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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
63/71

「花火と社交会」

修学旅行も残すところ、あと3日となった。

毎年、この修学旅行はメリダスで行われる祭りに合わせて行われる。

今日は祭りの2日目であり、祭りの最終日でもある。

そのため、街には子供から老人まで大勢の人が来ていた。

アランとレベッカもそのうちの一人であった。

「すごい混んでるね。今日がお祭りの最終日だから?」

「それもあるけど、一番は花火が上がるのよ」

「花火?」

アランはこの人生で、まだ一度も花火を見たことがなかった。

それどころか、花火自体を知らなかった。

「花火は火薬を使って、空に綺麗な花の光をあげるのよ」

「火薬って、マスケット銃の?」

「やっぱ、そっちが出てくるのね...そうよ。火薬で空に玉を飛ばすの」

「それ、魔術じゃダメなの?」

アランは核心を突くようなことを言った。

だが、レベッカは魔術では出来ない理由を話し出した。

「花火はね、綺麗に爆発するの。それも、数十発。流石にそんなことを出来る魔術師はこの世に居ないわ」

するとアランが自分の指で自分を指した。

レベッカはその意図に気づき、苦笑しながら言った。

「はいはい、一人いるわね。ここに」

レベッカの言葉を聞くと、アランは誇らしげに胸を張った。

その様子は、子供が親に褒められたような様子であり、アランが幼い子供のように見えた。

レベッカはその様子がたまらなく刺さったようで、アランをすぐに抱きしめた。

レベッカはとてもにこやかだった。

だが、それと同時に、レベッカの目に一つの想像の世界が映り込んできた。

そこには、アランが鎖で縛られて身動きが出来ない様子であった。

(私は、無駄に人の心を汲み取ることが得意だ。だから、わかる...周りからは失望され、親からは半分奴隷のような扱いを受けて来た。それが、アランの精神をむしばみ、縛ってきた。今のアラン、今までのアラン、本当に笑いかけてくれたのは、数えるほどしかない。だから、私がアランに解いてもらったように、今度は私が解く。この、鎖を!そのためには...)

「アラン、今日は楽しむわよ!」

「え、あ、うん!」

二人は祭りを昼から楽しんだ。

祭りには、祭りならではの多くの屋台があった。

例えば...

「これはどうやるの?」

「これはね、この魔道具を使って、あのお菓子とかぬいぐるみを倒すの」

レベッカの手には、複数の細い棒と、弾性のある輪っか状の紐を使って作られた、魔道具が握られていた。

「そいつは魔っ箸鉄砲だ。少ない魔力で簡単に操れるが、意外と当てるのは難しいんだぜ」

店主がアランに向かってわかりやすく説明してくれた。

アランが仕組みを理解すると、すぐに撃ち始めた。

(初めてにしては、構え方は悪くねぇ。だが、たかが子供に当てられやしない...ん?)

アランは射撃を放つと、それはアランの狙っていた的に完璧に当たり、地面に転がり落ちた。

すると、アランは次々に的を落としていき、しまいにはあくびをしながらでも、簡単に的を倒した。

「まぁ、こうなるよな...レベッカ、次行こ」

「え?あ、うん...」

(マリアが前に全く同じことしてたな...姉弟ってすごいな...)

