「敗北の最大の原因は油断」
「えっと、確か君は...」
「エイムだ!もし、この模擬戦で勝ったら、レベッカは俺がもらう」
「はぁ...そうですか...」
アランが周りの様子を見ると、かなりどよめいていた。
「おいおい、アラン、そいつはやめとけ。そいつはアーサーを上回る剣術を持ってるぞ」
「そうなんだ...」
「え?それだけ?」
「まあ、別に倒せば良いんでしょ?」
「おいおい、俺の剣にかなうとでも思ってんのか?ふざけるのは顔だけにしとけよ」
「はぁ!?あんた今の言葉撤回しなさいよ!」
「ふっ、お前の召使が勝てば撤回してやるよ。まあ、それはないがな」
二人の模擬戦は始まる前から白熱していた。
ある者は賭けをし、ある者は二人に向かってやじを飛ばしていた。
だが、その中でも一番多かったのは、アランへの声援である。
元々、エイムはあのような性格なので、クラスでは浮いており、あまり好かれていはいなかった。
「えっと、その、僕も疲れてるから...」
「おいおい、まさかこの状況で逃げるのか?」
「あんまり手加減できないけど、良い?」
「は?」
アランの言葉に、皆は静まり返った。
「おいへルック、お前が合図を出せ」
「わかったよ。両者、構え」
すると、エイムは昔見た構えをした。
(これって...)
「はじめ!」
(このクソガキに思い知らせてやる!俺を舐めたこと、俺の女を奪ったことをな!)
エイムが素早くアランと距離を詰め、アランの首元に剣を突きつけようとした。
だが、それはアランの剣によって防がれてしまった。
「は?」
アランは完璧で無駄のない動きをし、エイムを突き飛ばした。
(俺の剣が見えていた?いや、予想できていた?どういうことだ?)
「おい!お前、どういうことだよ!なんでお前ごときが俺の剣を弾けるんだ!」
「話はいいから、さっさとかかってきなよ」
「俺に指図すんな!」
エイムは激情しながらアランに攻撃したが、アランはそれを軽々と交わした。
周りの観衆はその様子を見て、驚愕していた。
「き、綺麗...」
そう。アランの攻撃、防御ともに、どちらも美しかった。
全てが一つの流れとなり、まるで扇子でも扇いでるかのようであった。
(こいつ!俺の攻撃を全て防ぎきってやがる!なぜだ!あの王子にもこの攻撃には耐えられないんだぞ!)
「そろそろ、その重り外したら?」
すると、エイムの猛攻が止まった。
「そこまで見抜くとは、お前、力を隠していたな?」
「さあ?」
「いいぜ。この俺が本気で相手してやる!」
そう言うと、エイムは着ていた上着を脱ぎだした。
上着を地面に放り捨てると、そこにはちょっとした穴ができていた。
「おい、お前らそれを拾っておけ」
エイムの取り巻きが服を持ち上げようとすると、びくともしなかった。
「良いね!そうこなくっちゃ!」
アランの顔が、疲弊していた顔から笑顔へと変わっていた。
エイムはアランとの距離を一気に詰めた。
先程の動きとは桁違いであった。
「目で、終えない...!」
レベッカの言う通り、大抵の者がその速さに追いつけなかった。
ただ、この三人は違った。
(アラン君...やらかさないかな...)
(エイム殺すエイム殺すエイム殺す!私の可愛い弟を!)
(やべぇ...こりゃやべぇ!アランのやつ大丈夫かよ!俺より速いぞ!)
流石にアランも、これには動くしかなかった。
初めて...
アランは宙を舞い、エイムの攻撃を交わした。
「そう簡単に避けれるか!」
エイムは自分の攻撃が避けられると、すぐに切り返し、腰からひねり出すように、後ろへ回し斬りをした。
だが、アランはその攻撃を、体をかがめて避け、エイムの軸足を蹴り飛ばした。
エイムは体勢を崩されたが、自分の剣で地面を突き、アランの間合いから逃れるように後退した。
すると、エイムは左手を伸ばし、手の甲に剣をのせるように構えた。
「あ、あれは...」
「アラン!避けろ!」
その瞬間、エイムはアランに一直線に飛びかかった。
先程の速さには比にならないほどの速さであり、剣先はアランの目の前まで迫った。
エイムがアランの顔を見た瞬間、戦慄した。
アランは恐怖を抱くどころか、今までにないほどの笑顔であった。
アランはエイムの攻撃を、自分の剣で軌道をずらし、そこにできた隙をアランは逃さなかった。
軌道がずれたエイムは、体勢を崩され、そこからアランに脇腹を蹴られ、横に突き飛ばされてしまった。
エイムは剣を地面に突き刺しながら、なんとか立ち上がったが、骨の何本かは折れているようであった。
「さあ、リベンジと行こうか」
アランがそう言うと、エイムが先程とった構えと、同じ構えをした。
「は?」
エイムがなんとか剣を握ったところで、アランは勢いよく飛び出してきた。
(な、なんで、こんなガキこの技を!?だ、だが、この技を理解できている俺なら、この攻撃への対処は...)
