「彗零星窩蜂」
「彗零星窩蜂」の読み方は「すいれいせいかほう」です。
「彗零星窩蜂」
「これは予想外...わしは悪い夢でも見ているのか?」
皆は空を見上げた。
それもそのはず、昼間にも関わらず、周りは暗く、静まり返っていた。
太陽の光など見えず、見えるのは、綺麗な星空。
夜空に見入っていると、その瞬間、王城が消え失せた。
なにかが空から降ってきたのである。
そして、アランの目の前には広がっていた。
街が滅びるさまが。
彗零星窩蜂。
これは、彗星の雨の上位互換であり、破壊神の奥義。
指定の範囲を星空に変え、そこから無数の星を降らせ、地上にあるもの全てを破壊する。
そして、これには大きな特徴が3つある。
1つ目、この神術は範囲内のものを全て破壊し尽くすまで止まらない。
2つ目、この神術には必中効果がある。
周りにあった建物は空から降り注ぐ星に破壊され、粉々になっていた。
星一つの威力が馬鹿げていた。
少なくとも、ラファエル王国に居る全ての魔術師を集めて防御結界を張っても、たった一つの星も防げないだろう。
それが半永久的に降り注ぐ。
ソルブやプラネスから見ると地獄絵図だ。
だが、アランは違った。
(やべぇ、アラン君はやべぇ、本物の化け物だ...なんでそんな顔ができるんだよ!)
アランの顔は美しかった。
綺麗な星空を眺めている美少年だった。
数秒が経つと、攻撃が止んだ。
「お、終わったか...」
すると、広がっていた星空が一つの球体へと吸い込まれていった。
球体はビー玉ほどの大きさであり、空からゆっくりと降下してきた。
地上に触れた瞬間、アランたちは爆発に巻き込まれた。
3つ目の特徴。
範囲内にあるエネルギーを一つに凝縮し、爆発する。
これは超新星爆発にも匹敵するほどの威力であった。
王都を丸ごと飲み込み、爆風はラファエル王国の王都まで届いていた。
爆発が収まり、ソルブたちが目を開けると、そこには無以外のなにものでもなかった。
もし言い表せると言うなら、巨大クレーターとでも言うのだろう。
「王都が...」
「予想外過ぎますね、これは...」
「いやー、疲れた...魔力があと少ししかないですよ。」
「そんなふうには見えないがな...」
ソルブの目には、マリアに匹敵するほどの魔力量が見えた。
「彗零星窩蜂はめっちゃ魔力を使うんですよ」
「そ、そうか...」
すると、プラネスが異変に気づいた。
「アラン殿、耳飾りが黄色く光っていますが」
「え?」
その瞬間、アランの顔がみるみる青くなってきた。
「やられた!まずい!」
「どうしたのだ?」
「敵襲です!場所は王立魔術師学校マギアです!」
* * *
アランがミオラ王国の王都を吹き飛ばした頃...
「魔王様、潜入していた魔族との連絡が途絶えました」
「彗星の魔法使いのか」
「はい。どうやら、奴が王都を丸ごと吹き飛ばしたようで...」
「まじか...でも、これは好機だ。待機させていた部隊を動かしてくれ」
「承知いたしました」
王立魔術師学校マギアでは大混乱が起きていた。
「な、なんだ!?向こうの空が暗いぞ!」
「すごく光ってる...」
休日の生徒たちが見入っていると、いきなり爆発音がした。
「て、敵襲だ!」
外を見ると、大勢の魔族たちがこちらへ魔法を放っていた。
「応戦するぞ!」
アーサーを中心とし、近くに居た生徒たちは魔族たちと戦闘に入った。
魔族たちもマギアの生徒たちも統率が取れており、何も知らない者からするとただの戦争のように見えるだろう。
戦況は一見互角。
だが、指揮官たちの目には違って見えた。
「相手は人間、まともにやりあえているのは、あそこの五人か。ほかの生徒はそこそこといったところか」
「体勢を崩すな!マリア達は他の生徒達の援護に入れ!絶対に単独行動を取るな!」
(私達の魔術では魔族の魔法の発動速度には叶わない...このままでは数で押し切られてしまう。なぜこんな時に限ってアラン君が居ないんだ!)
