「最強の手札」
アランとソルブが話している一方で、ベルージュも父親のフロムと話をつけに来ていた。
「お父さんは居る?」
「はい。奥の部屋でお待ちですよ」
店員に奥へ案内され、ベルージュが扉を開けると、そこにはフロムが鎮座していた。
「あの子はどうした」
「アランなら用事があるって言って、帰ったわ」
「ふっ、所詮はそこまでの男というわけか」
「はぁ!?アランを馬鹿にしないで!アランはこれまでどんなことをしてきたか知っているの!」
「そんなの知るわけ無いだろう!逆にお前はそのアラン君についてどのくらい知っているのだ?」
「そ、それは...」
すると、フロムは見透かしたように言った。
「結局はお前が人に頼り、事実から逃げようとしただけではないか。自分の力では何もできやしない。そう決めつけている」
「ち、違う!」
「いや、違わないね。現に、お前は自分ではなく、連れてきた男に自分の状況をどうにかさせようとしてきたではにか」
「違う!お父さんは何もわかっていない!」
ベルージュの怒りが言葉だけでは収まらなくなりそうなところに、一人の女性が現れた。
「あなた、ベルをいじめるのはそこまでよ。」
「シャーロット...」
「お、お母さん!」
シャーロットは、ベルージュと似て、かなりの美人であった。
身長も高く、扉の縁に届きそうな程である。
「ベル、お父さんはね、あなたに人に頼るのではなく、自分で行動しなさいと言いたいのよ」
「で、でも!」
「わかってるわ。ベルは何人もの男を連れてくるために、服装や髪型の細部までこだわっているのは知っているわ。それをお父さんに伝えたかったのでしょう?」
「だ、だがそれでは!」
「あなた、あなたはベルの努力を知っているの?毎日食事の栄養素を管理して、一番体や肌に良いものを取っている。朝早くから起きて、メイクもしている。ベルはほとんど寮生活であまり私達のもとで一緒に暮らすことはなかった。でも、その血の滲む努力はベルを見ればわかるでしょう。私の若い頃に劣らないほどの美貌を」
「うっ、それは...」
「いい加減認めたらどうなの?ベルだって頑張ってる。あなたはベルが知らないそこら辺の男に取られるのが嫌なだけでしょう?」
シャーロットの発言は、フロムの的を射るものだった。
「そうだ。私は父親として心配なのだよ。ベルが変な男に絡まれてないか、変な男になにかされてないか。それがすごく心配なんだよ」
「お父さん...」
「なら、やることはわかっているわね?」
「ベル、王宮へ行くぞ!」
「はい!」
フロムは厨房服から、着替え、馬車で王宮に向かった。
(ん?すごい大きい鳥...でも飛竜ではないわね)
二人が王宮へ入ると、何やら慌ただしい様子であった。
(あれ?やっぱ飛竜だった?)
二人が兵士に声をかけようとしたところ、目の前から目的の人物がやって来た。
「陛下!少しお時間をお借りしてもよろしいですか?」
「お!ラッキー!二人とも、期待しててね」
「え?」
そう言って、二人の目の前から去っていった。
「ちょ、ちょっと待ってください!どういうことですか?」
「君の婚約を破棄しに行く」
「え!?そ、それはどうしてそうなったのですか?」
「まあ、それは色々あってね」
「もしかして、アランですか?」
ベルージュはそう聞いたが、周りにアランの姿はなかった。
「それは答えられないな。こちらにも色々あるからな」
「ま、待ってください!それはつまり、あのアラン君が私達のために、陛下に掛け合ったとういことになりませんか?」
「ん?私は一言もそんなことを言ってないぞ?」
「ですが、陛下の発言からすると、そう推測ができるではないですか!」
「まあ、どう推測しても構わない。だが、くれぐれも自分を責めるなよ。これは国の意向だからな」
そう言って、ソルブは去って行った。
「わからない...」
* * *
ソルブとベルージュが出会う少し前...
「彗星の魔法使い」
「つまり、切り札を使えと」
「そういうことです」
ソルブは苦悩した。
(どうするべきだ...もし、この手札を使えば確かに、勝てる。だが、被害がデカすぎる。死人が出るぞ。どうするべきだ...)
