「招かれざる客人」
「招かれざる客人だね」
そう言うと、フェンデスは立ち上がり、魔術を使い、武器を出した。
「アレンは少し隠れていて」
フェンデスは、物陰に隠れるアランを確認すると、男たちに向かって話しかけた。
「君たちは僕に要件があるのかい?」
「大剣を出している人に言う義理はないな!」
そう言って、男たちはフェンデスに襲いかかった。
男たちの様子を見るとかなりの手練とわかった。
だが、フェンデスの敵ではなかった。
フェンデスは大剣を、短剣のように軽やかに振り、男たちを寄せ付けなかった。
「お、お前ら!相手は大剣だからリーチが長い!こちらは魔術で応戦しろ!」
そう言って、皆はそれぞれ魔術を放った。
だが、フェンデスは大剣を一振しただけで、魔術を防いでしまった。
「プランBだ!」
男たちの中のリーダーらしき人間がそう言うと、男たちは何度も魔術を放ち、フェンデスを足止めした。
その間に、隠れていた他の男たちがアランの下へ忍び寄った。
「アレンが危ない!」
フェンデスはすぐに相手の意図に気づき、足止めをしていた者たちを薙ぎ払い、アランの下へ向かった。
だが、敵の思惑通りになり、アランは敵に囲まれていた。
「アレンを放せ!」
フェンデスはそう叫んだが、男たちは止まらず、アレンに襲いかかった。
だが、その瞬間、男たちは吹き飛ばされてしまった。
「え...」
アランの手には赤い棒が握られていた。
敵は動揺していたが、すぐに体勢を立て直し、アランに襲いかかった。
だが、アランはセシルで斬撃を作りだし、敵たちを吹き飛ばした。
「あ、ちょっとやりすぎたかな...」
それから、アランとフェンデスは敵を拘束し、騎士団に引き渡した。
二人は馬車に乗り、帰路についた。
「ねぇ、アレン、少し聞いても良いかい?」
「な、なんでしょう...」
「さっきのことなんだけど、アレンって何者なの?ただのメイドにしては戦いに慣れすぎている」
(やばい!さっきのはやりすぎたか。どうしよう...とりあえず言い訳を考えないと)
「えっとですね、シーザス様が『俺のメイドなら戦えて当然』って仰りまして、よくギルドの依頼を受けさせられたんですよ...」
「そ、そうなんだ...僕の勘違いか」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いや、なんでもないよ。それより、今日はごめんね、僕と一緒に居たせいで危険な目に合わせて...」
「いえ、大丈夫ですよ。それだけ殿下が有名ということですから。僕は嬉しいですよ」
「そ、そうかな?」
二人が話していると、馬車が王城に着いた。
「じゃ、じゃあ、また、今度誘うから、またね!」
フェンデスは馬車を降りると、アランに別れを告げて、王城の中に戻っていった。
それから、アランはシーザスにこのことを伝えてから、王城に帰ると、空はもう暗くなっていた。
アランが、王城に帰ると、レベッカに加えてマリアやベルージュが話していた。
「ただいま」
「あ!アラン!あのクソ王子はなにかしなかった?」
「大丈夫だよお姉ちゃん。それより、早くこれを脱ぎたいだけど」
アランの服装は完全に女の子の服装であり、アランからすればかなり羞恥心の欠片もない服装だった。
「はい、じゃあ、みなさんは出ていてくださいね」
「え?ちょっ!」
するとそこに居たビクトリアが皆を部屋から追い出した。
だが、そこで一人の男が止めに入った。
「はい、ストップ。君も出ていってくれるかい?君も女性だろう?」
「いえ、私はただのメイドです。異性だろうが関係ありません」
「では、これは命令だ。ロイヤルルームでは王族が絶対だ」
そう言って、アーサーはビクトリアも追い出した。
「ありがとうございます、アーサーさん」
「いや、君が困っていたからね。着替え終わったら、少し話をしたい」
そう言うと、部屋の中にあった椅子に座り、紅茶を飲み始めた。
アランが着替え終わると、一つの違和感に気づいた。
「なんでお姉ちゃんにベルが居るんですか?ここは王族しか入れないはずじゃ...」
「不法侵入」
「あ...」
「まあ、それはおいといて、もしかしないでも、ミオラを滅ぼしたのは君だろう?」
「え!?そ、それは...」
「父上が連れ出したのだろう?」
「うっ...そうです...」
「ギルド長が怒っていたよ『何勝手にうちの子を使って国を滅ぼしてんだよ』って」
「返す言葉がありません...」
(うちの子以外は...)