次の屋台へと進むと、看板に『魔物すくい』と書かれた屋台があった。

そこには、水の入った箱に、水属性の魔物が何匹か放されていた。

「これ、大丈夫なの?魔力は少なさそうだけど」

「この子達は人畜無害な魔物たちよ。だから、安心して遊んで行ってね!」 

店主らしき女性はそう言うと、アランに網のようなものを渡した。

「これは?」

「それはね、魔力でできた網よ。魔物はそれに寄ってきて、壊そうとするわ。それをかいくぐって魔物をその網で捕まえるの。じゃあ、頑張ってね」

「アラン、コツはね、こうやっ...なんで、こうも姉弟は全く同じ結果になるのかしら...」

アランはコツを掴むどころか、この遊びをマスターしていた。

次々に魔物が宙を舞い、水の中には一匹も魔物がいなくなってしまった。

「うーん、次行こっか」

「そうだね...」

それからというもの、あまりめぼしい屋台が見つからず、歩き疲れたレベッカは近くのベンチで座っていた。

歩き疲れたのと、アランを楽しませることができなかった自分への不甲斐なさに、大きなため息をついた。

そこへ、アランがリンゴ飴を咥えて戻ってきた。

「ねぇアラン...」

「ん?これいる?」

アランは手に持っていたもう一つのリンゴ飴をレベッカに渡した。

「楽しい?」

「え?」

「私と居て、楽しい?私との祭り、退屈じゃない?」「え?」

「やっぱそうだよね...私、今日アランを楽しませようと頑張ったけど、全然できなかった...やっぱりベルとかマリアを連れて来れば良かったね...」

「え?楽しいけど」

レベッカの落ち込んでいる心に、太陽のような明るい光が差し込んだ。

「僕の知らないこといっぱい知れたし、たくさん屋台で遊べたよ!これも、全部レベッカのおかげだね!」

アランはリンゴ飴を咥えながら笑顔で言った。

その言葉、その表情に、疑う余地はなかった。

その言葉を聞いて、レベッカの目に涙が浮かんだ。

(あぁ、アランが眩しいわ...本当に、私の太陽のような人...)

レベッカの心がアランで満たされていくと、一つの異変に気づいた。

(この光、この音、この時間帯...まさか!)

「これが花火!」

夜空には、アランの彗星に引けを取らないほど美しい景色があった。

花火、それは魔術大国のラファエル王国で認められた、数少ない魔術を使わない技術。

それは、大勢を魅了し、国王もその美しさに感嘆したと言われているもの。

それを目にしたアランは、あまりの美しさに、口に咥えていたリンゴ飴を落としそうになったほどだ。

「花火、綺麗だね」

「そうね。今度、お父様にお願いして取り寄せてもらおかしら」

「なんでもありだね...」

「ターナー商会にかかれば簡単よ」

花火は数十分にわたり何度も打ち上げられた。

皆は花火の美しさに魅了され、その時間は人の動きも止まっていた。

花火が終わると、観客たちは皆大きな拍手を送った。

アランとレベッカが屋敷へと戻る途中、レベッカはアランに聞いた。

「そういえば、昨日は何してたの?」

「うーん、内緒」

「私にも?」

「そう。レベッカにも」

二人が話していると、背後から誰かが迫ってきた。

大柄な男と、黒髪でサングラスを掛けている男。

「やあ、二人はデート、楽しめたかい?」

「アーサーさんも祭りに参加したんですね」

「ああ。変装して、護衛もつけたからね」

(通りで、ところどころ殺気立ってたのか)