エイムがそう思った矢先、それは起きた。
(は?)
エイムの目には、宙を舞う剣が映った。
あまりの出来事に、エイムは動揺を隠せなかった。
アランはその隙を突き、宙を舞う剣の下方をくぐり抜け、剣を掴みながら、両足でエイムを突き飛ばした。
その戦術に、皆は思った。
「こんなの、美しくない...」
アランの剣は美しいが、その戦術は、美しくない、卑怯、そう言われてもおかしくないものであった。
「これは...もう、だめか」
へルックがエイムの様子を確認すると、気を失っていた。
こうして、この勝負はアランの勝利に終わった。
この場に居合わせた生徒たちはアランへの認識を改める必要があった。
「お前、あんなに強かったんだな!」
「えっと、レベッカ様にやれって言われたから...」
「え、まじで?」
皆が、その言葉を聞くと、レベッカは答えた。
「ま、まあ?私の召使だし?少しぐらい強くてもいいわよね」
「そういうもんなのか?まあ、俺達の代わりにエイムを倒してくれてありがとな!まじで、最近あいつウザかったから」
「そうよ!なにが俺様よ!しかもしつこいし、ネチネチしてるし...それに比べてアランは...」
アランの人気は前にもまして上昇した。
「そういえばアランはもう修学旅行の準備した?」
「修学旅行?」
「あれ?レベッカから聞いてないの?」
王立魔術師学校マギアには2回、修学旅行がある。
1回目は中等部で、2回目はこの高等部で。
今回の修学旅行は、1週間南部の都市で行われる。
「1週間か...なんの服持ってこう...」
「なんだ?アランは服持ってないのか?」
「そうなんだよね...」
(いつもローブだから...)
「じゃあ、今度俺らで服買いに行こうぜ!へルックも行くだろう?」
「良いぜ。アーサーも来るか?」
「そうだね、最近仕事が収まりつつあるし、私も参加して良いかい?」
「おし!じゃあ、みんなでアランの服を買いに行くぞ!」
(あれ?僕まだ一言も...)
* * *
あれから数日が経ち、今日は休日である。
アランたちは王都の中心部へやってきた。
流石大国の名に連ねる王国の王都と言えるだろう。
街中は人が溢れかえり、道は人混みによって埋め尽くされていた。
「それにしれにしても、エイムのやつ肋骨が3本粉砕骨折とはな。修学旅行も行けないって言ってたな」
「申し訳けないことしちゃったな...」
「まあ、あいつが仕掛けてきたんだからしょうがねぇだろ」
「そ、そうだよね...それにしても、みんな大きくない?」
アランはへルックにアーサー、その他に、クラスメイト6人、計9人で来ていた。
アランを抜いた8人は、周りを見てもひときわ身長が高かった。
「みんな、何cm?」
「184cm」
「183cm」
「189cm」
「194cm」
「187cm」
「192cm」
「195cm」
「203cmだ。アランはどうなんだ?」
「えっと...160.3cm…」
「小さいな」
「うっ...」
「ねぇアラン君、へルックに肩車してもらったら?」
へルックはアランを肩に乗せてもらうと、アランの目には考えられないほど、開放的な景色が広がっていた。
(人が多いな...ん?あれって...)
アランが周りを見渡していると、赤い髪をした女性と、金髪の髪をした女性、紫色の髪をした女性、それとメイド服を着た女性がこちらを見ていた。
その四人はアランの視線に気づくと、すぐに物陰に隠れてしまった。
「なんか、親子みたいだな」
「私も思った」
「そんな年離れてないと思うんだけど...てか、今更だけど、アーサーさん来てよかったのですか?一応王子様だし...」
「それに対しては大丈夫だよ。ちゃんと、返送してきたから」
アーサーを見ると、黒髪にサングラスをして、普段とは雰囲気がかなり違った。
だが、これはこれで、かなり注目を集めていた。
「アーサーの容姿は何をしても人の注目を集める気が...」
アーサーが通る道には、赤いバラのようなものが舞っているようであった。
そのままアランたちは進んでいくと、目的の店へとついた。
そこはアランがよく服を買う、仕立て屋フランシスとはかなり印象が違った。
「大きい...」
「流石に俺らが通ってる店だと1着や2着が限界だと思ったから、今日はここでショッピングだ!」
中に入ると、年齢問わず大勢の人がこの服屋に来ていた。
「ここなら大体の服はそろうぜ。俺もたまに来るんだぜ」
「へルックとアーサーさんはここに来たことあるの?」
「私はないね」
「俺はここで服を買ってるぜ。俺の体格だと大体の服はあわねぇんだ」
「じゃあ、早速始めるぞ!」




