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【完結】『異世界の管理者権限(アドミン) 〜バグだらけの世界を「仕様変更」して無双する。最強の相棒(UI担当)と組んで、物理キーボードで神様をハッキングしました〜』  作者: 文月ナオ
第一章 管理者とバグだらけのヒロインたち

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第12話 英雄の称号は譲ります(焼肉付き)。しかし、ソースコードに「草(w)」を生やした犯人は絶対に許さない


 防衛ゴーレムの暴走が止まり、正門広場に静寂が戻った。

 だが、それも束の間。


「おおおおっ! やったぞ! 勇者様がゴーレムを止めたぞ!」


「すげぇ! あの巨体を一撃かよ!」


 遠巻きに見ていた衛兵や野次馬たちが、わっと押し寄せてきた。


 まずい。非常にまずい。


 俺は「何でも屋」として気楽に生きたいのであって、「国の英雄」として祭り上げられるのは御免だ。王宮に呼び出されて、堅苦しい謁見えっけんだの祝賀会だのに時間を取られるなんて、想像しただけで胃が痛くなる。


「……おい、二人とも。起きろ」


 俺はへたり込んでいるエルーカとレギナの肩を叩いた。


「はひっ!? し、師匠? 敵は……?」


「終わったよ。で、今から大事な話をする」


 俺は二人の耳元で、低い声で囁いた。


「今回の件、俺は一切関わっていない。いいね?」


「えっ? どういうことですか? 最後に止めたのは師匠じゃ……」


「いいや、違う。暴走したゴーレムを、勇者エルーカと銀の魔女レギナが、決死の連携で破壊した。俺はたまたま通りかかった一般市民Aだ。そういうことにしてくれ」


「そ、そんな! 師匠の功績を横取りするなんてできません!」


 エルーカが真面目な顔で抗議してくる。本当にいい子だ。だが、今はその誠実さがあだになる。

 衛兵たちがすぐそこまで迫ってきている。時間がない。


「頼むよ。俺は目立ちたくないんだ。……その代わり、今日の晩飯は王都で一番高い焼肉屋で、好きなだけ食わせてやるから」


「や、焼肉……!?」


 エルーカの瞳が揺らいだ。

 レギナも「……一番高い店、つまり『極上ドラゴンロース』がある店か?」と反応している。


「ああ。酒も解禁だ。デザートもつけてやる」


「……分かりました! 師匠の平穏な日常のため、汚名は私たちが被りましょう!」


「汚名じゃなくて手柄だけどな。よし、交渉成立」


 俺は素早くコートの襟を立て、一般市民のふりをして群衆に紛れ込んだ。


 直後、衛兵隊長が駆けつけてくる。


「勇者殿! ご無事ですか! 見事な働きでした!」


「あ、はい……えへへ、まあこれくらい……」


 囲まれてチヤホヤされる二人を横目に、俺は足早に路地裏へと消えた。

 ふぅ、危ないところだった。


 ◇


 拠点に戻った俺は、すぐに作業部屋オフィスのデスクに向かった。

 焼肉に行く前に、確認しておかなければならないことがある。


「リリス。さっき回収したゴーレムのログを出して」


『了解です、マスター。……これ、酷いですね』


 空中にホログラムウィンドウが展開される。

 そこには、ゴーレムを暴走させたウイルスのソースコードが表示されていた。


 複雑で、悪意に満ちたコードだ。

 この世界の魔法使いが書いたものじゃない。論理構造ロジックが完全に、俺の知っている「プログラミング言語」のそれだ。


「やっぱりな。この世界には俺以外にもいるんだ。『転生者』が」


 俺は眼鏡の位置を直しながら、コードをスクロールしていく。

 このウイルスを書いた奴は、相当な手練れだ。

 防衛システムのセキュリティホール(脆弱性)を正確に突き、管理者権限の認証を偽装している。


 だが、一番許せないのは技術力じゃない。

 その「書き方」だ。


「……なんだこれ」


 コードの末尾。通常なら署名サインや更新履歴を残す部分に、ふざけたコメントアウトが残されていた。


『// Hahahaha, Zakko wwww』

『// Kono sekai no security, gaba gaba desu ne ^^』


 ローマ字だ。

 間違いなく日本人。しかも、ネットスラング全開の煽り文句。

 「ハハハハ、ざっこw」「この世界のセキュリティ、ガバガバですね^^」


 プチン。


 俺の中で、何かが切れる音がした。


「……いい度胸だ」


 俺はガントレットを装着した左手を、デスクに叩きつけた。

 前世でも、こういう奴はいた。

 自分の技術をひけらかすためだけにシステムを破壊し、現場の人間を嘲笑う愉快犯クラッカー

 俺たちが必死に守ってきたサーバーを、遊び半分で燃やす放火魔。


 俺はモニターを睨みつけた。


「リリス。このコードの特徴クセを記録しろ。変数の命名規則、インデントの入れ方、全部だ」


『記録しました。……マスター、目が怖いです。血走ってます。普通にキモイです』


「このふざけた署名サインを残した馬鹿を、必ず見つけ出す。そして……」


 俺はニヤリと、冷徹な笑みを浮かべた。


「二度とキーボードを触れないように、指一本動かせないレベルまで徹底的にデバッグしてやる」


 スローライフ? 隠居生活?

 知ったことか。

 俺の(世界)に土足で踏み込んで、こんなクソコードをばら撒く奴を見逃せるほど、俺は人間が出来ていない。


「行くぞ。……まずは焼肉だ」


 俺は立ち上がり、コートを翻した。

 腹が減っては戦ができぬ。

 それに、あの二人に約束した「報酬」を払わないとな。


 待ってろよ、顔も知らない同郷のクズ野郎。

 「管理者権限」の恐ろしさ、たっぷり教えてやるからな。


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