっ! 『聖剣・旋風斬ワールウィンド』!」


「『氷結波動フロスト・ウェーブ』!」


 二人が必殺技を放つ。

 数十体の騎士が吹き飛び、消滅する。

 だが、消えた端から、倍の数になって湧いてくる。


「キリがないぞ! 倒しても倒しても湧いてくる!」


スポーン地点(発生源)を潰さないとダメか……!」


 俺は眼鏡で発生源を探すが、敵の数が多すぎて視界が埋まり、特定できない。

 その間にも、処理落ちは加速していく。

 俺の手が、コマ送りのようにしか動かない。


「くっそラグい……! これじゃコマンドも打てねぇ……!」


「先輩! 私に任せてください!」


 ミサがスクーターから飛び降り、タブレットを構えた。


「敵が多すぎて重いなら、『見えなく』しちゃえばいいんです!」


 彼女はペンを高速で走らせ、視界いっぱいに巨大な枠線を描いた。


「『描画範囲レンダリング・ディスタンス』変更! 半径10メートル以遠のオブジェクトを『非表示(カリング)』設定!」


 パチンッ!


 ミサが指を鳴らした瞬間。

 俺たちの周囲10メートルより外側にいた騎士たちが、フッと透明になって消えた。

 存在自体が消えたわけではない。ただ「描画」されなくなっただけだ。

 だが、それだけでPC(世界)への負荷は激減する。


「おっ、軽くなった!」


 カクついていた動きが、滑らかに戻る。


「今です先輩! 見えてない敵は無視して、発生源(オリジナル)を叩いてください!」


「ナイスだミサ! ……見えたぞ!」


 描画負荷が減ったおかげで、俺の解析(サーチ)が通った。

 無数に増殖したコピーの中に、一体だけ「データ量が異常に多い」個体がいる。

 あいつがオリジナルだ。あいつがコピーを生み出し続けている。


「エルーカ! 11時の方向、赤いマントの騎士だ! あいつを斬れ!」


「了解です! ……でも、敵がいっぱいで近づけません!」


 見えなくなったとはいえ、敵の当たり判定は残っている。

 透明な壁に阻まれて進めない。


「なら、私が道を作る! 『貫通氷槍(ペネトレイト・ランス)』!」


 レギナが極太の氷の槍を生成し、投擲とうてきする。

 槍は螺旋回転しながら、見えない敵の群れを次々と貫き、直線上を一掃した。


「開いた! 行きますっ!」


 エルーカがその「見えない道」を疾走する。

 そして、赤いマントの騎士へと肉薄した。


「増殖バグは、ここで修正(フィックス)ですっ!」


 聖剣が一閃。

 オリジナルの騎士が両断される。


 ギャァァァッ!


 断末魔と共にオリジナルが霧散すると、周囲を埋め尽くしていた数千のコピーたちも、連鎖的にノイズとなって崩れ落ちた。


「……やれやれ」


 俺は汗を拭いながら、ミサにハイタッチを求めた。


「助かった。あのままじゃラグ死するとこだった」


「どういたしまして! 先輩のPC、昔からスペックギリギリまで酷使する癖ありますからねー。メモリ管理はしっかりしてくださいよ?」


 ミサとパチンと手を合わせる。

 この軽口も、心地いい。


「しかし……気味が悪い街だ」


 レギナが周囲を警戒しながら戻ってくる。

 敵は消えたが、Tポーズの住人たちは相変わらず無関心に滑走している。


「ああ。さっさとクリアして、こんなクソゲー終わらせようぜ」


 俺たちは街の中央、不気味に聳える「管理者タワー」を見上げた。

 あそこに、このふざけたゲームのゲームマスターがいるはずだ。


 俺はガントレットを握り直し、再び歩き出した。

 バグにはバグを。

 チートには管理者権限を。かましてやる。


いつもお読みいただきありがとうございます!


次回からは通常の投稿ペースに戻させていただきます。

今後は、平日は、7時頃、12時頃、19時頃の1日3話投稿をしていきます。

土日祝日は、7時頃の分を9時頃に変更いたします。


完結までの全100話(幕間除く)、既に全話予約処理も終わっておりますので、この作品がエタることは100%ございません!

完結まで安心してお読みいただければと思います。


※最終話投稿は1/24に予約してありますが、話数の都合上、最終話付近は一日の投稿数を増やします。


それではまた、次回のお話でお会いいたしましょう!

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