「ファッションショー」
この服屋は王都でもかなり有名な店だ。
何より、品揃えが豊富であり、大勢の市民がここに服を買いに来ている。
今日も大勢の人がここに集まっているが、そこにひときわ注目されている4人の女性が居た。
「あんたたち、なんでついてきたのよ」
「私はアランの恋人よ」
「私はアラン様のメイドです」
「私は...うーん、なんかあるかな...」
「ほら、ないでしょ。さっさと尻尾巻いて帰りなさい」
「そういうマリアはどうなのよ」
「私はアランの姉よ。アランに群がるクズたちを排除しないといけないから」
4人はアランの後をつけていった。
その頃、アランたちは手分けして、アランに似合う服を探していた。
かれこれ数十分経つと、皆が集合場所へ集まってきた。
「じゃあ、試着してもらうか」
アランはそれぞれが持ってきた服を順番に着ていった。
そのなかでも、かなり人気のあるものが2つあった。
アランが試着室から出てきた。
「ねぇ、これすっごく大きいんだけど...」
アランが今着ている服は、アランにとってはかなり大きいサイズであった。
そのため、袖から手が見えることはなく、服の裾がアランの膝くらいまで届いていた。
「おぉ...可愛い...」
「こういう選択肢があったとは...こんど写真を取ってもらおう」
「え?写真ですか?そんな、僕大層なものじゃないんですけど...」
「そうかい?周りを見てごらん」
周りを見ると、皆口角が上がり、顔がにやけていた。
だが、その人気を誇るほどの服装が現れた。
アランがカーテンを開けると、そこには、驚きの光景が広がっていた。
「あ、最高...」
アランの服装は、上下つながった服装であり、アランの容姿が女の子にも見えた。
「俺、タイプかも...」
「よし、さっきのと2つで会計をしよう!」
「え?あ、うん...」
その後、アランは会計を済ませた。
その頃、あの4人はというと...
「ねぇ、あれ、良くない?」
「あれ良いわね。私あれ結構ささるわ」
「私はアラン様が着るならなんでも...」
「いや、とは言ってもじゃない?アランちゃんがスーツを着ても、あんまり似合わなそうじゃない?」
「たしかに...」
そんな話をしていると、近くから数人の男たちがやって来た。
「ねぇねぇ、君たち、少し時間ある?」
「ないわ」
「即答だね...少しでいいからさ、俺達とお茶しない?」
「しないわ」
「いいじゃんよ。俺達結構顔良いぜ?」
「知らん」
マリアたちのあまりの興味の無さに、男たちはムキになっていた。
「ほらほら、行こうよ!こんなところで留まってないで!」
男たちはそう言って、マリアたちを強引に連れて行こうとした。
その様子に周りもざわつき始めた。
そんなところに、その男たちを止めるものが現れた。
「お姉さんたちが嫌がってますよ。やめてあげてください」
「あ、アラン!?」
マリアの肩を掴んでいる腕を、アランは掴み取った。
「はぁ?子供は引っ込んでろ」
そう言うと、その男はアランを突き飛ばそうとした。
だが、アランはそれを受け流すと、男は勢い余って倒れてしまった。
「クソ!ガキが調子に乗るな!」
男がそう言うと、周りの仲間たちもアランに襲いかかった。
次々に襲いかかる様子に、周りの観衆は止めようとする者だったり、一方的な様に目を覆い隠す者もいた。
だが、観衆の思いや、襲いかかる男たちの期待は簡単に裏切られた。
アランは次々に襲い掛かってくる男たちをなぎ倒していった。
「これで全員かな」
アランの周りには、さっきまでマリアたちに絡んでいた男たちが倒れていた。
少しすると、男たちはなんとか立ち上がり、慌てて逃げていった。
すると、周りの観衆から盛大な拍手を受けた。
「いつまで惚けてるの?もう、僕行くから、ついてこないでね」
そう言って、アランはマリアたちのもとを去っていった。
「私の彼氏なのに!」
レベッカはそう言って、マリアを前後に揺さぶった。
すると、マリアは我に返ったように、アランを探し始めた。
「え?アラン、どこに行っちゃったの?」
「どっか行ったわよ」
「ねぇ、さっきからレベッカ、アランちゃんのことを彼氏って言ってるけど、どういうこと?」
「え?そのまんまだけど...」
「は?アランちゃんがそんなに簡単に承諾するとは思えないんだけど」
「色々とあったの!」
「あっそ。なら、別に私が狙ったも良いよね?」
「はぁ!?そんなのダメにっ...」
「早く行きますよ。アラン様に置いていかれますよ」
* * *
アランたちのテーブルに、紅茶が運ばれてきた。
紅茶は赤く、濃い色であり、芳醇な香りが漂ってきた。
アランはミルクを入れて口につけた。
「...!美味しい!いつも飲んでる紅茶と全然違う!」