アーサーがそう考えていると、魔族の中でもやたら強そうな者がやって来た。
アーサーはすぐに相手の力量に気づき、他の魔族たちはマリア達に任せ、アーサーはこの魔族に集中した。
「お前、上位魔族か?」
「いかにも。そう言うお前は、ここの指揮官といったところだな。お前を殺せば統率が崩れるだろう」
「殺せたらの話だな!」
アーサーは光の矢を作り、魔族に向かって攻撃した。
だが、魔族は持っていた剣で一振りしただけで、アーサーの魔術は薙ぎ払われてしまった。
「ちっ、魔剣か」
「ほう、一目で魔剣と見抜くとは大したものだな」
「そりゃどうも」
そう言いながら、アーサーは更に光の矢を作った。
「何回やっても結果は同じだ」
魔族はそう言いながら、光の矢から身を守った。
「なるほど、数で押し切ろうと考えたのか」
「それだけじゃないぞ!」
そう言って、指を鳴らすと、魔族の足元から炎が現れ、魔族は炎の海に飲みこまれた。
(頼むぞ、傷一つぐらいついててくれよ)
だが、その願いは儚く消え失せた。
「これだから魔剣は嫌いなんだ」
魔族を見ると、アーサーが作った炎が手にある剣へと吸収されているように見えた。
「この温かさは丁度良いな」
「ぬかせ!」
アーサーはすぐに次の準備をした。
「ホーリーレスト!」
すると、地面から光の鎖が現れ、魔族の手足を封じた。
「ホールプルグネンス!」
そこに光の槍を放ち、魔族を貫こうとした。
だが、魔族はそれをただの筋肉だけで防いでしまった。
「硬すぎだろ!」
アーサーが驚いていると、魔族は繋がれていた鎖を引きちぎった。
「所詮は人間、魔族には勝てるわけなかろう」
そう言って、魔族はアーサーとの距離を詰め、蹴り飛ばした。
「ぶはっっ...」
(い、今ので、何本かいかれたか...このままだと、負ける...みんなも他の魔族の相手で手一杯か...あれさえあれば...)
そう思いながら、なんとか立ち上がったが、吐血し、今にも意識が飛びそうであった。
「兄上!」
横を見ると、校舎から中等部のフェンデス達も外に出て来ていた。
「できた弟だな...」
「良いんですよ、ここで見殺しにしても。今は緊急事態なので協力してあげているだけですから」
「それは困るな。フェンデス、私はこれからあの魔族と決着をつける、お前は負傷した者達を校舎の中へ運んでくれ」
「で、ですが私も加勢に!」
「馬鹿を言うな!お前が来たところでこの戦況は変わりやしない!私達王族の務めは、国民を守ることだ!ここに居る誰一人として死なせるものか!」
「ちっ、これだから嫌いだ」
そう言って、フェンデスは取り巻きたちを連れて負傷者の元へと向かった。手土産を残して。
「これでお前を倒せるな」
「ハッタリは通用せんぞ」
「ハッタリなんかじゃない!」
* * *
アーサーが上位魔族と戦っている頃、マリア達は他の魔族の相手をしていた。
「メテオスマッシュ!」
マリアが詠唱すると、目の前に居た魔族たちを燃えカスにしてしまった。
「怯むな!魔族たちを押し返せ!」
マリアの言葉に、生徒たちの士気は上がっていった。
へルックが氷魔術で、敵を凍らせ、他の生徒たちがとどめを刺す。
ベルージュは雷魔術を使い、魔族たちを痺れさせ、動きを止めたところに他の者達がとどめを刺す。
皆、連携の取れた動きであった。
レベッカはというと...
「負傷者は私の後ろに来て!」
レベッカの作った水の壁は強力なもので、魔族の魔法でもそう簡単には壊せなかった。
「お、俺達の魔術じゃ魔法に勝てねぇ...」
「な、なんで私の魔術が効かないのよ!」
最初は押し返すことができていたが、生徒たちの疲労や、魔族の強さに段々と押し返されていった。
「スペースプロージョン!」
そこにマリアが古代魔法は、魔族たちを押し返すことはできたが、死に至らしめることまではできなかった。
「あいつら硬すぎんだろ!」
「それに数も多いわ。マリアもかなり魔力を消費してるし、私達がどうにかするしかないわ」
「やるしかねぇか...」
「ほんと最悪」
すると、二人は一箇所に集まり、術式を作り始めた。
「フリーズライン!」
「エレクトロニックレールガン!」
へルックの古代魔法は敵を一直線上に凍らせ、ベルージュの古代魔法はそれを一直線上に破壊し尽くした。
「はぁ、はぁ、きついな、古代魔法は」
「流石に減ってほしいわね」
魔術を放った方向を見ると、確かに魔族は減っていたが、奥から更に魔族が現れてしまった。
「嘘でしょ...」
「マリア!どうすんだよ!」
マリアの方向を見ると、あちらもあちらで手一杯であった。
「まずいな、押されているぞ」
へルックがアーサーの方向を見ると、衝撃の景色が広がっていた。
「アーサー!」
アーサーを見ると、上位魔族と互角に戦っており、二人とも血を流し、ボロボロであった。
「俺はアーサーの援護に行く!」
「へルック横!」
へルックが横を見ると、魔族が剣を振り上げ、へルックに攻撃を仕掛けていた。
(まずい!これじゃあ、魔術が間に合わねぇ!)
へルックは、咄嗟の判断で、賭けに出た。
魔族がへルックを斬ろうとしたところ、それを、へルックは見事に受け止めた。
へルックは、両手で剣をはさみ、そのまま、筋力で剣をへし折ってしまった。
「成功したぜ、真剣白刃取り!」
そう言いながら、へルックは、魔族を蹴り飛ばし、アーサーの元へ向かおうとした。
だが、すでに手遅れであった。
「アーサー!」




