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魔法使いの家出  作者: 羽良 凪都輝
第4章 王立魔術師学校マギア 前編
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「魔王アリシア」

「アーサー!」

アーサーは魔族によって追い詰められ、その魔族は剣を振りかぶり、アーサーを斬り捨てようとしていた。

だが、その時、それは起こった。

へルックの目の前が止まった。

(は?どうなってんだ!?白いオーラも出てるし、まさか、俺、アーサーが死ぬのが怖くて、スローモーションにでもなってんのか?)

へルックがそう考えていると、一人の足音が後ろから聞こえてきた。

「人間にしては上出来じゃな」

(この声は確か、アランの使い魔のアリシアか?なぜだ?これはスローモーションで...)

「違うぞ。妾が皆の動きを止めているのじゃよ。まあ、正確には遅くしていると言ったほうが正しいがな」

(何を言ってるんだ?動きを止める?そんな魔術も魔法も聞いたことがないぞ)

「そうじゃな。妾が使ったからな」

そう言って、アリシアはアーサーの元へと向かった。

「えっと、確か名前はアーサーとか言ったな。人間にしては上出来じゃ。上位魔族にここまで傷を負わせるとはな」

しかし、その声に返事をすることはなかった。

「なぜ喋れないかって?それは、妾がそうしているからじゃぞ」

皆の動きは止まっていた。

だが、一つだけわかることがある。

人間も魔族も、恐怖している。

たった一人の魔族、他の魔族たちに比べれば、容姿は幼く、見た目は少女であった。

だが、本能が感じていた。

誰が強者で、誰が弱者か。

「妾の名前か?ようじゃろう、名乗ってやる。妾の名は、魔王アリシア、お前達人間を私的な用事で助けに来た」

魔王アリシア。

千年の時が経ち、名前も容姿も忘れられてしまった、伝説であり恐怖の代名詞、魔王の名。

ここに居る人間たちが考える魔王は、似ても似つかないだろう。

だが、理解はできた。

圧倒的な存在、圧倒的恐怖、圧倒的な殺意、そして、圧倒的な力。

彼女を前にして、初めて魔王というものが、どういうものか理解できるだろう。

「お前、どこかで見たような気がするな」

アリシアが何度か見ると、何かを思い出したように話しだした。

「あ!お前、フェンネスの息子か!顔も体つきも、性格も、よく似ておるな!」

そう言うと、魔族の首が宙を舞った。

「奴には世話になったからな、フェンネスによろしく頼んじゃぞ。地獄に居るだろうからな」

その光景を目の当たりにして、人間も魔族も恐怖した。

たった一人の少女に自分の命が握られている。

容姿とは裏腹に、冷淡な性格や、口調、アリシアの全てに恐怖を抱いていた。

あまりの恐怖心に、人間や魔族に問わず、意識を失う者もいた。

「そうなんじゃよ。妾の主はどこかに行っちゃったし、なにか知らぬか?レベッカ」

そう言って、アリシアはレベッカの方へ進んでいった。

「レベッカもわからぬか。とりあえず、ここの魔族たちは殺してしまうぞ」

そう言うと、アリシアは魔族たちの居る方へ向かって行った。

「んー、骨のあるやつはいなさそうじゃな」

アリシアの歩いた後には、血の海ができていた。

マギアの生徒たちがあんなに苦戦していた魔族たちが、アリシアの手によって一瞬で息絶えていた。

魔族の首が次々と飛ぶ様に、この事件は後にこう言われた。

『魔族の霊園』

(あれは、糸か?)