「この紅茶には、特別な茶葉を使っおりますので、とても上品な仕上がりになっております」
運んできてくれた店員が、この紅茶について詳しく教えてくれた。
「そうなんですね。この紅茶はどこで売ってるんですか?」
「申し訳ございません...これはマスターと、その師匠でしか知り得ないんです...」
「師匠?」
「はい。マルフィン侯爵のフロム料理長です」
「へ、へぇー...それはすごいですね」
そんな話をしていると、新たにパンケーキが運ばれてきた。
アランがパンケーキを口に運ぶと、食感はふわふわと、とろけるような甘さであった。
「美味しい!」
アーサーたちも食べ始めると、すぐに手が止まらなくなった。
あまりの美味しさに、皆はすぐに完食した。
「そういえば、さっきアランがトイレ行ってる時騒ぎが起きてたけど、大丈夫だったか?」
「え!?あ、だ、大丈夫だったよ!」
「そうか...まあ、そりゃそうだよな!エイムを倒すぐらい強いんだからな!」
皆はそう言いながら、笑った。
そんな中、アーサーがアランに小声で声をかけてきた。
「あそこの4人って、どっからどう見てもマリアたちだよね」
「ですよね...多分、僕のことを監視するためについてきたんだと思います...」
「流石、アラン君はモテるね」
「せめて、もうちょっと変装して欲しかったですね...」
アランたちは店を出ると、皆はその場で現地解散となった。
帰り道、アランとアーサー、そしてへルックは少し寄り道をして帰った。
「もしアラン君がここに入ったら、マリアたちはどんな反応をするだろうね」
「アーサー、お前性格悪いな...」
アランたちの前にある店の名前は、マダムメーベル。
いわゆる、キャバクラのようなものであった。
アランたちが入店すると、沢山の女性たちがやってきた。
「ネビル君じゃん!久しぶり!元気にしてた?」
「やあメル。私は元気にしていたよ。君は?」
「あたしは君が来てくれないから元気じゃなかったよ!そこの2人は君の連れ?」
「そうだよ。少しからかおうと思ってね」
「からかう?」
アーサーがメルに周りには聞こえない程の声でことの次第を伝えると、メルはすごく楽しそうに喋り出した。
「ネビル君は性格悪いね〜。でも、あたしはそんなネビル君も好きだよ」
「それはどうも」
「本当に釣れないわね。でも、本当に良い客を連れてきてくれたよ!あの2人、顔が良いわね。とくに、さっき言ってた子は。もう、女の子たちに囲まれてるじゃん」
アランとへルックの周りには大勢の女性が群がっていた。中には、さっきまで接待をしていた子も...
アランやへルックが戸惑っていると、店の扉が蹴破られ、4人の人影が見えた。
「どうやら、ここまでのようね」
「扉は私が後で弁償しておくよ」
「アランを返しなさい!」
煙が明けると、そこにはマリアたちが陣取っていた。
レベッカがアランを見つけると、周りの女性たちを跳ね除け、アランの元へ一目散に走って行った。
レベッカはアランの襟元を掴むと、引きずりながら出て行った。
そして、アーサーとへルックはというと、マリアとベルにボコボコされながら連れ出された。
アランたちは、人気のないところへ連れて行かれると、マリアやレベッカからお叱りを受けた。
「あんた、アランになんてとこ行かせてんの!こんな可愛いアランを、あんな獣の檻に放り込むなんて...」
「そうよ!これは、彼女として看過できないわ!」
「え、今彼女って言った?」
「アランもアランよ!彼女である私を差し置いて、あんなところに行くなんて!」
「え!?付き合ってたの!?」
「なにか問題でもありすか!」
「い、いや、問題はないけど、アラン君がそんな簡単に堕ちるかなって...」
「それな。ベルを堕としたアランが、レベッカごときに堕ちるとは思えないわ」
「お前たち、こういう時だけ仲良いよな...」
結局、アランたちは日が暮れるまで4人に説教され、帰る頃には、空に星が見えていた。
「ねえビクトリア」
「なんですか、アラン様」
ビクトリアは珍しく、アランにそっけない態度をとった。
どうやら、先の事でまだ怒っているようだ。
「みんなで、見た時も、こんな綺麗な夜空だったよね」
「...そうですね」
「冬には、一度帰ろうね。師匠に、色々なことを話したいな。僕の大切なものが増えたって」
「...ラファエル様の好きだったお酒でも、買って行きましょう」
アランとビクトリアが顔合わせると、笑みが溢れた。
その顔は、楽しそうな顔であったが、その目の奥では少し寂しげな様子が伺えた。
「あの...私たちも居るんですけど...」
「そうよ!私だって、アランの家に行きたいわ!」
「そうだね。いつか、一緒に行こうね」
帰り道、レベッカは皆にバレないよう、アランと手を繋いで帰った。




