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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
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「姉様」

アラン達は、王宮へやって来た。

「アラン、そろそろ涙を止めろ。お前は別に悪くない」

「で、でも...」

「なぜお前は自分を否定するのじゃ。しょうがないじゃろう」

「確かに...」

「アラン様、元気をだしてください!アラン様はどうせ、そこの人にお願いされたのでしょう?」

「え?う、うん...」

ビクトリアがそちらを見ると、ソルブとプラネスはすごく申し訳なさそうであった。

少し歩くと、アラン達は王宮の応接間へとやって来た。

「まず、状況を整理しよう。私達がミオラに行っている間に、マギアが襲われたと」

「そうじゃな。妾とビクトリアは侵入を手引きした者を追っていたのじゃ」

「なるほど。その手引きした者は見つかったのか?」

「いや、妾たちでも見つけれんかった」

「ビクトリアの探知をくぐり抜けるってことは、かなりの手練だね」

話を聞くと、魔族たちは王都に潜伏しており、マギアの中に居る誰かが手引きしたということだ。

だが、その手引きをした者はわからない。

魔族たちの目的は、アランが不在の間に、人質と、魔王であるアリシアを連れ戻すのが目的だったらしい。

「つまり、僕には監視の魔族が居たということですか?」

「そうなるね。でも、アランくんでも気づかないってことは、幹部レベルってことかい?」

「探知魔術で言えば、僕はそんなに強くありません。ビクトリアの方が得意です。僕ができるのは、対魔族と、対人間のみです」

「なるほど。手がかりは無しか」

「いや、そうでもないぞ。今回の魔族は幹部直属ではない」

「それは、どういうことだ?」

「幹部直属の魔族はもっと強い。これは推測だが、あの魔族たちは捨て駒として使われたのじゃろう。もし人間に対して勝利できたなら運が良かった、もし敗北しても、相手の力量が量れた、ということで予想通り、ということじゃな」