実は、アーサーが言っていたことは、先程シーザスからも言われていた。
「別に君がしたことに怒っているわけじゃないんだよ。でも、国を滅ぼす、つまり大勢の人間を殺すということは、それなりの覚悟があるってことで良いんだね?」
「はい」
「即答か」
「これだけは言っておきます。僕は敵に対して、自分の大切な人達を傷つける者たちに対して、容赦はしません。それが、たとえ国王陛下であろうと、父上であろうと」
アランは冷徹で、覚悟の決めている戦士の目をしていた。
「そうかい。その言葉が聞けただけで今日は良かったよ。では、本題に入ろうか」
「え?今のが本題じゃないんですか?」
「違うよ。今日の本題は我が弟についてだ」
「あ、そっちか」
すると、なにやら、部屋の扉が奇妙な音を奏で始めた。
「ん?」
その音は更に大きくなっていった。
「ま、まさか、あいつら...」
アーサーの予想は案の定的中した。
扉が限界を迎え、粉々になると、すぐに二人の女がアランに寄って来た。
「アラン!?ミオラを滅ぼしたのってあなただったの!?私今、すっごく大変なだけど!」
「すごい!流石私の自慢の弟!お姉ちゃんが褒めてあげる!」
「ちょ、二人とも待って!」
だが、二人は止まらずに、アランを壁際まで追い込んだ。
そこで、二人を止めるものが現れた。
「二人とも、頭を冷やしなさい。アランちゃんが困ってるじゃない」
ベルージュである。
その声を聞いて二人ともやっと我に戻った。
アーサーが二人をアランから引き剥がし、近くにある椅子に座らせた。
「それで、君たちは私達の話を盗み聞きしていたのかい?」
「...」
「...」
二人ともうつむき、黙り込んだ。
「それは、聞いていたと受け取ろう。それで、どこから聞いていたんだい?」
「...最初から...」
「...同じく...」
アーサーは頭を抱えて言った。
「お前らは子どもか!」
いつものマリアであれば、言い返していたが、この場では分が悪かった。
「で、ベルよ。逃げきれると思ったのか?」
「なんのことでしょうか」
「あくまでしらを切るつもりか。でも、どうせ君も聞いていたのだろう?」
「さあ、真実はどうでありましたか...」
そもそもベルージュは、国王からこのことを聞いていたので、今更驚くこともなかった。
その言葉にアーサーは更に頭を抱えた。
「アラン君にプライベートはないのか?」
「確かに...今気づきました」
「遅いね...」
アランは初めて気づいた。
マリアやビクトリア、ベルージュが勝手に部屋に入って来れること。
勝手に写真を取ること。
その悪行の数々を...
「お姉ちゃん、ビクトリア、ベルージュ、この部屋出禁ね」
「嘘!?ちょ、待ってよアラン!」
「お、お待ち下さい!私は何も悪いことはしておりません!」
「な、なんで!?」
「自覚がなさそうだね...」
「いっそ、空で寝るか...」
「ま、まあ、そんなことより、アラン、少し話してもらえる?」
「...そうだね」
それから、事の発端から、その終局まで、アランは全てを洗いざらい話した。
「なるほどね...まあ、それなら少しは許してあげるわ」
「ベル、後でしばくからね」
「派手にやりましたね...」
* * *
色とりどりの花畑の中に、二人の男が立っていた。
一人はオドオドした成年。
もう一人は、髭を生やした白髪の男。
その二人の間に夕日が二人を照らすように位置していた。
「頼んでいた件についてだが...」
「は、はい...え、えっと、結論、から、申し上げると...助けるのは、難しいかと...」
「...そうか」
そう言って、その男は去ろうとした。
「で、ですが!まだ、他の国に、あるかも、知れません!た、例えば、東の国...」
「...それならもう調べている」
「...そう、ですか...」
再び、白髪の男は歩みを始めた。
「ば、バーナードさん!」
「...なんだ、まだようか...」
「い、いえ...ただ、その、あ、諦めないでください!」
「...」
オドオドした男は、必死でバーナードを励ました。
だが、バーナードの心にはもう、響かなかった。
「あ、あと、一つ、だけ...きょ、今日、面白い、人に、会いました...黒髪で、透き通ったような、海、のような、瞳、の人に...」
「...そうか...参考にしておこう...」




