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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第一章 管理者とバグだらけのヒロインたち

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第18話 王都防衛戦(前編):物理《フィジカル》最強の女たちと、司令塔《オペレーター》の俺


 王都は炎に包まれていた。

 上空を旋回する翼竜ワイバーンの群れが火球を吐き出し、地下から溢れ出した魔物たちが通りを埋め尽くす。


「逃げ遅れた人は!? 手の空いてる人は他の人たちを中央広場へ誘導して!」


 エルーカが聖剣を振るい、巨大ネズミの群れを薙ぎ払う。

 彼女の周りには、逃げ惑う市民たちが集まっていた。


「キリがないな……! 次から次へと湧いてくる!」


 レギナが氷の槍を連射し、空のワイバーンを撃ち落とす。

 だが、敵の数が多すぎる。

 王都の防衛システムがダウンしている今、頼みの綱である衛兵たちも混乱し、組織的な抵抗ができていない。


「グギャアアアッ!」


 路地裏から、トロールに似た巨人が現れ、瓦礫を投げつけてきた。

 エルーカが前に出るが、足元の瓦礫に足を取られる。


「しまっ……!」


 巨人の棍棒が振り下ろされる。

 防御が間に合わない――そう思った瞬間だった。


 バチュンッ!!


 巨人の頭上で、街灯の魔導ランプが突如として爆発した。

 強烈な閃光と爆音が、巨人の視界を奪う。


「グガッ!?」


 巨人が怯んだ隙を、エルーカは見逃さなかった。


「はぁぁぁっ!」


 一閃。トロールの巨体が両断され、崩れ落ちる。


「い、今のは……?」


 エルーカが呆然と見上げると、耳につけていた通信用の魔導具(インカム)から声が響いた。


『――大丈夫か、エルーカ。怪我はないな?』


「師匠!?」


 ◇


「……ふぅ。間一髪だったな」


 俺は拠点のデスクで、複数のモニターに囲まれながら冷や汗を拭った。

 画面に映っているのは、王都中に設置された監視用魔導具(カメラ)の映像だ。

 俺はここから、戦場全体を俯瞰ふかんで見ている。


『マスター、ナイスタイミングです。よくあんな細かい芸当ができますね』


 リリスが感心したように言う。

 俺は先ほど、エルーカの近くにある街灯の出力コードを書き換え、意図的に過負荷オーバーロードさせて爆発させたのだ。


「伊達に3年間、下積みの翻訳やってないからな。この街のインフラの癖は把握してる」


 俺はキーボードを叩き、次の指示を飛ばす。


「聞こえるか二人とも。俺が『目』になる。お前たちは俺の指示通りに動け」


『了解です! 師匠の声が聞こえるだけで百人力です!』


『承知した。司令塔オペレーターはお任せする』


 二人の声に迷いが消えた。

 よし、反撃開始だ。


「レギナ、3時の方向、屋根の上にスナイパー型の魔物がいる。死角だ、撃て」


『了解!』


 画面の中で、レギナがノールックで氷の矢を放ち、屋根上の敵を撃ち抜く。


「エルーカ、そのまま直進。次の交差点を右だ。マンホールの蓋を開けておいたから、敵をそこに誘導して落とせ」


『は、はい! ……えいっ!』


 エルーカがオークの群れを引き連れて走り、交差点で急旋回。

 勢い余ったオークたちが、次々と口を開けたマンホールへと吸い込まれていく。

 まるでピタゴラスイッチだ。


「よし、いいぞ。その調子で前線を押し返せ」


 物理面フィジカルは二人に任せておけば大丈夫だ。

 問題は――論理面ロジカルだ。


 ピロンッ♪


 不快な通知音と共に、メインモニターの中央にチャットウィンドウがポップアップした。


『System Message: From Unknown』

『おじさん頑張るね~w でもさ、人力で指示出しとか古くない? AIに任せればいいのにプププw』


 敵のクラッカーだ。

 王都の制御権を奪ったまま、俺の介入を嘲笑っている。


「……うるせえな、クソガキが」


 俺は眉間に皺を寄せた。

 こいつは、この惨状をゲームか何かだと思っている。

 人が死に、街が燃えているのを、モニター越しのエンターテインメントとして消費している。


『あ、そうだ。いいもの見せてあげる。王都の地下にある「魔力貯蔵庫」って知ってる?』


 ウィンドウに、地下施設の図面が表示される。

 そこには、王都中の魔力を蓄積する巨大なタンクが描かれていた。


『ここの冷却システム、オフにしちゃったw あと10分で臨界点突破して、王都ごとドッカーン! 綺麗な花火になると思わない?』


「……ッ!」


 俺は即座に解析に走る。

 嘘じゃない。地下タンクの温度センサーが、危険域を示す赤色に変わっている。

 冷却システムへのアクセス権限は、厳重なプロテクトでロックされていた。


「リリス! 冷却システムの制御コードを奪還しろ! 総当たり(ブルートフォース)でも何でもいい!」


『やってます! でも敵の暗号化強度が異常です! この世界の魔術式じゃありません、これは……』


「量子暗号クラスか。手動で解いてたら日が暮れるな」


 俺は舌打ちした。

 敵は、こちらの技術レベルを完全に把握した上で、解けないパズルを押し付けてきている。


『残り時間9分30秒。……おじさん、諦めて逃げたら? ログ見てるけど、転生者でしょ? チート能力で自分だけ助かればいいじゃんwそれなら余裕でしょw』


 煽りのメッセージが流れる。

 俺は眼鏡の奥で目を細めた。


 自分だけ助かる?

 馬鹿を言うな。

 俺はもう、逃げないと決めたんだ。


「……リリス。俺の『管理者権限』の制限リミッターを外す」


『えっ? マスター、それは危険です! 脳への負荷が……!』


「構わん。この程度の暗号、力技でこじ開ける」


 俺はガントレットのキーを強く叩いた。

 俺のユニークスキルは『翻訳・編集』だ。

 読めない暗号があるなら、暗号の定義そのものを書き換えてしまえばいい。


『Warning: Memory Usage 120%...(警告:メモリ使用率120%)』


 頭の中で警告音が鳴り響く。

 脳が焼けるような熱さ。視界が白く染まる。

 だが、指は止めない。


「俺のセカイで、好き勝手させるかよ……!」


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