「なるほど。相手はかなりの策士か」

「多分じゃが、妾の妹じゃろう。あやつは頭が切れる奴じゃからな」

「妹?」

皆が困惑していると、アリシアが説明し始めた。

「妾の妹の名はアリエルじゃ。元幹部であり、多分じゃが現魔王じゃろう」

「現魔王?魔王が新しく誕生したということか?」

「そうじゃな。じゃが、アリエル単体ではそんなに強くない。妾とセットで本領を発揮する。じゃから、アリエルは妾を取り戻したいのじゃろう」

「そうなんだ。そういえば、みんながアリシアのことを怖がってたけど何したの?」

「ただ、魔族たちを殺しただけじゃ」

「そ、そう...」

そう言っていると、ひとまず治療を終えたアーサー達がやってきた。

「先程は本当にありがとうございました。私がマギアの生徒たちを代表お礼を申し上げたいと思います」

「それにしては足が震えているがな」

生徒会の者たちは皆、アリシアの強さに恐怖を抱いていた。ただ、一人を除いて。

「ありがとうね、アリシア。こんど美味しい料理をエレンに頼んでおくわ」

「本当か!?人間の食べ物は美味いからな」

いつものアリシアに戻り、アーサーたちは少しホッとしたようだ。

「今日は時間をとらせて悪かったな。今日はゆっくり休んでくれ。あと、今日から一ヶ月ほど学校の寮は使えないからな」

「え!?家、どうしよう...」

「私の家があるじゃない!そもそも、私の護衛なんだから、どっか行かないでよね」

「え、あ、うん...」

そんな会話を聞いていると、マリア達が頬を膨らませていた。

「じゃあ、私もレベッカの家に住むわ!それに、一番にお姉ちゃんのところに来なかったの、怒ってるからね!」

「あ、あれは...」

「そうよ!アランちゃん、この責任、どう取ってくれるのかしら?」

「うっ...」

「陛下、私の護衛はどうするのですか?」

「確かに...なら、いっそ、レベッカとアランくんはこの城に住むかい?」

「え?良いんですか?」

「ああ。そちらの二人も良ければ」

「なんじゃ、うまいものが食えるのか?」

「そうですね。私は良いですよ」

皆はそう言っていたが、プラネスだけは、震えていた。

「どうしたのだ、プラネス」

「い、いえ、何でもありません...」

「そうか。なら、その方向で頼んだぞ」

それから、アランとレベッカ達は屋敷に戻り、王城へ引っ越す準備をしていた。

「でも、なんで、アランは私に抱きついてきたの?」

「え、そ、それは...」

「ふーん、まあ、別に私は嬉しわよ。毎日しても良いくらい!」

「そ、そう...」

そんな話をしていると、ビクトリアとエレンが出てきた。

「アラン様、準備が整いました」

「馬車をご用意しています。どうぞ、こちらへ」

「じゃあ、行きましょうか」

そこにアリシアもやって来た。

「城では美味いもんは食えるのか?」

「王族の城だから、美味しいものが出ると思うわよ」

「そうか、なら速く行くのじゃ!」

そう言って、アリシアは元気に馬車に乗り込んだ。

「大丈夫かな...」

「怪しいわね...」

そう言いながら二人も乗り込み、馬車は出発した。

「王城って言っても、僕が居ても大丈夫なの?父上とかに見つからない?」

「そこは安心して良いわよ。私達はロイヤルルームに住むことになるから」

「ロイヤルルーム?」

ロイヤルルームは王族しか出入りが許されていない区画のことを言う。

なので、アランの父、バーナードや、他の者達に接触を許すことはないということだ。

「あ、でも、第三王子はまずかも知れないわね」

「あ、確かに...また女装するのは嫌だよ?」

「どうかにして、誤魔化しておくわ」

「お願いね」

そんなことを話していると、馬車は王城の中へと進んでいった。

馬車が停車すると、アーサーとソルブ、そしてプラネスが出迎えてくれた。

「アラン君!ようこそ我が家へ!」

そう言って、アーサーはレベッカ達をそっちのけでアランを連れて行ってしまった。

「あ...行っちゃった...」

「ま、まあ、とりあえず、君たちには先日の戦いもあるから、少し止んでくれ」

「恐れ入ります」

レベッカはエレンとアリシアを連れて、部屋へ向かって行った。

「君は行かないのかい?」

「いえ、私はそちらの方にようがありますので」

ソルブがプラネスを見ると、ひどく震えていた。

「ぷ、プラネス?どうしたのだ?」

「い、いい、いえ、な、何でもありません...陛下は殿下を止めてきてください...」

「そ、そうか」

ソルブはそう言って、その場を去って行った。

「あ、ああ、姉様!」

「少し話をしましょうか」

ビクトリアはプラネスを引きずりながら、人気のないところへと移動した。

「そ、そ、それで、今日は、どのようなご要件で...」

「あなた、アランに触れたでしょ」

「え?」

「私でもお触り厳禁なのに!」

「え?」

「あなたは私を差し置いて、アランに触ったのよ」

「えっと、ちょっと、状況を整理しますね。まず、姉様が怒っているのは、私がアラン殿に触ったからということですか?」

「それだけじゃないわよ。どこであなたはアランと仲良くなったの!」

「え、えーと、陛下と一緒に居たら?」

「そう。とりあえず、一回天界に返すとしましょうか」

そう言って、ビクトリアは剣を抜いた。

「ご、御慈悲を!てか、そもそも姉様はなぜ地上に居るのですか?」

「それは、一つは任務のため。もう一つはアランに会うためよ」

「任務?」

「あなたには関係ないわよ」

そう言って、ビクトリアはプラネスの首を飛ばそうとした。

「ま、まじで待って!俺は姉様の秘密を知っている。それを言ってもいいの?」

「ならなおさら、ここで殺して口封じするわ」

「ちょ、そしたらアラン殿が悲しみますよ?」

「...」

ビクトリアの動きが止まった。

「と、とりあえずこのことは秘密にしておきますので...」

「そう」

そう言って、ビクトリアは去って行った。

「はぁ...まじで死ぬところだった...でも、あの姉様がなぇ...」

「なにか言ったかしら」

もう行ってしまったと思われたビクトリアが、突然現れた。

「い、いえ、何でもありません!」

(まじで怖ぇ...あの目はまじで殺す目だったぞ...)

