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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
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「あの事件」

それは今から約10年前のこと。

私はその頃、色々なものに興味を持ち、すぐに行動を起こした。

「ねぇ!こんどはあそこ行きたい!」

「だめですよ、お嬢様。今からバイオリンのレッスンですよ」

「やだ!先にあそこ行ってから!」

そう言って私は、メイドのエイミーを連れ回していた。

そんな毎日がたまらなく楽しかった。

何かに縛られることなく、世界に羽ばたく。

それが、私の性に合い、夢であった。

「なあ、少しは商会の仕事に興味を持ってくれよ!お前には才能があるんだ」

「私は商会の仕事なんてしないわ。私は世界中を旅したいの」

「それじゃあ、この仕事はうってつけだな。取引は国内だけじゃない、世界中で取引をする。どうだ、やる気になったか?」

「世界中...」

それから、私はお父様の仕事を見学するかたわら、世界を旅して周った。

私はその中で、商人の才能が開花し、少しではあるが、仕事を任せられるようになっていた。

だが、私はそんなことでは、情熱は消えず、興味のあるものには一直線に走って行った。

そこで、起きてしまった。あの、事件が。

私はいつも通り、お父様の仕事に同行し、国外に居たわ。

「あ!エイミー!あそこに行こう!」

「お、お待ち下さい!お嬢様!」

そう言って、私が、少し人気のないところへ進んでいくと、待ち構えていたように、盗賊たちに見つかってしまった。

「おい、お前、ターナー家の令嬢だな?丁度良かったよ。お前を人質に捕れと依頼があってな!」

「お嬢様!」

その盗賊たちはレベッカたちを捕まえようとしたが、エイミーがそれを防いでくれた。

「お嬢様!お逃げ下さい!」

「で、でもエイミーは...」

「おいおい、俺らのことは無視か!」

そう言って、盗賊たちは持っていた短剣でエイミーを刺殺してしまった。

私の、わがままのせいで。

そこで、初めて理解した。

自分がわがままを言うのはどれだけ危険か。

どれだけ、周りに、迷惑がかかるか。

そして、もう一つ、わかったことがある。

人間は脆い。ただ、一人の少女を守るためにエイミーは命を落とした。

「エイミー!」

そのあと、幸いレベッカの悲鳴を聞きつけた、近くの兵士が気づき、盗賊たちを捕縛してくれた。

でも、私の心に空いた大きな穴は埋まらなかった。

「私のせいで...エイミーが...」

エイミーは私が生まれた時から、私のことを世話をしてくれていたメイドだった。

そんなエイミーを私は祖母のように感じていた。

でも、そんなエイミーを、私は失ってしまった。

私自身のせいで...

「レベッカ、落ち込むのはわかる。でも、それはエイミーが望んだことか?エイミーは言っていた。『私はお嬢様の元気で、無邪気で、あの楽しそうなキラキラとした目が、世界で一番好きです』お前は、この言葉を聞いても、ずっと自分の殻にこもっているつもりか?」

「そ、それは...」

「ゆっくりで良い。一歩ずつ、踏み出そう」

お父様は私にそう言って、元気づけてくれた。

そこで私は少しずつ、立ち直れた。

でも、心の穴は塞がらなかった。

以前は興味のあるものには一直線だった私が、今では、静かに本を読むおとなしい少女。

二度と、大切なものを失わないようにするため。

二度と、同じ過ちを繰り返さないため。

 * * *

「これが私の過去よ。どう、満足した?」

「ねぇ、なんで自分を偽るの?」

「偽る?まあ、確かに自分が本当にしたいことは違うかも知れない。でも、前の自分に戻ったら、また、私は失ってしまう。私の大切なものを」

「ふーん、それは僕が居ても?」

「え?そ、それは...」

「ねぇ、昔の君に戻ってよ。僕は昔の君が好きだな」

「へ?」

そこで、初めてレベッカは、アランが何故抱きついたか、何故この話をしているのか気づいた。

(そうか...興味があるものには一直線の私が、唯一あの時から、一度も興味を失わなかった、一度も忘れたことがなかった、私の初恋...)