「陛下、ミオラのことについては知っていますよね」
「あれか、戦争の準備をしていることか?」
「はい。そもそもミオラの王都は軍事要塞なので吹き飛ばしても問題ないでしょう」
「そうか。まあ、良いだろう、この手札を使おう。今から行くぞ。同行者は、プラネスと彗星の魔法使いのみだ。移動は飛行魔術を使う」
「了解です」
「承知いたしました」
こうして、ラファエル王国、現国王、ソルブの来訪が決まったのだ。
* * *
三人は、アランの飛行魔術によって、一瞬でミオラ王国に着いた。
「はぁ、はぁ、死ぬかと思った...」
「なんですか、これは、拷問の類ですか?」
「ただの飛行魔術ですよ。何へこたれてるんですか?」
「せめて国王を敬ってくれよ...わしはもう老人なのだが...」
二人とも死にそうな顔であった。
それもそのはず、アランは二人のことをお構いなしに光速で飛行したのだ。
「ほら、早く行きますよ」
そう言って、アランは進んでいった。
「やけに兵士が多いですね」
「ああ。多分だが魔王軍が落ち着いたから、こちらに攻めてこようと言う魂胆だろう」
三人がミオラ王国の城門に着いた。
「ミオラの国王に会いに来たのだが」
「すまないが、帰ってくれ。国王陛下が庶民ごときに面会をする時間はない」
「そうか。なら、これならどうだ?」
ソルブが懐からなにかを取り出し、兵士に見せると、兵士たちはすぐに謝りだした。
「た、た、大変申し訳ございませんでした!ラファエル王国の国王様が来られるとは...」
「良いのだよ。わしたちも言っていなかったからな。それより、今やつに会えるか?」
「今すぐは難しいかと...陛下は今会議中でして...」
「そうか。ならなおさら良い。やつに伝えてくれ。早く出てこい、じゃないと王都を吹き飛ばすぞ、と」
「わ、わかりました...」
兵士たちは慌てて王城へと入っていった。
「良かったのですか?あれは敵対行為と取られても仕方がありませんよ。」
「今からやることを知っていてそれを言うのか?」
「そうですね...」
三人が王城へ入ると、謁見の間に案内された。
「これはこれは、ソルブ国王ではないですか」
「久しいな、ハフィン」
「それで、今日は何をしにここへ?」
「うちの国民とそちらの第三王子の婚約を破棄するためにきた」
ソルブがそう言うと、周りの者達はざわつき、その場にいた第三王子も暴れ出した。
「はぁ!?ふざけんな!あの女は俺のもんだ!だいたい、ラファエル王国なんか俺の力で!」
「静かにしていろ。ここは外構の場だ。それで、何故婚約の破棄を?」
「そちらの王子が無理やり結ばせた婚約だからな。うちの国民にそんな横暴をされては困るのだよ」
「そうか。だが、それはわがミオラ王国とラファエル王国との友好の証のようなものだ。それを無下にするとはな」
「その答えは、破棄して良いと、とって良いかな?」
「良いでしょう。でも、あなたは自分の立場をわかっているのか?」
そう言うと、周りから、無数の魔術師や兵士が出てきた。
「我が国が戦争の準備をしていたことは重々承知で来たのでしょう?」
「彗星の魔法使い」
「はい」
「やれ」
その瞬間、兵士や魔術師の持っている武器や防具を、全て粉々にしてしまった。
「は?」
「いやぁ、馬鹿はどちら様だろうね?」
「ふっ、それぐらいで、我が軍勢が負けるとでも?」
防具などは粉々になったが、それでも兵士たちは止まるつもりがなかった。
「どうやら、痛い目を見ないとわからないようだね。彗星の魔法使い、この王都を吹き飛ばすことはできるか?」
「はい。少し時間はかかりますが」
「そうか。プラネス、彗星の魔法使いの援護をしろ」
「承知いたしました」
すると、プラネスの両手に剣が出てきた。
「両刃ではなく片刃か。東の国の刀というものだな」
「よくご存知で」
「畏怖の魔道士、相手してやれ」
すると、奥からただならぬオーラが近づいてきた。
「剣士か。魔術師と剣士どちらがつよ...」
その瞬間、血しぶきがとんだ。
「あ、すみません、やりすぎたかもしれません」
「あ、ああ、あああ...畏怖の魔道士が...」
「範囲内の人間の座標確認、オールグリーンです」
「最後の忠告だ、ハフィン、降伏すればあなた達の大事なものを奪いますよ」
「笑わせてくれるな。できるものならやってみろ」
「やれ」
「彗零星窩蜂」