アーサーがアリシアを観察していると、微弱ながら、手を動かしていることに気づいた。

「そうじゃ。これは螺旋、妾が作り出した魔術じゃ」

そう言いながら進んでいくと、とうとう魔族はたった一人になってしまった。

「お前が指揮官じゃな。ここを襲った目的を言え」

だが、その魔族は無口であった。

「なるほど。妾の主をおびき出すための人質と、妾を取り戻すためか」

そう言うと、アリシアは魔族の首をはねた。

すると、今までアリシアが葬り去った死体から、なにか青白い光が現れ、アリシアのもとへ集まっていった。

「今回はかなりの量じゃな。じゃが、まだあやつにはかなわぬか」

そう言っていると、皆の体が動くようになっていた。

すると、一部の生徒たちはすぐにアリシアに魔術を放った。

「これで俺たちは魔王殺しだ!」

そう喜んでいるところに、一つの悲報が届いた。

「なんじゃ、そんな貧相なもので妾を倒せると思ったのか?都合の良い頭じゃな」

アリシアは、生徒たちの放った魔術を、全て黒炎で燃やしてしまった。

「嘘だろ!?に、逃げろ!」

「どこへ行くのじゃ?売った喧嘩は自分の命で償え」

そう言って、アリシアは生徒たちを殺そうとした。

だが、そこに一人の女が割り込んで、それを止めた。

「やめて、アリシア!」

「なんじゃ、レベッカ」

「あなたの任務は私達を守ることでしょ!それなのにどうして殺そうとするの!」

「売られた喧嘩は買う主義でな」

そう言ったと同時に、近くで爆発音がした。

「またか!」

そう言って、アーサーはすぐに剣を抜いた。

だが、それが間違いだとすぐに気づいた。

「父上!」

そこには、ラファエル王国現国王、ソルブ、その側近のプラネス、そしてローブを被った一人の男が立っていた。

ソルブが話そうとした瞬間、ローブを被った男がレベッカに向かって走ってきた。

「良かった...無事だ...」

「あ、アラ、じゃなくて、彗星の魔法使い様?どうされたのですか?」

「本当に良かった...」

アランはレベッカに抱きつきながらそれしか言わず、涙を流していた。

(はぁ!?なんでレベッカだけなのよ!お姉ちゃんである私に何故来ないの!)

ソルブが話を始めようとすると、プラネスがそれを止めた。

「あそこの者たちを止めてきますね」

そう言って、プラネスはアランのもとへ来ると、アランを引き剥がそうとした。

だが、それは一人のメイドによって阻止された。

「ん?誰だおま...」

「はじめまして、プラネス様」

「あ、あ...」

「喋るなクソガキ」

そのメイドはプラネスにしか聞こえないほどの声でしか話さなかったが、たった一言で、プラネスは固まってしまった。

「申し訳ございません陛下、先に話を続けてください」

「お、おう...では、まず、アーサー、この状況を説明してくれ」

「最初に、まず遠くのところで巨大な光が放たれ、生徒たちがそれにつられ、外に出ました。すると、待ち伏せをされていたようで、魔族たちが私達のことを襲ってきました。そのため、私が指揮を取り、応戦していたところです」

「なるほど、フェンデス、間違いないな?」

「は、はい!ですが、大半の魔族を倒したのはあそこの...」

皆が、アリシアの方を見ると、アリシアは魔族の死体を使い、椅子と机を作り、優雅に紅茶を飲んでいた。

そのあまりの異様さに、皆は怯えていた。

「なんじゃ?」

「ああ...君か...」

「父上、彼女についてなにか知っているのですか?」

「ああ。わしの友人の使い魔だよ」

「使い魔?魔王がですか?」

「魔王?どういうことだ?」

「なんじゃ、妾の主が言ってなかったのか?」

すると、ソルブはアランの方へやって来た。

「おい、ちょっと話がある」

「へ?」

ソルブはアランを無理やり引き剥がし、二人で話し始めた。

「アリシアって、魔王なの?」

「そ、そうですけど...」

「まじか...」

これでソルブは一つわかったことがある。

「お前、本気で国を滅ぼす気か」

「い、いや、そんなことはしませんよ!」

二人が戻ってくると、生徒たちは聞き覚えのある声に、少し疑問を持った。

「なあ、さっきのローブの男、アランに声が似てなかったか?」

「そうだよな。レベッカに抱きついてたし」

「でも、なんで召使ごときが陛下と一緒にいるの?」

「確かに」

生徒たちがざわついていると、ようやく正気を取り戻したプラネスによって、ざわつきが抑えられた。

「では、今回の戦闘に参加したものには、国から補償をだそう。すまないが、学校はしばらくの間、閉鎖させてもらう。それから、魔王アリシア、君に話がある」

「ん?美味しいもんをくれるなら良いぞ」

「わ、わかった...」

そう言って、ソルブはプラネス、アラン、アリシア、そしてビクトリアを連れ、王宮へと向かって行った


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