そう思いながら、プラネスは城に戻った。

プラネスがビクトリアにしばかれている頃、アーサーはアランを連れて城を周っていた。

「まずここが、君たちが1ヶ月間住む部屋だ。こっちがレベッカで、アラン君の部屋はこっちだ」

「ん?アーサーさん、なんか、やけに物が多くないですか?」

「そりゃあ、私の部屋だからね」

「え?」

「もちろん、アラン君は僕と一緒の部屋だよ?」

「ちょっと待った!」

そこに後から合流したレベッカが現れた。

「そもそも、アランは私の護衛です!殿下はそのおまけのようなものです。なので私との相部屋でお願い致します」

「それはできない。この城の中では優先順位が高いのは私だ」

「では、アランに決めてもらいましょう。アラン?どちらが良い?」

「えっと、それは...」

「もちろん、一番に抱きついてきた私よね?」

「うっ...」

「いやいや、アラン君?もし選ばなかったら、わかるよね?」

「うっ...」

二人が、アランに詰め寄っていたところに、ソルブがやって来た。

「二人とも、アラン君は一人部屋だ」

「な!」

「それは...」

「なんだ?わしに異論があると言いたいのか?」

「わかりました...」

「よろしい」

アランはやっと、一息できるようになった。

それからアランとレベッカは、アーサーたちに案内してもらい、ロイヤルルームの中の構造を理解した。

「これなら、外に出なくても大丈夫そうですね」

「そうだね。厄介な人間に会わないと思うよ」

そう言っていると、目の前から見たことのある人影がやって来た。

「これはこれは、ターナー嬢ではありませんか。どうしてこちらに?」

そう声をかけたのはフェンデスであった。

「今日から一ヶ月、ロイヤルルームに住まわせてもらいます。どうぞよろしくお願い致します」

「もしかして、兄上はターナー嬢と婚約されたのですか?そうでないと、この状況は説明できかねますよね」

「私と殿下は婚約していませんわ。そもそも、私には意中の殿方が居ますので」

そう言って、レベッカはアーサーたちを連れて去ろうとした。

「ん?」

だが、そこでフェンデスは一人の男を呼び止めた。

「ねぇ君、アレンちゃん?」

「へ?」

アーサーたちはその言葉を聞いて凍りついてしまった。

「なんで、アレンが居るの?」

「えっと、いや、その、そう!僕は双子の兄です!」

「双子の兄?」

「はい!アレンは僕の妹です!よく殿下の話をしていますよ」

「そ、そうなんだ...なら、アレンに来週の土曜日に会えるか聞いてくれるかい?」

「わ、わかりました...」

「時間は午前ね」

そう言って、フェンデスは去って行った。

「まじで死ぬかと思った...」

「素晴らしい対応力だよ、アラン君」

「アラン、本当に行くの?」

「まあ、情報を聞き出せるから行こうかな」

「ふーん...」

レベッカは頬を膨らませながら、行ってしまった。

それから、アラン達は自分の部屋に戻り、持ってきた荷物を出していた。

「ん?これは...」

アランの荷物の中に、見慣れない魔導具があった。

「これは追尾術式?でも、なんで?」

どうしてこの魔導具があるのか、アランが考えていると、ビクトリアとアリシアが入ってきた。

「どうしたんじゃ?そんな魔導具持っていたか?」

「そうだよね。僕のじゃないよね」

「あ、それは私のですね」

そう言って、ビクトリアは魔導具を回収した。

「それ、追尾術式が書いてあったけど、何に使うの?」

「そんな大層なものではないですよ。ただ、アラン様の位置情報を知りたいだけですので」

「え?」

「アラン様は素晴らしい美貌の持ち主なので、良からぬ者が寄って来ます。現にそこに...」

そう言って、視線を移すと、そこにはレベッカの姿があった。

「え!?ちょ、何?」

「レベッカは良からぬ人じゃないよ。レベッカ、どうしたの?」

「少し、時間ある?」

「うん。じゃあ、少し行ってくるよ」

そう言って、アランはレベッカと一緒に部屋の外へ行ってしまった。

「若者は良いな。お前はどうなんじゃ?まあ、聞くまでもないか」

「ええ、今にもこの手にある魔導具を粉砕しそうです」

アランとレベッカの二人は、王城の中にある庭園にやって来た。

綺麗に整えられており、真ん中には大きな噴水があった。

庭園の至るところには綺麗な黄色いバラが咲いていた。

「ねぇ、なんで昨日は私に抱きついてきたの?」

「い、いきなりだね...」

「だって、そうでしょ?あのアランが抱きついてきたもの。なにか理由があると思ってね」

「そうだね。正直言うと、僕もわからない」

「わ、わからない?」

「うん。でも、レベッカを見たときね、すごく安心したんだ。それに、なにか懐かしいような」

「懐かしい...」

「ねぇ、なんで昔と違うの?君はそんな性格じゃなかったよね」

「へ?」

アランは鋭い目つきをし、レベッカを見つめていた。

「僕は昔、君と会っている」

「な、なんでそれを覚えているの?」

「ビクトリアの精神干渉はかなり強かった。でも、そんなものでは僕の精神はいじれない。昔の君は、人の話を聞かなかった。言葉より先に体が動いていた」

「そ、それ悪口じゃ...」

「でも、元気だった。楽しそうだった。目が輝いていた。でも、今の君の目は暗い。まるで、深淵に一人残されたように」

「な、何を言っているの?」

「僕はね、あの時、少しだけ、レベッカの目に光が映ったから。だから、そんなレベッカに安心して、ホッとして、抱きついたんだと思う。本当のレベッカに会えたから。ねぇ、教えて、なにが君をそんなにしてしまったの?」

「少し、私の過去について、アランに話して起きたいことがあるの」

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