アランは、祭りの最中、ところどころで殺気を感じた。

それは、アランに向けられたものではないが、護衛特有の殺気であった。

「ところで、お前、リンゴ飴買いすぎじゃね?」

「そう?」

アランの手には沢山のリンゴ飴が握られていた。

更に、レベッカの手にも。

「リンゴ飴にハマったのよね」

「そうだよ。これ、すごく美味しい」

「そうか。リンゴ飴はうまいからな!」

その後、アランはビクトリアに頼み、リンゴ飴の作り方を教えてもらっていた。

 * * *

王立魔術師学校マギアは、多くの生徒が貴族で構成されている。

そのため、学校の行事として、茶会や、社交会も行われる。

今日も、その一つだ。

生徒は皆ドレスコードで屋敷の大広間へと集まっていた。

アランは、フランシスにもらった礼服を、レベッカは青いドレスを。

マリアは髪色と同じ、薔薇色のドレスを。ベルージュも髪色と同じ紫のドレスを着ていた。

皆、いつもの雰囲気と違い、いつも以上に注目されていた。

「社交会か...あんまり気が乗らないわね」

「僕は初めてだよ。どんなことをするの?」

「喋ったり、踊ったりするのよ。私は公爵家令嬢だから、虫がよってきやすいのよ」

「それは大変だね」

そんな話をしていると、早速一人の生徒がやってきた。

着用している服は、アランやレベッカほど高級なものではなかった。

見るからに、レベッカに取り入ろうとしている様子が伺えた。

男は、談笑をしている中で、一つ質問をした。

「ターナー嬢は婚約者がいらっしゃるのですか?」

「いえ、いませんよ」

「なるほど。それは珍しいですね。公爵家の者なら、大体の方が婚約者がおりますから」

男の口角が少し上がっていた。

婚約者がいる、いない、これだけでもかなり需要のある情報だ。

「私は魔術、そして経済に精通しています。そして、私は伯爵家の次男であり、後継ぎではありません。私なら、ターナー嬢の手助けをできるかと」

「丁重にお断りいたします。そもそも、私はあなたのことを知らない。それに、私には彼氏が居ますから」

「はい?彼氏?」

彼氏がいる。

それは、貴族の中では、考えられないことだ。

衝撃の事実に、周りはどよめいた。

その後、レベッカは他の男達をことごとく振った。

だが、その中でレベッカは、一度もアランの名前を出さなかった。

公爵家令嬢の婚約者になり得る者。

報復や暗殺、いつ命が狙われるかわからない状況に立たされる。

それを考慮して、レベッカは名前を出さなかった。

社交会が始まって、時間が経つと、ペアダンスの時間がやってきた。

ペアダンスは、男性が女性を誘い、ダンスをエスコートする。

大体の生徒は、レベッカやマリア、ベルージュあたりを狙っていた。

社交会では、特別な理由がない限り、誘いを断ることができないため、この三人は休む暇もなく、踊り続けていた。 

3人は、誘いを受けている間、アランが誘ってこないかずっとソワソワしていた。

アーサーたちはというと、普通ではありえないが、アーサーが女性陣から誘いを受けるという、珍事が起きていた。

だが、アーサーも国の方針があるため、今回の社交会ではダンスができなかった。

それともう一人、同じ珍事が起きている者がいた。

「私と踊ってくれない?」

「アラン!アランは私と踊ってくれるわよね?」

「えっと、その...」

(な、なんか、僕が教えてもらったマナーが違う...それに、周りからの視線が痛い...でも、約束は果たさないと!)

「僕と、踊ってもらえますか?」

「ええ、よろこんで」

アランは一人の女性を誘った。

それは...

(マリア!?それに、なんでアランは私じゃないの!?)

レベッカの思いはつゆ知らず、二人は優雅に踊り始めた。

先程まで、暗い顔つきをしていたマリアだったが、アランと踊り始めると、表情が変わった。

「なんか、すごく楽しそうね…」

「悔しくないの!?マリアに取られて!」

「悔しいけど、そういう約束だからね」

ベルージュはあまり悔しそうな表情を見せなかった。

それどころか、表情から笑みすら垣間見えた。

すると、レベッカはベルージュの言葉に疑問を持った。

「約束?」

「そうよ。レベッカが祭りに行くなら、私達は、他の日にするわ。今日は、マリアの日。明日は、私の日よ」

「そ、そんなの聞いてないわ!そもそも、明日なんて...」

「お土産選びよ」

ベルージュの言葉に、レベッカは絶句した。

最終日は、この旅行での土産を選ぶ一日だ。

一週間もの旅行だと、初日や二日目には、足の早いものは選べない。

そのため、この修学旅行には、最終日に土産を選ぶ時間が用意されているというわけだ。

「で、でも、アランはそれを良しとするの?」

「もう、約束した、と言っているでしょう?これは決定事項なのよ」

「そ、そんな...」

レベッカが落胆していると、マリアのダンスがちょうど終わった。

マリアは、たいそう楽しかったようで、マリアの機嫌は上々であった。

一方、アランはというと、なれないダンスに、なれない服装、なれないマナー、アランは精神的疲労が溜まっていた。

ダンスが終わり、すぐに他の男達が駆け寄ってきたが、丁寧に断り、休息へと入った。

それと同時に、アランやレベッカ、ベルージュも休憩に入った。

「ねぇ!どういうこと!なんでマリアを選んだのよ!」

「えっと、約束だから?」

「みんな、約束、約束って、何なんのよそれ!」

すると、近くに居たマリアがレベッカを言葉で制した。

「あら、レベッカ、そんなに叫んで、はしたないですわよ」

静かな空気も相まって、レベッカの声が響いていた。

そのため、レベッカは皆から注目されていた。

レベッカはすぐに自分の状況を理解し、一呼吸おいて、話し始めた。

「わかりましたわ。今回はこの件から手を引きましょう。ですが、あなた達がこんなことを出来るのも、最後です。それは、理解しておいてください。」

レベッカの目は、今まであまり人に見せない目であった。

その目は、本気で相手を潰す時の目。

マリアも、その目をしたレベッカには勝てないことがわかっていた。

(流石に、やりすぎたか...少し時間を空けないといけないか)

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