「おいで、レベッカ」

レベッカの目には、自然と涙が溢れていた。

レベッカはすぐにアランに抱きつき、アランはレベッカを優しく包みこんだ。

「目に光が戻ったね、レベッカ」

「うん...」

そんな二人に、密かに殺気を向ける者がいた。

「何故ですか、アラン様...」

そこへ、一人の男が走ってきた。

レベッカの父、ヘンリーである。

「レベッカ!大変だ!」

ヘンリーが庭園に入ろうとすると、その光景が目に入った。

「あ...こりゃまずかったかな...」

「あ、すみません、お宅のお嬢さん、借りてます」

そこで、レベッカも気づいた。

「お、お父様!?」

「すまない、せっかくのところを邪魔してしまって...」

「あ」

「あ」

そう言うと、二人は顔を赤くし、すぐに離れた。

「そ、そそ、それで、今日はどうされたのですか?」

「あ、ああ、えっと、ミオラが消し飛んでな...」

「ミオラが消し飛んだ?それはどういう意味ですか?」

「そのまんまの意味だよ...なんか、ミオラの王都が丸ごと消えたらしい...」

「え!?それって、不味いですよ!私達の商会の取引先もあるじゃない!ご、ごめん、アラン、私達これから忙しくなるわ...って、どうしたの!?」

アランを見ると、顔が真っ青になっており、まるで風をひいたように、震えていた。

「い、いや、なんでもないよ...」

「そ、そう...じゃあ、私は行くね」

そう言って、レベッカは去って行った。

アランが少し庭園にあるベンチで休んでいると、ビクトリアがやって来た。

「アラン様、もしかして、恋をしてますか?」

「え、え?な、なにを言ってるの?」

「全部見てましたよ」

「おぅ、まじか...恋ってわけじゃないんだけど、レベッカの目に光が戻ってね...」

「そうですか。それで、どうするのですか?ミオラを吹き飛ばしたのはアラン様でしょう?」

「へ?な、な、なんのことかな?」

アランの声は上ずっており、アランの嘘は誰が聞いても見抜くことができるんものであった。

「まあ、別に言いませんけど、私にはアラン様の気持ちなど簡単にわかりますからね!」

そう言って、ビクトリアは去って行った。

「これからどうしよう...」

 * * *

それから数日は、レベッカの事務作業につきっきりであった。

そしてついに、あの土曜日がやって来てしまった。

「お、おまたせしました!」

「やあ、

「アレン、今日はよく来てくれたね」

「は、はい!それで、今日はどこへ行くのですか?」

「今日は僕の行きたい場所があるんだ」

そう言って、フェンデスはアランをエスコートし、馬車に乗った。

馬車に乗ってから数十分経つと、綺麗な花畑が見えてきた。

「ここが今日、君と来たかったところだ。この王国で最大の花畑、フロスエイジだ」

「すごく、綺麗ですね...」

馬車の周りには広大な花畑が広がり、色とりどりの花が広がっていた。

その中には、今の季節には咲かない花もあった。

「あれは...ヒマワリ?季節は夏だと思うんですけど...」

「ここは、ある魔術師が管理していてね、気温や湿度を管理して、一年中いつでも色々な花咲かせることに成功したんだ」

「なるほど。それはすごいですね」

二人が馬車を降りると、数人の男がやって来た。

「お久しぶりです、殿下。すみませんが、うちのボスはあいにく...」

「わかっているよ。今日は、この子と一緒にここを見に来ただけだから」

「そちらは?」

「えっと、アレンと申します。今日はよろしくお願いします」

「そうですか。では、ごゆっくりしていってください」

二人が歩いていくと、美しい花に、少し風が吹き込み、花吹雪になった。

「綺麗ですね...」

「ああ。僕が一番好きな場所だ」

そんな、他愛のない話をしていると、小柄な男が前からやってきた。

「こんにちは、ミョウリさん」

「!?こ、こ、ここ、こん、にち、は...」

「今日はお邪魔させていただいてますね」

「...」

その男は、少しだけ頷き、通り過ぎようとした。

だが、アレンを少し見ると、立ち止まった。

「あ、あ、あの、なにか、武術でも、習っていますか?」

「え?ど、どうしてそう思ったのですか?」

「え、えっと、君の歩き方が、戦いに慣れてる、っていう感じがしたから...」

ミョウリは静かな声で喋っていて、あまりフェンデスは気に留めなかった。

だが、アランは心の中でかなり動揺していた。

(まじか!?歩き方だけでわかるなんて、と、とりあえず言い訳をしないと!)

「えっと、幼少期の頃に少しだけ...でも、すごいですね!ミョウリさんは歩き方を見るだけで、わかるなんて!」

「もしかして、アレンはミョウリさんを知らない?」

「えっと、すみませんが、存じ上げないです...」

「この人は四天王の一人、英知の魔賢だよ。この大陸の中では、彼の知識のかなうものは居ないと思うよ」

「そ、そんなにすごい方だったなんて...先程までのご無礼をお許しください!」

「え、えっと、だ、大丈夫、です...」

「ミョウリさんは少しシャイな方なんだ。だから、これが通常だと思って構わないよ」

それから、アランとフェンデスはミョウリと別れ、花園の中にあるテラスで軽い食事を取り始めた。

「こ、こんなに豪華な食事を、僕が食べてもよろしいのですか?」

「君のために作ってもらったんだ。どうぞ食べてくれ」

「本当ですか!?そんなことしていただなくても、良かったですのに...」

「君には色々なことで助けてもらってるからね。そういえば、こないだの話なんだけど、君は誰に仕えているんだい?」

「誰に...」

(うーん、アーサーさんっていうのも、あれだしな...どうしよう...あ、あの人にしよう!)

「えっと、ギルド長のシーザス様です」

「ギルド長のメイドだったのか...ありがとう、君の話が聞けて僕は嬉しいよ」

「そ、そうですか...それより、あれから少し時間が開きましたが、かなり顔色が良くなりましたね」

「そ、そうかな...ま、まあ、アレンに言われてから、あまり無理はしないようにしてるんだ」

「それは良かったです!あの時は、すごく疲れていましたからね。でも今は、すごく楽しそうです。なにか安心できる出来事でもあったのですか?」

アランはフェンデスにさり気なく問うと、フェンデスは答えた。

「そうだね。僕が確実に王座を取れる計画が完成したんだ。その時は、僕のもとに来てくれるかい?」

「えっと、それはつまり...」

「一歩ずつで良い。僕は君と居る時間が何より楽しいんだ」

「...わかりました、シーザス様に相談してみます」

そう言うと、アランは小声でフェンデスに話しかけた。

「少し遠いですが、数人の男がこちらに向かってきています。あちらは殿下のお客様ですか?」

フェンデスが後ろの様子をうかがうと、フェンデスは言った。

「招かれざる客人だね」

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