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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第二章 ウイルス・スキャンとスパムダンジョン

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第21話 【悲報】視界に「消せない広告」が表示されるバグ発生。 〜バックエンドエンジニアの俺、UI(見た目)が直せなくて詰む〜

 

 王都防衛戦から二週間。

 街は復興特需に沸き、俺の「何でも屋」も相変わらずの繁盛ぶりを見せていた。


 だが、平和な日常というのは、そう長くは続かないらしい。


「……師匠。これ、邪魔なんですけど」


 朝のオフィス。

 エルーカが不機嫌そうに虚空を薙ぎ払っている。

 彼女の目の前には、何も無いはずなのだが、まるで目の前に飛んでいる羽虫を追い払うような仕草だ。


「まだ消えないのか?」


「はい。今朝起きてからずっと、目の前に『ピカピカ光る板』が浮いてるんです。文字が書いてあるんですけど、読もうとすると別の場所に逃げるし……うっとうしい!」


 エルーカだけじゃない。

 レギナも眉間に皺を寄せ、虚空を睨みつけている。


「私もだ、マスター。視界の端に『あなたの魔力、減っていませんか?』という怪しい文言が点滅している。消去しようとしても、この×ボタンとやらが小さすぎて押せん」


「……なんだそりゃ?」


 俺は眼鏡をかけ直し、二人の状態を解析スキャンした。

 俺の視界(管理者権限)には、二人が言っている「板」が見えていない。

 だが、二人の脳内視覚野に、微弱な干渉コードが張り付いているのが分かった。


『Detect: Visual_Spam(視覚的スパムを検知)』


「スパム広告かよ……」


 俺は呆れた。

 どうやら王都で、新手の「精神干渉魔法」が流行っているらしい。

 実害はないが、視界に強制的に宣伝や不快な画像を表示し続ける、嫌がらせのような魔法だ。


「ちょっと待ってろ。今コードを除去するから」


 俺はガントレットを展開し、二人の脳内コードから該当部分を削除デリートしようとした。


 カチャリ。


『Error: Layer Mismatch.(レイヤー不整合)』


「……お?」


 削除できない。

 いや、コード自体は消せるのだが、消してもすぐに「残像」のようなものが残って、また復活してしまう。


「どういうことだリリス?」


『マスター。これ、記述場所が違います。プログラムコードじゃなくて、網膜への投影レイヤー(CSS的な表層)に直接焼き付けられてますよ』


「見た目だけのバグってことか? うーん……厄介だな……」


 俺はバックエンドエンジニア(サーバーや機能を作る人)だ。

 ロジックのバグならいくらでも直せるが、こういう「見た目」や「表示位置」に関する調整は専門外だ。

 無理に消そうとすると、彼女たちの視神経まで傷つけかねない。


「悪い、完全には消せない。透過率を上げて、気にならないレベルに薄くすることしかできないわ」


「えぇ~……。まあ、マシにはなりましたけど」


 エルーカが不満げに瞬きをする。


「最近、似たような案件が増えてるんだよな」


 俺は窓の外を見た。

 街を行く人々も、何人かが虚空を手で払うような仕草をしている。

 命に関わるような呪いじゃない。

 ただひたすらに「不便」で「不快」な、ユーザビリティの欠如した嫌がらせ。


 前回のクラッカーとは違う手口だ。

 もっと陰湿で、そして「デザイン」を悪用した攻撃。


「……ああ、イライラする。こういう『見た目の調整』は俺の管轄じゃないんだよ」


 俺はガシガシと頭をかいた。

 機能は動いているのに、『UI』(画面)が崩れていて使いにくいシステム。前世でも一番嫌いなやつだ。


あいつ(三条)がいたら、こういうの一発で直せるんだろうな)


 ふと、前世の後輩の顔が浮かんだ。

 彼女は天才的なデザイナーだった。

 俺が組んだ無骨なコードに、魔法のように綺麗な画面を被せて、誰にでも使いやすいシステムに変えてくれた。


「……いない奴のことを考えても仕方ないか」


 俺は思考を振り払った。

 今は、地道に対処療法を続けるしかない。


 ◇


 王都から数百キロ離れた街道。


 美咲は愛車に跨り、爆音を立てて街道を疾走していた。


「そろそろ休憩しよっかな」


 彼女が跨っている愛車は、タイヤの代わりにクリスタルが埋め込まれた、流線型の『魔導スクーター・ベスパ改』。


 もちろん、この世界にこんな乗り物は存在しない。

 過去に彼女は移動手段として魔導具店で「空飛ぶホウキ」を購入した。


 だが、そのあまりの乗り心地の悪さと、直感的でない操作性にブチ切れ、自身のユニークスキル『外観定義(スタイルシート)上書き(オーバーライド)』を発動。


 ホウキの「見た目」と「操作系」を現代のスクーター風に書き換え、さらにエンジン出力を無理やり3倍に改造した、空飛ぶ鉄塊だ。


 彼女は片手でハンドルを握りながら、空中に展開した地図ウィンドウを操作していた。


「王都まではまだあるな〜」


 彼女はため息をつきながら、さらにアクセルを回した。

 彼女のオーロラのように色が揺らぐ瞳が、遥か彼方の王都を見据える。


「先輩、私がこの世界にいること知ったら驚くかな……。先輩の作った最強のバックエンドに、私が最強のフロントエンドを実装してあげますからね」


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